2022年3月7日（月）12:00

アカデミー賞3部門ノミネートで史上初の快挙　アニメ×ドキュメンタリーの注目作「FLEE」6月公開

国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー映画賞、長編アニメーション映画賞への同時ノミネートを達成

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第94回アカデミー賞で、史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー映画賞、長編アニメーション映画賞の3部門への同時ノミネートを果たした「フリー（英題）」が、「FLEE フリー」の邦題で、6月に公開されることがわかった。20年の時を経て、祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえている。

アフガニスタンで生まれ育ったアミンは幼い頃、父がタリバンに連行されたまま戻らず、残った家族とともに命がけで祖国を脱出した。やがて家族とも離ればなれになり、数年後、アミンはたったひとりでデンマークへと亡命。時は流れ、30代半ばとなった彼は研究者として成功をおさめ、恋人の男性と結婚を果たそうとしていた。しかし、彼には恋人にも話していない、20年以上抱え続ける秘密があった。あまりに壮絶で過酷な半生を、彼は親友である映画監督の前で、静かに語り始める。

本作は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フランスの合作映画。アミンと周囲の人々の安全を守るため、アニメで製作された。タリバンとアフガニスタンをめぐる恐ろしい現実、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、居場所を奪われることがいかに人間の尊厳を傷つけるのかというテーマを、時に美しく、時に残酷に描き出す。

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2021年のサンダンス映画祭のワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門では最高賞にあたるグランプリ、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭では最高賞となるクリスタル賞を含む3部門で受賞に輝いた。ドキュメンタリー、アニメという表現の垣根を越え、ジャンル横断的に高い評価を受け、各国の映画祭で144ノミネート、69受賞を記録（2月28日時点）。3月27日（現地時間）に行われるアカデミー賞授賞式での歴史的な快挙にも期待が高まっている。

「サウンド・オブ・メタル聞こえるということ」で第93回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされ、ムスリムとして初めてオスカー候補となったリズ・アーメッドと、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のニコライ・コスター＝ワルドーは物語に心を打たれ、エグゼクティブプロデューサーとしてサポート。「パラサイト　半地下の家族」のポン・ジュノ監督は21年のベスト映画の１本として選出し、「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督は、本作がオスカーの長編アニメーション映画賞にノミネートされると、「『FLEE フリー』がアニメーションを芸術として発展させたことをとても嬉しく思う」と、自らのTwitterアカウントに喜びの言葉を投稿した。

アミンの物語は非常にパーソナルなものでありながらも、紛争、難民、人種差別、LGBTQ+など、現代社会を覆う数々のテーマが内包されている。迫害から逃れるため、ロシアを離れたユダヤ系移民であるジョナス・ポエール・ラスムーセン監督は、インタビューで、「難民であることはアイデンティティではありません。それは誰にでも起こりうる状況です。アミンは難民ですが、彼はそれだけではありません。彼は学者であり、家の所有者であり、夫なのです」と語っている。

「FLEE フリー」は、6月に東京の新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国で順次公開。