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インタビュー 2021年6月1日(火)19:00

平尾隆之と今井剛が語る「映画大好きポンポさん」映像編集の世界(前編)

(C) 2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

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映画の街ニャリウッドを舞台に映画製作の裏側を描く「映画大好きポンポさん」(6月4日公開)では、映像編集にスポットをあてたドラマが展開されている。主人公のジーンは予告編の編集を任されたことをきっかけに監督に抜てきされ、作中では撮影した映像を取捨選択してつなぐ様子を本編とシンクロして描くことで、編集によって映画がどう変わるのかが見事に表現されている。
 今井剛氏は、実写映画「るろうに剣心」シリーズ(大友啓史監督)をはじめ、佐藤信介、行定勲、李相日らの作品などの編集を多く担当し、本作を手がける平尾隆之監督とは「フタコイ オルタナティブ」以来の間柄。平尾監督はほとんどの監督作品で今井氏とタッグを組み、「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」の頃から一歩踏み込んだかたちで今井氏と作品づくりをしている。一緒に取材をうけるのは初めてだという2人に、じっくり話をうかがった。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)

■編集という立場で絵コンテの段階から足をふみいれる

――「ポンポさん」は“編集アニメ”と言っていいぐらい編集に工夫が凝らされていると感じました。平尾監督は折にふれて今井剛さんの名前を出されていて、今回は映像編集をテーマにお2人にお話をうかがえればと思います。最初に、アニメにおける編集の役割とはどういうものなのか話していただけますでしょうか。

平尾:うーん、難しい質問ですね。

今井:平尾監督は、僕以外のアニメの編集マンと一緒に仕事をすることもあるじゃないですか。そのときは、どんな感じで進んでいるんですか。

平尾:今井さんのように、ストーリーの部分まで相談することはあまりないですね。他の編集さんと仕事をするのは各話の演出で入るときぐらいっていうのもありますけど。アニメーションの編集の場合、主な役割はフィルムのリズムをつくっていくことなのかなと思います。例えば、あるカットが絵コンテで3秒と指定されていたとして、想像上の尺でしかなかったものが編集でつないで実際の尺の流れになったとき、この長さではキャラクターがやっていることが伝わらないからと尺を長くしたり、逆に間(ま)をつめるために短くしたり、そういう作業が主な感じです。
 アニメは基本的にアフレコなので、事前に演出がストップウォッチを使ってセリフの尺をつけていて、編集段階でそれが体感速度として速いか遅いかっていうようなことも相談します。もちろん例外もあるんでしょうけど、信頼関係がないと編集さんのほうから「ここの流れだとちょっとおかしくないですか」みたいなところまでは、なかなか言えないんじゃないかと思います。

今井:今はいろいろなやり方があると思いますが、基本的にアフレコ前に編集で尺を決めるのは変わっていないってことですよね。先に編集でリズムをつくっておいて、アフレコでは役者さんにそれにあわせてもらうのが主流で。

平尾:そこは変わっていないと思います。

今井:それが我々の場合、違うんですよね(笑)。

平尾:そうですね(笑)。僕らの場合、絵コンテがあがったらまず仮のカッティング(編集)をして、その段階で今井さんを交えて「ストーリーラインがしっかりしているか」「そもそも映像として面白いのか」みたいなところから一度話し合う工程をとっています。

今井:アニメの制作工程を知っている方向けに言うと、僕が平尾監督と一緒にやるときは、編集という立場で絵コンテの段階から足をふみいれて作品づくりをしているというと伝わりやすいかなと思います。

――いつ頃から、そうしたやり方をとられているのでしょうか。

平尾:今井さんとご一緒するなかで、だんだんとデフォルトで組みこまれていって、本格的にやりはじめたのは「(魔女っこ姉妹の)ヨヨとネネ」(2013)からですかね。

今井:確実に足をふみいれたのは「ヨヨとネネ」ですね。

平尾:その頃から、今井さんのお力をかりながらストーリーラインの精査までやるようになりました。僕自身が脚本を書くようになってきて、そうなるとストーリーを俯瞰して見る他者がいなくなるんですよね。脚本から絵コンテになり、それがムービーになったとき、映像の文脈として見ている人に物語や感情が伝わるのか伝わらないのか、面白いのか面白くないのかがもっとも見えてくるのは編集の段階なんです。
 今井さんは実写映画の世界で、膨大な映像素材のなかからストーリーを組み直していく編集の仕事をずっとされてきて、その経験から「これでは伝わらないのではないか」「こうしたらどうだろうか」ということを言ってくださるんです。今井さんに仮編集段階からいろいろと突っ込みをいれていただきながら、「じゃあこう直していきましょう」と仮カッティング後に再度コンテやムービーを直すかたちでストーリーの部分をふくめてブラッシュアップしています。

――カッティングは、絵コンテが最後まで描きあがってから行っているのでしょうか。

平尾:「ポンポさん」の絵コンテはAパートからDパートまであるのですが、それぞれのパートがあがってから随時行います。僕はStoryboard Pro(ストーリーボードプロ)を使って絵コンテを描いているので、ソフトの機能を使ってそのままムービーにして、ムービーに仮の音楽、SE、仮アフレコをした声をつけたものを今井さんにお渡ししています。
 それを見ながら一度、今井さんと話し合い、双方の意見を組みこんだ具体的なプランをムービーにして戻していただき、再度僕のほうで精査してコンテを描きなおし、ムービーに出力するっていうふうに進めていきます。

今井:最初にムービーがあるっていうのはすごく大事なことなんです。平尾監督がこんなことをやりたいということが具体性をもってうけとめられますので。そのうえで、今あるセリフよりこういう言い方のほうが効き目があるんじゃないかとか、この話は伏線として前のほうにもっていったほうがいいんじゃないかとか、表現のカスタマイズのようなかたちで、僕のほうでブラッシュアップしたものをお戻しするという。

平尾:Cパートは、今井さんのパートといってもいいぐらい今井さんの意見をとりいれさせてもらいました(編注:A~Dパートの詳細はインタビュー後編で紹介)。

今井:Cパートはジーンが実際に編集作業をするパートだったので、自分が具体的に経験していることをふくめて、けっこう表現させてもらった部分があります。

平尾:Cパートは、コンテの初稿では編集段階で言いそうな具体的なセリフがなかったんです。たしか、編集でカットを入れ替えたり、具体的にシーンをこうつなぐっていう部分とかはコンテではざっくり書いていたけど、ほとんど全部、今井さんからの提案で修正した気がします。そのほうが面白いし、納得できるものになっていたんです。今井さんから戻ってくるブラッシュアップムービーにはセリフの追加などもあって、テロップで「ここはこういうセリフのほうがいいんじゃないか」と全部つけてくださるんですよね。シーンの入れ替えなども、こう入れ替えたらストーリーがこんなふうに捉えられるからどう? という案も入ってたりします。
 そこから、ここはすごくいいから今井さんの提案どおりにいきましょう、この提案は僕がやりたいことと少しずれているからもう少しやりとりしましょう、というかたちで進めていく感じですね。

今井:実写映画の場合、ひとつのショットで構図の違う絵が複数撮られていることがほとんどです。例えば「ポンポさん」の作中と同じように撮影素材が8構図あったとしたら、必ずしもそれを全部使うわけではないんですよね。ジーン君も作品にいちばんあった編集スタイルとはなんだろうと悩んだすえに、どん引きの絵と寄りの絵の2カットしか使っていません。8カット分の構図を撮っておいて編集で採用するのは2カット。そういうことが実写の編集マンが実際にやっている作業なので、Cパートではそういう部分をリアリティをもたせて表現させてもらいました。

――今井さんは、ストーリーのかなりの部分まで関わられているのですね。

平尾:ストーリーの面でも、その他の面でも、いろいろと問題提起をしてくださるんです。「ほんとはこうしたいんですけど、絵にしたら上手くいかなかったんですよね」みたいな話もさせてもらっています。それで今井さんのほうからアイディアを出してくださったり。

今井:「ヨヨとネネ」ぐらいから「こんなのがいいんじゃないか」とムービーにテロップでメモをいれはじめて、平尾監督とムービーでキャッチボールをしている感じですね。絵コンテにないセリフの追加は赤色、検討中のものは黄色とどんどん増えていって、「それいいね」と決定したら青い文字にするという。

――アニメは完成映像をつくる前に編集しているから、今井さんの提案によって新しいシーンが生まれたり芝居を直したりできるわけですよね。そこは撮影した映像をもとに編集する実写と大きく違うところですか。

今井:そうですね。実写も役者さんがからまなければ小物撮りとかで再撮要求はできるので、まったくできないってわけではないですけれど。ただ基本的に実写はまず演じ手がいて、演じた映像があり、それは確実に変わることがないじゃないですか。俳優さんが演じたことをベースに、この表情がいいからそれを生かすためにどうつなげていこうかというふうに、まず現物の映像ありきなんですよね。
 平尾監督のアニメの場合、最初にお話ししたように絵コンテに近いかたちでタッチさせてもらっていますから、例えばいいセリフのカットがアップに決まったとき、「こんな感じの言い方にさせるのはどうですか」というところまで要求できます。こちらの提案によって絵のタッチや、場合によっては笑顔か泣き顔かということさえ変わってくるかもしれない。同じことをやろうとしても結果が違ってくるというか、実写とアニメの編集の違いはそうしたところにあるのかもしれないです。

作品情報

映画大好きポンポさん

映画大好きポンポさん 8

敏腕映画プロデューサー・ポンポさんのもとで製作アシスタントをしているジーン。映画に心を奪われた彼は、観た映画をすべて記憶している映画通だ。映画を撮ることにも憧れていたが、自分には無理だと卑屈にな...

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