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特集・コラム 2021年9月6日(月)19:00

【かねやん的アニラジの作り方】第27回 「応援する、される、商売にする⁉」について考える

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オリンピックは当初想定していたものとは、かなり様相を異にする大会となりましたが、やはり「アスリートの皆さんのひたむきさ」は、私なぞは毎日テレビ・ラジオにくぎ付けになり、感動と涙の毎日を過ごすことになりました。このきわめて困難な状況下で行われた今回の東京大会、今は仮に評価できない人がいるかもしれません。しかしこの大会をやり遂げたことは後世において、敗戦の焼け野原からわずか19年で開催された前回大会に勝るとも劣らない、日本史の栄光の1ページを飾ることは間違いないと確信しています。それほどまでに今大会に関わったすべての人が去年突如襲いかかった未知の病との戦いを繰り広げ、その人たちに日本人すべてが思いを寄せ、この困難な大会をやり遂げた。これは賞賛されるべきものだったと思います。本当に誇らしい国に生まれたものだとあらためて思います。
 さて、この大会で最後まで紆余曲折したのは「会場に観客をいれるべきか否か」という問題でした。この問題は観客をどれだけ入れるかということ以上に、観客がいることによって「会場でまきおこるであろう熱狂的空間がつくり出す空気」を恐れていたのではないかと思います。競技をプレイするアスリートと応援する人がつくりだす一体感。これは時にフーリガンといった暴動をまきおこすことすらしてきました。演者と観衆との関係においては、僕の仕事とも密接です。というかむしろ、僕の仕事は「応援産業」とも言えます。そんな興味で「応援の人類学」(青弓社刊)という本を手に取りました。
 この本は「野次、喝采、そして応援」という流れを体系化し、スポーツと芸能に絞って歴史から解説しています。例えば、日本のプロ野球では大昔、よくグラウンドにファンが乱入するシーンが見られました。もちろん今はそんなシーンは見られません。これはただ球場側が警備を強化して統制をとっていったわけではありません。観衆同士が逸脱した観衆を統制し、集団的な応援に発展していきます。もちろん、その過程で観衆同士の喧嘩、暴力団の関与など様々なトラブルを経て、今の成熟した形になっていきます。確かに特に意識したわけではありませんが、僕の普段の仕事でも、「ファン」との関係値は特に心を砕くところです。
 21世紀に入って、スポーツ、芸能など様々な分野で「イベント」の巨大化が進みました。これはひとえに「演者と観衆」が一体化し、ある一定のルールに基づいて成熟化した「応援体制」が確立されたことによって、安心で安全な(どっかで聞いたことありますね)産業として成立していきました(そういう意味では今回のオリンピックも観客を入れても「感染の広がらないルール」に基づいた楽しみ方が開発されたと思いますが)。「演者と観衆」の一体化はある意味、「共犯」「お約束」もつくっていきました。
 そこにコロナが襲いかかります。「安心安全な空間」の根底が覆ります。この「エンタメのイベント時代」がウイルスによって一気に終焉を迎えることになるとは。コロナになって2年弱。個人的にはもう元には戻らないとおもいます。これは「有観客」ができないということではありません。元のかたちに戻らないだろうということです。この2年弱の間にイベントにおける「共犯」「お約束」が崩れました。声優さんと話していてよく聞きますが、いかに歌が観衆の助けで盛りあがっていたかに気付いた、という話です。歌を素材にして演者が媒介になって「観衆」が盛り上がるという構図です。
 今回のオリンピックで僕が最も感動したのは、女子1500メートルで初めて決勝に進出した田中希実さんです。彼女は僕の中学の後輩ということもあって注目していましたが、ただ速く走るというシンプルな競技は応援による歓声は不要でただただ感動しました。もちろん本人は満員のスタジアムで競技をしたかったかもしれませんが、僕の仕事の示す方向をみせてくれたような気がします。シンプルにひたむきなものを応援する、その原点に立ち返りたいと思います。

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兼田 健一郎 株式会社ベルガモ代表取締役社長

かねやん的アニラジの作り方~体験的アニラジプロデュース論~

[筆者紹介]
兼田 健一郎 株式会社ベルガモ代表取締役社長(カネダ ケンイチロウ)
昭和43年大阪府生まれ。法政大学社会学部を卒業、平成3年ラジオ大阪に入社。報道部記者として大阪府警や国会を担当し、事件事故、55年体制崩壊を取材した。東京支社に転勤後一貫してアニメゲームゾーン1314V-STATION の番組プロデュースに携わる。編成企画部長、編成制作部長、東京支社長などを歴任。平成30年退社。日本の新しい音声コンテンツを創造する株式会社ベルガモを創立。

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