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特集・コラム 2023年8月11日(金)19:00

【明田川進の「音物語」】第73回 声優の演技の類型化、かたちだけを真似ない演技

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現在は自分で音響監督の仕事をしていないこともあって、最近は旧作をふくめてアニメをわりと見ています。そうすると、ある作品やキャラクターに人気がでると、他でも似たようなものがでてきて、あれも似てる、これも似てる……というふうに感じることが多いです。昔と比べてアニメの制作本数が半端じゃないぐらい多くなってきていますから仕方のない部分もあって、作品数が多いことは若手のチャンスにもつながっていると思います。ただ、役柄に幅がないと若手の声優は育たないんじゃないかと思うときがあります。

今はお休みしていますが、ジュニア向けの授業で僕はよく、「あなたがその人だったら、本当にそういうふうに演技をしますか」と問いかけます。作品やキャラクターが類型化している影響からか、演技をするさいに「こう言えばいいんだろう」とある種パターン化した言い方をしてしまうことが非常に多いんです。アニメで定番となった類型的なキャラクターの演技も、最初にそれを考えついた人やベテランの人は、そこにいたるまでの気持ちをしっかりつくったうえで演じています。そこを勘違いしてかたちだけ真似してしまうと、最初はちょっと演技ができると思われることがあるかもしれませんが、すぐに応用がきかなくなって伸びなくなります。役に向き合う根っこの部分の姿勢を学ぶには、自分自身で考えることはもちろんのこと、ベテランの人と一緒の現場になることが学びにつながるんじゃないかと思います。

作品の傾向が類型化しているなと感じる一方で、日本のアニメはいろいろなジャンルやキャラクターをつくっているなと思うことも多いです。最近僕が知ったなかだと、「艦これ(艦隊これくしょん)」という作品の設定は印象的でした。艦艇を擬人化した設定でキャラクターをつくって動かすというのは、発想としてすごく面白いですよね。ゲーム発の企画だそうで、アニメ版をすべて見たわけではありませんが、よく考えられたなと感心しました。アニメーションですから、これぐらい自由な発想のものがあって全然いいと思います。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

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