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インタビュー 2021年6月1日(火)19:00

平尾隆之と今井剛が語る「映画大好きポンポさん」映像編集の世界(前編) (2)

(C) 2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

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――平尾監督と今井さんの間で、どれぐらいやりとりされているのでしょう。

今井:今回はコロナもあったので、なかなか直接会ってという回数はそんなにはなかったです。ただ、我々のやり方だと仮に一緒にやっても結局まずお互いの意見のディスカッションをして、それを実際に作業して映像のかたちにして、それを見ていい悪いを判断するというように、すごく時間がかかってしまうんです。ですから、平尾監督からムービーを預かって、自分がこうしたいなっていうことを表現したものを返すまでに作業時間があったほうがありがたいんですよね。その間、こちらは悩みながら悶々と作業しているんですけど。

平尾:すみません(笑)。

今井:いえいえ。作業時間自体はあったほうがありがたいですし、いろいろと考えることができるのは大きいですから。

――編集の現場で一緒に何度も見返しながら作業するというより、お互い時間をとってやりとりされている感じなのですね。

今井:そのほうが「やりたいことはこうだ」というものをパッと映像で提示できますからね。いい悪いにしても、こうしたらどうだろうかという提案にしても、今のやり方のほうが次のステップにいきやすいのかなと思います。天才でもないかぎり、瞬時に「じゃあこうしましょう」っていうふうにはできませんからね。「こんなアイデアはどうだろう」と思いついたとき、本当にそのアイデアが作品のためにいいことなのか、一度いろんなパターンを組み直してみないと分からなかったりするので、そこに時間がかけられているのはありがたいです。

■今井さんの視点が入って「あ、面白い!」と思える瞬間があった

――冒頭に平尾監督が言われたように、ストーリーまで踏み込んだ意見を交換するには信頼関係がないとなかなかできないと思います。そういうことができるようになったきっかけはあったのでしょうか。

今井:それ俺も聞きたいですね。どこからそう思ったのかなって。

平尾:なんというか、流れでそうなったみたいなところがあるんですけれど(笑)。いつだったかなあ……たぶん、「(がくえんゆーとぴあ)まなびストレート!」(07)の頃かもしれないですね。僕がufotableに入ったときはまだ演出になりたてで、テクニカルなことはほぼ何も知らない状態だったんですよね。とにかくやりながら覚えていったなかで、いわゆるシート(※タイムシート)ワーク的なことや、編集でのリズムの捉え方など、ほとんど今井さんに教わった部分がありまして。「頭6コマ止めておかないと、これつながりが悪いでしょう」とか。

今井:教えたつもりはないですけどね(笑)。

平尾:「まなびストレート!」では、音楽にのせてカットを入れ替えるようなことを編集上でやってもらったんですよね。そのときに今井さんの編集マンとしてのテンポのつくりかたやリズムの感覚といった部分がすごく鋭くて、そういうところもふくめて今後もぜひ今井さんとやっていけるといいなと思ったんです。その後、たしか別の作品で今井さんに「そうしたら分からないですよ」と言われたことがあったんですけど、「ギョ」(11)のときだったかなあ……。

今井:「ギョ」のときも、多少そういうやりとりがあったかもしれないですね。

平尾:「分からないですよ」っていうのは、映像の文脈として急にこちらにきたらストーリーが分からなくなってしまうから、こういうふうに考えていくといいんじゃないかという話がどこかの機会であったんですよね。絵コンテを描きながら「こうだ」と思ってつくってきたものが、実際につなげたときに「なんか違うな」となったとき、今井さんのマジックによってガラリと視点の変わった新しい表現になるのを見たときに、これはすごいなと思ったんです。
 やっぱり、つくっているほうも面白さみたいなものを次々と更新していきたいんですよ。それが自分で脚本を書いて、コンテも描いて、演出チェックも全部やってとなると、基本的にもうそこから先はないんですよね。そこに今井さんの見方や手が入ることで、新しい視点が獲得できて自分自身「あ、面白い!」と思える経験があったんですよ。具体的には覚えていないんですけど(笑)。いつだったのかなあ……「フタコイ(オルタナティブ)」(05)があって「まなび」があって、でも、そのあとの「矛盾螺旋」(「劇場版 空の境界 第五章 矛盾螺旋」08年)の編集は神野(学)さんなんですよね。

――「矛盾螺旋」のときも平尾監督は今井さんに相談されて、アイキャッチを動かすアイデアをもらったと絵コンテ本のインタビューで話しています。

今井:「空の境界」のときはコンテだけ拝見したんです。

――別の方が編集を担当されているなか、今井さんに相談されていることが印象に残っていました。

平尾:「矛盾螺旋」の頃からなんでしょうね。だからやっぱり、「まなびストレート!」のときに何かがあったんだと思います。

――「まなびストレート!」で音楽にあわせてカットを入れ替えたシーンって、まなびたちが署名運動をする点描のところですか(※第8話「たたかえ聖桜生徒会!」)

平尾:そうです、そうです。まなびたちが廊下を走ったりするところとか、「ポンポさん」にもありますけど手拍子の音楽がかかるところです。

――「ポンポさん」のあるシーンを見て「まなびストレート!」っぽいなと思ったのですが、平尾監督自身も意識されていたのですね。

平尾:(笑)。今回は、今まで自分がやってきた手法をすべて肯定してみようと思いながらつくったところがあります。「GOD EATER」(テレビアニメ/15~16)ぐらいまでは常に新しい手法を模索していたところがあったんですけど、フリーになっていろいろな人と会うようになり、「あの作品よかったですよ」と言われたものが僕自身は必ずしも演出的に気に入っていないものだったりすることもあって。そんなふうに自分の手ごたえとは別に好きになってもらえることがあるのならば、今回は今までやってきた手法を全部だしてみようと思ったんです。もちろん、今回はワイプとか新しい挑戦もしているんですけど、そういう意味では自分の文脈のなかで、あえていろいろ詰めこんでやってみた部分はありますね。

■順行と逆行を繰り返しながらつくる

――今井さんは実写映画でいろいろな監督と組まれていて、監督によってもやり方が異なるのではないかと思います。今井さんから見て、平尾監督はどういう監督ですか。

今井:やっぱり任せてくれるっていうところが、いちばん大きいですね。実写でもそうなんですけど、何度もご一緒している監督はだいたいそういう傾向なんです。

――任せてくれるところが大きいと。

今井:任せてもらえないと、僕の場合、たぶんまったく何もできないので(笑)。

――言い方がよくないかもしれませんが、任せてもらえないとオペレーター的な作業になるのでしょうね。

今井:オペレーターが悪いとは思わないですけどね。監督の呼吸でちゃんと切っている人もいるわけですから、それはそれですごいことだと思います。だけど、それだとなんのアイデアも言えないじゃないですか。すべて監督の言うとおりだと、「はい、じゃあそうしましょうか」みたいになってしまいます。せっかく編集という立場で作品を一緒につくることができるのであれば、編集なりの作品の捉え方というか、「こういうテイストのものにしたい」「こういう感じのトーンがいいのでは」みたいなことを提示させてもらい、それを一緒に楽しんでくれる監督さんと僕はよく仕事をしている感じです。アニメ業界では平尾さんのような監督はなかなかいませんし、やっぱり一緒にやっていて楽しくつくれているっていうことですかね。

――トライ&エラーの作業が多くて、普段のアニメの編集より大変ではありませんか。

今井:大変さもふくめて面白いです。まあ、(編集)助手は大変かもしれないし、絵描きさんたちも非常に大変だと思うんですけども。

平尾:今回でいうと居村さんがもうヘロヘロになってました(笑)。

――居村さんは、「ポンポさん」で演出を担当されている方ですね(※編注)。

※編注:居村健治氏。スタジオジブリで「千と千尋の神隠し」制作進行、「崖の上のポニョ」監督助手などを務めた後、「ガンダム Gのレコンギスタ」各話演出、「君の名は。」「天気の子」の演出などを担当している。

平尾:本当に何度もシート変更がありましたから。今井さんとのやりとりで、やっぱりストーリーラインはこちらのほうがいいとなると、それにあわせて居村さんは辛抱強く、何度もシートを直していくという……。ただ、居村さんも「今までこういうやり方はやったことがなかった」とおっしゃってくれたりもしたので、大変ながらも楽しんでくれた部分があればいいなぁと……。

――通常のアニメ制作では、映像の設計図である絵コンテをきちんとつくり、そこから絵コンテで考えた100パーセントをいかに減らさないでつくっていくかという部分が大きいと思います。ここまでうかがったやり方だと、絵コンテ以降でやり直すことをいとわないということですよね。

平尾:アニメーションづくりでは、絵コンテをあげたあと、制作の段取りとしては完成まで一方向しかなくて工程が“順行”しかないのが普通なんですけど、僕らのやり方だとどこかで“逆行”するんですよね――最近「TENET テネット」を見たんで、順行と逆行って言ってみたんですけど(笑)。

――(笑)

平尾:順行していたと思ったら途中で逆行して、また順行にするっていうことがよくあるんです。

――「TENET テネット」で例えると、すごく分かりやすいです(笑)。アニメで逆行するというのはちゃぶ台返しに近いものがあると思いますが、「TENET テネット」と同じで、それをするのは大変ではないですか。

平尾:大変ですけど、逆行にもいくつか段階があるんですよね。「ここからだったらまだ逆行できる」という段階があって、仮にレイアウト段階でのカッティングだったら、まだ逆行できるんですよ。でも、原画までいって色もついている状態ではさすがに難しいので、そこは今井さんと密に相談しながらやっています。「今だったらこのストーリーラインの変更はできるかも」とか「制作がここまで進んでしまっているから、それを生かしつつ求めるものに近づけられるように上手くつないでほしい」みたいな感じですね。言ってしまうと、「ヨヨとネネ」のときは制作がかなり進んだ段階で逆行してしまったことがあったんです。

――それで、「ヨヨとネネ」のソフトの映像特典には本編未収録の線撮ムービーがたくさん入っていたわけですね。

平尾:そういうことですね(苦笑)。でもやっぱり、今井さんと話して実際に手が入ることで確実に面白いものになっていく手ごたえがあったんです。そうした経験を経て、「ポンポさん」ではここは逆行しそうだなと思ったら、この前段階で一回カッティングしておかないともう逆行できなくなってしまうから今やっておこうか、というふうに制作状況を見ながら負荷がかかりすぎないように先回りして考えられるようになりました。アニメーションの制作システム自体も少しずつ更新していくなかで、「ポンポさん」のやり方にたどりついたという感じですね。

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映画大好きポンポさん

映画大好きポンポさん Check-in6

敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈にな...

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