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インタビュー 2021年7月18日(日)18:00

保住有哉「経験したなかで一番のワード数」、井上ほの花“お母さん”は誰よりも厳しかった!?連載音声小説「六秒笑女」収録の舞台裏

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2019年に「尼崎ストロベリー」で好評を博した成海隼人氏による新作オリジナル小説「六秒笑女‐six sec girl‐」がオーディオブック化され、その連載配信が「audiobook.jp」でスタートした。連載音声小説、という形をとることで毎週日曜日に少しづつ聞き進められるようになっている。

主人公の平凡なサラリーマン・西野泰博を演じるのは「回復術士のやり直し」で主演を務めた保住有哉。“六秒笑女ほなみん”を名乗り、とある目的のために覆面YouTube女子大生ギャガーとして活動するヒロインの荒牧ほなみ役を「八月のシンデレラナイン」の井上ほの花が担当する。

“笑い”を核として、やがて感動の物語へと発展する、連載オーディオブック版「六秒笑女」の収録の舞台裏に迫った。

――「六秒笑女」は、毎週6秒間のオリジナルギャグ動画を投稿している“六秒笑女ほなみん”と、彼女に心を救われたサラリーマンの西野が繰り広げる物語です。いったい、どこから着想を得た作品なのでしょうか。

成海:(しばし考えて)……スゥーって、降ってきましたね。

保住:やっぱり、天才の言うことは違うなあ!

井上:めっちゃおもしろいですからね! やっぱり神様が仕組んでたんだ(笑)。

成海:ただ、モチーフはありました。僕の友人の妹が、もともと「ぺちゃぽー」っていうギャグをやっていたんですよ。これはおもしろいなということで、ほなみんの持ちネタにさせていただきました。

井上:そうなんですね!

成海:「六秒笑女」は、そこから広げていった物語です。最初はスマホ小説として公開していたのですが、オーディオブック化と、それに連動した「ステキブンゲイ」さんでの小説連載が決まったので、それぞれのメディアに合わせてブラッシュアップをしています。

――今回、オーディオブック化に踏み切ったのはなぜでしょう。

成海:もうすでに、オーディオブックの時代が来ていると思います。実際にヒット作もたくさん生まれてきていて、「音声ってあるんやな」と実感しています。「六秒笑女」のプロジェクトについては「オーディオブックを連載する」というのがすごくおもしろいなと思っているんです。現在は紙媒体で発刊されたものを、まるごと1冊分、そのまま声優さんたちが朗読するのが主流ですが、そうではなく毎週1本ずつ起承転結のあるエピソードを公開していくというのは、新しいオーディオブックの形なのかなと考えています。

――先ほどのお話にもありましたが、「ステキブンゲイ」では成海さん自身による小説版の連載も同時スタートしています。オーディオブック版との、内容の違いはあるのでしょうか。

成海:読むのと聞くのとでは別の味があると思うので、それぞれ違う楽しみ方ができるようにしています。物語の大筋は一緒ですが、小説版とオーディオブック版とで印象が大きく変わるキャラクターもいますよ。ぜひ、両方を比べながら「六秒笑女」の世界を味わっていただきたいです。
 また、オーディオブック版では、各話に聞きどころがあって、そのお話だけ聞いても楽しんでいただけるように工夫しました。なので、毎話ちゃんと盛り上がりどころが……ありましたよね?

保住:ありました! 毎回キレイに終わるんですが……。

井上:それでいて、続きは気になるのがスゴイなって。

保住:僕は毎回の、起承転結の“結”が大好きなんですよ。いつも詩的に終わるので、名文を読んだとという余韻に浸って幸せになれるんです(笑)。

成海:序盤は“六秒笑女ほなみん”が謎だらけの存在で、ミステリーチックな展開を仕掛けているので、先の展開が気になるんじゃないかと思います。

――保住さんと井上さんは、オーディションで選ばれたのですか?

保住:降ってきました。気づいたらブースにいて、台本を持っていたので(笑)。

井上:(爆笑)今回はオーディションではなく、ご指名をいただいた形です。

成海:お2人とも本当にハマり役で、その表現力には感心しきりです。「六秒笑女」は“ギャグ”が鍵となるお話なのですが、井上さんにギャグ指導は一切していないんですよ。正直なところ、最初は「若手の女性声優さんにギャグができるのかな……」と心配していたのですが、取り越し苦労でした。現場で「ぺちゃぽー」が飛び出した瞬間、スタッフ大爆笑。僕が想定していた「ぺちゃぽー」を軽々と超えてきましたね。

井上:ひぇぇぇぇ!!

保住:ナチュラル「ぺちゃぽー」でしたね。

井上:台本がおもしろいからですよ!

保住:それはそう。棒読みしているだけでもおもしろいですからね(笑)。

成海:いやいや、やっぱり声優さんの力ですよ!

一同爆笑

――保住さんと井上さんは、ご自身が演じる役のファーストインプレッションはいかがでしたか。

保住:婚約者から手ひどい裏切りを受けた西野は、最初はひどく落ち込んでいますが、“六秒笑女”ほなみと関わっていくことで、少しずつ元気を取り戻していくキャラクターです。やがてツッコミ役に回っていくようになるのですが、そのあたりの変化を追いかけていけるという、連載ならではのおもしろさがある役どころだと思います。
 今回はオーディションではなかったので、いただいた台本を読んだのが「六秒笑女」とのファーストコンタクトだったのですが、西野の人間らしい感受性がとても好きになりました。落ち込んだときはどん底までガックリしますが、うれしいときはテンションが爆上がりになる。そういう意味でも“ベーシック人間”なので、できるだけ等身大で演じようと心がけました。

井上:ほなみんは、メチャクチャふわふわしてかわいい女の子なのですが、私と違いすぎて「どうしよう!?」って不安になってしまいました。

保住:まんまだよ?

成海:井上さんは、いったい何を言っているんでしょうか(笑)。

井上:ほなみんは、もっとフワ~ってしてるじゃないですか! 私とはぜんぜん違うので!! ……ではありますが、台本を読み進めていくに従って、ところどころ似ているところが見つかっていきました。語彙力の足りないところにも共感してしまいましたし(笑)、そういうところまで含めての配役だったのかなと、ありがたい気持ちでいっぱいです。現代だからこその物語だと思うので、現代社会に疲れた皆様に、ぜひ見ていただきたいなと思っています。

保住:聞く作品だから、見えないよ!

井上:ひぇぇぇぇ!!

成海:ご覧の通り、井上さんはそのまんまほなみんですね。これはみなさん、満場一致で異論のないところでしょう(笑)。

井上:違うんです、違うんですよ! これは母(井上喜久子)に聞いてもらっても構いません!! 本っ当に……違うんです!!

保住:僕は自分のナチュラルなところを出していけばいいかなと考えていたので、無理に役を作ることはしていません。感じたことをそのままアウトプットして演じるようにしています。西野はごくごく一般的な感性の持ち主で、年齢も彼が29歳、僕が27歳と近いので、感情移入しやすい人物像でした。これは僕に限ったことではなく、本作を聞く男性のみなさんも同じなんじゃないかなと思います。
 ただ、オーディオブックということで“地の文”のボリュームが膨大だったので、そこはやはり苦労しました。なにせ、これまでに経験したなかで一番のワード数でしたから。セリフだけなら読めるはずなのに、地の文から続くと、感情を入れるべきところとそうでないところの落差が大きすぎて、思考に口がついていかず噛んでしまったりするんですよ。同じ地の文でも、状況説明の“ナレーション”と、西野の内心の声である“モノローグ”の成分比率で、演じ方が違ってきますからね。
 完成したものを聞くと、あたかも一発で成功したかのように聞こえますが、本人は一声ごとに手を震わせながら収録していたんです。気合を入れすぎたせいか、台本がキラキラ輝いて見えていた回もありました(笑)。体力には自信があったんですが、まだまだですね。

成海:それにしても、やはりお2人以外にないという、すばらしい配役でした。

保住:先生のコメントで、全てが嘘くさくなってしまった!

成海:本当のことですよ(笑)。むしろ、読んでいただく分量があまりにも多かったので、申し訳ない気持ちでいっぱいでした……。

保住:こちらこそ、同じくだりを何回も聞かせることになってしまってすみません……。

――先ほどお名前が上がりましたが、今作での井上(ほの花)さんは、実のお母さんである井上喜久子さんと親子役で共演していますね。

井上:私、家で台本をチェックしてたら、感極まって大泣きしてしまったんですよ。そこに母がやってきて、かけあいで読み合わせをすることになったんです。そうしたら、母が私以上に大号泣してしまって(笑)。「この作家さん誰なの!? ものすっごく面白いね!!」って大絶賛でした。

成海:ありがとうございます!

保住:現場でもおもしろかったんです。成海先生も音響監督も、満場一致でオーケーだったほの花ちゃんのテイクに、喜久子さんだけが「そこ、やり直したほうがいいんじゃないかと思うの」って(笑)。

成海:僕らはオールオッケーだったんですけど、お母さんが「家でやったときのほうがよかった」ってメチャメチャ厳しいんですよ(笑)。

――各話のラストで、西野とほなみが繰り広げる次回予告は“笑撃”の内容ですね。

保住:次回予告、めちゃくちゃ面白いですよね!

井上:収録も楽しかったです。

保住:毎回、本編の収録が終わってから次回予告を録るんです。本編の収録ですでにテンションが仕上がっているので、次回予告で“出し切った、そのさらに上を行く”のがすごく楽しいんですよね(笑)。後のことを考えずに、すべてを出し切ることができるので、毎度さわやかな気持ちに浸れます。

成海:僕も次回予告は楽しんで書いているので、そう言っていただけると本当にありがたいですね。僕はお笑い業界でも活動しているので、いつもボケるスキをうかがっているのですが、本編だとなかなか難しい。だから、その分は次回予告でがんばっています(笑)。連載なので、こちらも毎回楽しみにしていただけるとうれしいです。

井上:次回予告なのに、次回のことがまったくわからないのもおもしろいですよね(笑)。

保住:でも、僕は次回予告のおかげで西野のことが見えた部分があるんです。本編開始当初の西野はずっと意気消沈していますが、元気を取り戻した姿が次回予告でのツッコミ気質の西野なんじゃないかって。次回予告で西野の感情の振り幅の指針を得て、本編に落とし込むことができました。

――成海さんは、お2人に「ここをこうしてほしい」というようなディレクションをされたのでしょうか。

成海:まったくしていないですね。今日の収録でも、新しいギャグをやってもらったんですが、思った以上のものを聞かせてもらったので……。

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――「ぺちゃぽー」以外に、新しいギャグが登場するんですか?

成海:あっ、しもた!! それは、えーと……。

井上:ないしょ、ないしょです!

保住:あるかもしれませんよ、ということで(笑)。

――で、では……収録はどの程度進んでいるのでしょうか。

保住:連載ということで長丁場の収録になりましたが、今日でひと通り終わりました。

成海:いや、終わりませんよ! みなさまからご好評をいただけたなら、いくらでも続けますからね!! 今回はシーズン1としてひと区切り、と言うだけのことです。

保住:「六秒笑女」シーズン2が!?

井上:楽しみです!!

成海:ですから、みなさん応援してくださいね(笑)。

――それでは最後に「六秒笑女」の聞きどころを教えてください。

保住:全部頑張ったので、全部聞いてください(笑)。

井上:それは本当にそうですね。ただ、私はそのなかでも、これは頑張ったなっていうのがあって。実は、歌を歌ったんですよ! 有名な曲らしいんですけど、私は知らなかったんですよね……。

成海:えっ、知らないであんなに歌えたんですか?

井上:もちろん収録前には聞きましたが、初めて歌った曲です。ゼロからの挑戦みたいな感じだったので、「みんな聞いてね!」って言いたいです。

保住:ファルセットと地声の行き来がとてもキレイで、聞いていて笑っちゃいそうなくらい上手かったですよ。たしかに、そこは特筆すべき聞きどころですね。

井上:も~、やめてくださ〜い(照)!!

保住:「六秒笑女」は終わらない! ということで、“シーズン1最終回”と言っておきますが、僕はそこで語られる「ぺちゃぽー」に対する西野の考えがとても好きなんです。……なので、ぜひ最終回まで聞いてくださいね(笑)。

成海:僕も最終回は、ぜひとも聞いてもらいたいですね。具体的には言えないのですが“ほなみんのアレ”がすばらしかった。西野たちの物語を追いかけていった先にある“アレ”を、ぜひともみなさまに確かめていただきたいです。

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