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特集・コラム 2023年6月29日(木)19:00

【明田川進の「音物語」】第72回 10年計画で実現した新しい収録スタジオ

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マジックカプセルでは、今年3月から新しい収録スタジオが稼働しています。3つの収録スタジオがある3階建てのビルを都心に新たに構え、収録スタジオはそれぞれの用途にあわせた広さにしています。

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今、大手の音響制作会社さんは、ほとんど自社で収録スタジオをもつようになっています。作品を多く抱えていると音響制作費のなかでスタジオの経費がしめる割合が大きくなり、初期費用はかかりますがそこはなんとか工面して自分のところでスタジオをもつほうがコスト的によくなるというのが理由のひとつだと思います。費用面だけでなく、いろいろと融通がきくので効率的に収録が進められる部分も大きいです。

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自社で収録スタジオをもつ場合、自分たちが使うほか、貸しスタジオとして外部の会社に貸し出すやり方もあります。ただそうすると、スタジオの予定を埋めるために外部から仕事をとらなくてはならなくなります。マジックカプセルが自社でスタジオをもとうと考えたとき、外部に貸し出すことは想定せず、自分たちの作品が自由にできる理想のスタジオをつくりたいという発想からはじまり、10年計画で実現することができました。

旧スタジオは、都心の某ビルの地下1階を10年契約で借りて使っていました。そのあいだに、スタジオ関連のことを実地で勉強しようと考えたんです。借りる前は音楽の練習スタジオで、それだったら構造を使いまわせるのではないかと思ったのですが、音響設備のプロの人に見てもらったらこのままでは使えないということで、全部ばらして一度スケルトンにしてからつくりなおしました。そのビルの契約期間の終わりがみえてきた頃、幸運にも良い土地が見つかったことで、いちからビルを建てて新しくスタジオを構えることができました。

新しいスタジオは、収録ブースに併設された部屋のミキサー卓がすっきりしているのが特徴のひとつです。これまでのミキサー卓はフェーダーなどの機器がびっしり並んでいて、そういう写真を見たことがある方も多いと思いますが、今はPCでかなりの部分ができるため、これぐらいで十分なんです。今のデジタルの音響やミキシングに適した設備にしています。建物の構造や内装についても、仁(※明田川進氏の息子で音響監督の明田川仁氏)やうちのミキサー、制作の人たちが仕事をしやすいスタジオになるよう、みんなから意見を聞きました。カラーコーディネーターさんに立ってもらい、壁や机の色なども統一してもらっています。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

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