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特集・コラム 2024年12月25日(水)12:30

「ガンダムSEED FREEDOM」と一緒に見たい元ネタ解説 キャバリアーはどこから 戦術バジルールって何【ネタバレあり】

2024年1月に公開された「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」は、「特別版」を含め興行収入51億円を突破し、2024年を代表する映画のひとつとなりました。本作のヒットの要因としてガンダムSEEDシリーズの要素が数多く仕込まれ、20年来のファンに受け入れられた点が挙げられます。
 12月25日のブルーレイ発売に合わせて、本作に散りばめられたSEEDシリーズ、その他のガンダムやロボットアニメへの参照・オマージュを「ネタバレ」ありでご紹介していきます。参照元とあわせて見ると「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」をより深く楽しめるでしょう。

※SEEDシリーズの話数表記はHDリマスター版に準じます。また情報はBD発売前のもので、設定の公開などで修正される可能性があります。

●ミレニアム出撃は「めぐりあい宇宙」から
機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の冒頭、衛星軌道の戦艦「ミレニアム」からの出撃シーンは、劇場版「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編」冒頭のキャメル艦隊(ドレン艦隊)迎撃を彷彿(ほうふつ)させます。
 「めぐりあい宇宙」ではセイラとスレッガーがエレベーターで格納庫に向かい、メカニックとのやり取り、各パイロットの名乗りと発進が続きます。「SEED FREEDOM」ではルナマリアがシンの手を取って艦内エレベーターに乗り込み、同様に格納庫から各発進シークエンスへ続きます。
 劇場作品の冒頭でキャラクターと機体を印象付ける効果的な方法といえるでしょう。「SEED FREEDOM」では新型コクピット(全周モニター)が採用されて外部状況が分かりやすくなり、宇宙からの発進や月面の戦いなどでコックピット内のドラマを助けています。

なお、主人公たちの所属する世界平和監視機構「コンパス」は、世界大戦後の国連軍のような役割があり、地球全域へ急行するために衛星軌道からの発進を行っているようです。

(C)創通・サンライズ

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●キャバリアーの活躍は「機甲戦記ドラグナー」を見よう
 デストロイにライジングフリーダムとイモータルジャスティスで揃ってとどめを刺すシーンは、「機甲戦記ドラグナー」第48話「大宇宙(おおぞら)の凱歌」で主人公ケーンのドラグナー1と、好敵手のマイヨのファルケンが大型の敵(ギルガザムネ)にサーベルでとどめを刺すシーンと同様のレイアウトになっています。 「機甲戦記ドラグナー」は福田己津央監督がメイン演出のひとりで、48話のコンテ、演出も福田監督によるものです。

(C)創通・サンライズ

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また「SEED FREEDOM」で重要な役割を果たす支援メカ「キャバリアー」も「機甲戦記ドラグナー」に登場します。長距離武装を持たないドラグナー1の宇宙での能力を補うため、第1話から第10話まで使用されました。第10話「体あたりの防戦」ではキャバリアーを分離して体当たりさせるトリッキーな使い方をされています。

「SEED FREEDOM」では有人機となって電子戦、長期作戦での居住性に強みを発揮しました。特に月面での決戦時、二機のキャバリアーを通じて月面と地球の間でタイムラグなしの遠隔操縦を実現しています。設定では「共時性パリティ通信」(小説版)とされていますが、これは光の速さ(月-地球の往復で約2.6秒)を超越しており量子通信の一種ではないかと思われます。作品世界でも先進的な技術のようです。

(C)創通・サンライズ

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●みんな大好きズゴックとは
 ズゴックは「機動戦士ガンダム」第29話「ジャブローに散る!」で登場した水陸両用のモビルスーツです。前線を離れた人気キャラクター、シャアが赤いズゴックに乗って再び現れます。
 ずんぐりとした少しかわいいフォルムですが、爪や腕部ビームなどで立ち回り、その身のこなしを強調するため多重露光でスローモーションのように表現されます。主人公アムロは「赤い色のモビルスーツ シャアじゃないのか」「間違いない あれはシャアだ」と気付く演出となっています。
 劇場版「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」ではさらにテンポよく編集され、アムロの後段のセリフも「間違いない 奴だ 奴が来たんだ」とより印象的になり富野由悠季監督の演出の技を見ることができます。

「SEED FREEDOM」でも、上記のスローモーションが3DCGで再現され、強敵の再来を予感させます。もちろんSEEDシリーズで赤いモビルスーツといえばアスラン・ザラで、SEEDファンも「奴が来たんだ」と思ったことでしょう。SEEDシリーズは旧作のリファインメカが登場しますが、水陸両用機ではズゴックが初となります。

(C)創通・サンライズ

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●ニコルの戦術? 戦術バジルール? ライトニングバスター?
 「SEED FREEDOM」の後半では、SEEDシリーズのキャラ名を関した作戦が登場します。

「ニコルの戦術」は機動戦士ガンダムSEED 06. PHASE-06「消えるガンダム」で、連合軍のアルテミス要塞に要塞攻略時にザフトのニコル・アマルフィが取った戦術です。バリア「アルテミスの傘/ヴォワチュール・リュミエール」に守られた要塞に、ステルス機能(ミラージュコロイド)を持つブリッツで接近してバリア設備を破壊するというものです。「SEED FREEDOM」では敵方ファウンデーション王国の拠点がアルテミス要塞跡に設けられており、キャバリアーのステルス機能でこれに接近、潜入しました。

「戦術バジルール」は、機動戦士ガンダムSEED 41. PHASE-43「立ちはだかるもの」で戦艦「アークエンジェル」に、元副長ナタル・バジルールが同型艦「ドミニオン」で立ちはだかったときに使用した戦術です。敵の回避経路にあらかじめ近接信管に設定したミサイルを発射し、そこに追い込んで攻撃する方法です。優れた戦術には発案者の名前が冠されることがあり、前大戦時の戦術研究が進み「SEED FREEDOM」時点でその名前で知られてしていると考えられます。

イザークとディアッカが乗る「デュエルブリッツ」「ライトニングバスター」は、機動戦士ガンダムSEEDで彼らが乗っていたブリッツ、バスターの改修機です。
 デュエルブリッツは、両腕の装備が戦死した同僚ニコルの機体ブリッツを意識した装備となっています。 一方のライトニングバスターはガンダムSEEDの模型紙企画「SEED-MSV」に登場する「ライトニングストライカー」由来と思われ、ムウ・ラ・フラガが超長距離狙撃のテストを行ったとされます。ライトニングストライカーは大規模バッテリーと観測用センサーで構成され、本機に特性の一部を受け継いでいるようです。

(C)創通・サンライズ

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●ムウの奇跡は何度目か
 戦略兵器「レクイエム」の発射を阻止したムウ・ラ・フラガが「不可能を可能にするのも辛いよね」とぼやきますが、「不可能を可能にする男」は彼の自称です。これは機動戦士ガンダムSEED 07. PHASE-07「宇宙の傷跡」で氷塊から水を補給することを思いついたときのもので、以後何度も使われます。モビルスーツのシールドで砲を防いだのは機動戦士ガンダムSEED 47. PHASE-49「終末の光」(ストライクで戦艦ドミニオンの陽電子砲を受ける)、機動戦士ガンダムSEED DESTINY 48. PHASE-49「レイ」(アカツキで戦艦ミネルバの陽電子砲を受ける)に続き、今回が3回目(アカツキでレクイエムを受ける)です。

(C)創通・サンライズ

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●カガリの「生きるほうが戦いだ!」からつながったセリフ
 月面での決戦で、アスランはシュラに対して「強さは力じゃない 生きる意思だ」と叫びます。これはカガリがアスランに言ったセリフが対になっています。
 機動戦士ガンダムSEED 48. FINAL-PHASE「終わらない明日へ」で、主戦派の父パトリック・ザラの死に直面し、要塞砲「ジェネシス」の発射阻止のためジャスティスを自爆させようとしたアスランに、カガリは「逃げるな 生きるほうが戦いだ」と説得し、一緒に要塞を脱出しました。
 これは同38. PHASE-40「暁の宇宙へ」で、カガリの父ウズミが、陥落する国からカガリに未来を託して脱出させた行動とつながっています。冒頭のセリフには苦しくても生きて、望む世界のために戦うというSEEDシリーズのテーマのひとつが表れています。

なお、エンディングでカガリが首元に下げる指輪は、機動戦士ガンダムSEED DESTINY 08.PHASE-08「ジャンクション」でアスランから送られたものです。国務に専念する決意から同44.PHASE-45「変革の序曲」で指輪を外されており、この指輪が再び見えたときアスラン、カガリファンから安堵のため息が漏れたと言われます。

(C)創通・サンライズ

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●ディスラプター、実剣「フツノミタマ」はどこから
 月面の決戦で使用されるマイティーフリーダムの頭部ビーム砲「ディスラプター」は、敵のブラックナイトスコードカルラに随伴する無人機「ジグラット」を、要塞メサイアの残骸ごと両断する強力な装備です。
 「disrupt」はもともと崩壊、粉砕、中断などを意味し、劇中設定では「収束重核子ビーム砲」となっています。
 同名の兵器は1949年のSF小説、エドモンド・ハミルトン「スター・キング」にも登場します。中央銀河帝国の皇族に伝えられる超兵器で、宇宙の一部を現在の次元の外に押し出して消滅させ、また周囲に破壊をもたらします。決戦で対峙した敵艦隊の半数をこれで消滅させています。ただ「スター・キング」が直接に参照されたかは明らかではありません。

最終決戦で用いられるもう一つの装備がモビルスーツ用実剣「フツノミタマ」です。
 ガンダムSEEDの世界では、外伝「ASTRAY」でジャンク屋ロウ・ギュールが搭乗機アストレイレッドフレームで「ガーベラストレート」という実剣を使用しています。
「SEED FREEDOM」でファウンデーション王国機は、ビーム兵器を無効化するフェムテク装甲(Femto Technology装甲)を有しており、対抗手段として実剣が有効でした。「フツノミタマ」がどのように作られ、ミレニアムに搬入されたか、そこにロウ・ギュールが関係していたかは明らかになっていません。
  なお「フツノミタマ(の剣)」は日本神話において、タケミカズチが用いた剣とされています。

(C)創通・サンライズ

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本記事で紹介した主なエピソード
機動戦士ガンダム 第29話「ジャブローに散る!」
・劇場版「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」
機甲戦記ドラグナー 第10話「体あたりの防戦」
機甲戦記ドラグナー 第48話「大宇宙の凱歌」
機動戦士ガンダムSEED HDリマスター 06. PHASE-06「消えるガンダム」
機動戦士ガンダムSEED HDリマスター 41. PHASE-43「立ちはだかるもの」
機動戦士ガンダムSEED HDリマスター 47. PHASE-49「終末の光」
機動戦士ガンダムSEED HDリマスター 48. FINAL-PHASE「終わらない明日へ」
・コミック:ときた洸一、千葉智宏「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」角川書店、2003-2004.
・コミック:戸田泰成、千葉智宏「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R」角川書店、2003-2004.
・小説:エドモンド・ハミルトン「スター・キング」1949(東京創元社、東京創元SF文庫、新版、訳:井上一夫、2020).

参考文献
・「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」劇場パンフレット、2024.
・後藤リウ「小説 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」上下、KADOAKWA、2024.
・「永久保存版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』Special Edition 運命に抗う意志」MOVIE WALKER、2024.
※このほか福田己津央監督のSNSでの発信を一部参考としました。

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

アニメハック編集部

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[筆者紹介]
アニメハック編集部(アニメハックヘンシュウブ)
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機動戦士ガンダムSEED FREEDOM

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 9

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