【明田川進の「音物語」】第78回　OVA「創竜伝」と出崎統さんの思い出

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「銀河英雄伝説」（※OVA版）からの流れで、田中芳樹さん原作の「創竜伝」のOVA（※1991～93年にリリース）でも音響監督を担当しました。「銀英伝」と同様、プロデューサーは田原（正利）氏で、細かいことは忘れてしまいましたが、キャスティングや音楽など田原氏のこだわりに応えるかたちで進めていったと記憶しています。

キャスティングに関しては、「銀英伝」とあまりクロスしないようにという要望があったはずで、4兄弟役の堀秀行さん、飛田展男さん、中村大樹さん、山口勝平さんのなかだと、「銀英伝」と被っているのはマクシミリアン・フォン・カストロプ役を演じた堀さんぐらいでした。当時の山口さんは「らんま1/2」などで主役をやりはじめた頃で、鳥羽茉理役の玉川砂記子さんはハツラツとした女性役などを多く演じる売れっ子でした。

「創竜伝」は、出崎統さん、鹿島典夫さん、鳥海永行さん、御厨恭輔さんの4人が3話ずつ監督を務める体制で制作されました。1～3話を手がけた出崎さんは虫プロ時代からの仲間で、虫プロのみんなは「統ちゃん」と呼んでいました。虫プロの頃から抜きんでたものをもっている人で、ギッちゃん（杉井ギサブロー氏）たちと一緒によく遊びに行きました。麻雀を一緒にやったこともありましたし、車好きの仲間でドライブに行ったときには、たしかトヨタのパブリカというお洒落なスポーツカーに乗ってきたのを覚えています。年齢を重ねてからは気さくな感じになりましたが、若い頃の統ちゃんはニヒルなハードボイルド風でした。

「創竜伝」以外で統ちゃんと一緒にやったのは「空手バカ一代」ぐらいで、作品を一緒にやったのは兄貴の出崎哲さんとのほうが多いです。統ちゃんがパイロット版を手がけた「リトル・ニモ」ではニアミスしています。劇場アニメ「SPACE ADVENTURE コブラ」で僕は音楽担当をしていましたが、これはプロデューサーの池内辰夫さんから、松崎しげるさんに主題歌を頼みたいから手伝ってほしいと言われての仕事でした。池内さんも虫プロ時代の仲間で、虫プロを辞めたあと東京ムービーに移っていたんです。

統ちゃんは音に深いこだわりがあり、こんなふうにやりたいという要望を多くもっていたため、一緒にやるときはいつも以上に緊張感をもって仕事をしていました。選曲は鈴木清司さんという方と組むことが多く、統ちゃんにとって作画の杉野昭夫さんと同じように阿吽（あうん）の呼吸でやれた方だったのだと思います。何かの打ち合わせのときに、選曲は鈴木さんに頼んでほしいという話が何回かでてきたことがありました。

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進（アケタガワ ススム） マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。