2020年4月23日(木)19:00
新型コロナウイルスのフィギュア業界への影響とその後 当日版権を巡る新たな動き
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まずは、これまでも何回か書いてきた新型コロナウイルスがフィギュア業界に与えた影響の現在から。初期は中国の工場が閉鎖されていることが問題になっていたわけですが、現在工場は動き始めているようで、フィギュアも予定からは遅れつつも発売されるようになってきました。ただ、日本人スタッフが中国に入国できず工場に監修に行けないので作業が滞るということもあるようです。
また、緊急事態宣言によりゲームセンターやアミューズメントスペースが休止しているため、プライズフィギュアは完成していても出せないという状態に(一部ショップで販売されている例はありますが、プライズフィギュアは本来そういった直接販売はNGなのです)。
そしてホビー系のイベントですが、現状では6月あたりまでのイベントはほぼ中止・延期が決定しています。5月のホビーショーは中止、5月のホビーラウンド、6月のエヴァワンフェスとAK-GARDENは延期。同じ6月のキャラクターズフェスタ in 横浜1はまだ発表はありませんが……。海外ではAnime Expo、コミコン、Japan Expoなど7月の大規模イベントは軒並み中止決定。いつまでこの状況が続くのか分からず、大きなイベントで準備期間を必要とするものは9月あたりまで中止・延期が決まっているものもあります。
日本のホビーイベントでは、オリンピック開催期間の7~8月は予定がほぼなかった(8月末にメガホビEXPOは予定されています)ため、次のイベントは10月あたりから開催予定。一番大きなホビーイベントであるワンフェスは11月の予定になっています。
このワンフェスへの参加登録締め切りは先週末でした。Twitter等のSNSでその反応を見ていると、11月でも本当に開催できるのか不安視する声もチラホラ。秋は参加せずに様子を見る、参加しても当日版権の申請は見送るというディーラーも多く見かけました。もともとイレギュラーな開催日程だったところに、この新コロナウイルスによる先行きが見えない不安感も重なるという状況では仕方ないところ。さらに今週になってワンフェス(10月のC3AFAなど他にも多数)の会場でもある幕張メッセの臨時医療施設として使用が検討されるなど、さらに状況は複雑になっています。2月のワンフェスに関しても先々月の記事(https://anime.eiga.com/news/column/figure_trend/110601/ )で書いたように当日版権の申請は秋と同時だったのでもう締め切られています。ディーラー側もメーカー側も一般参加者もコレまで体験したことのない状況で、これから2回のワンフェスがどういったことになるのか現時点では何も断言出来ません。
この状況を受けて、というわけではないのですが、版権に関して気になることがいくつか起きています。
まず、新型コロナウイルスの影響によるリモートワークのためにワンフェスの当日版権を受付できないという版権元が出ているということ。状況次第によっては更に増える可能性も考えられます。
そして、キャラクターズフェスタが9月に開催予定の「トレジャーフェスタオンライン」()。これはネット上で当日版権イベントを開こうというもの。以前から予告はされていたのですが、いよいよ本格的に開催というわけです。ただ、なにぶん初の試みなので一体どうなるのか想像も付きません。ネットで当日版権を許諾する版権元はどのくらいあるのか、参加ディーラー数や一般参加者数はどうなのか、当日の回線は大丈夫なのか。いろいろ気になることは多いのですが、こればかりは実際の開催を待つしかありません。
もうひとつは二次創作をフィギュアにおいても認めるという方向性。
これまでは同人誌などで二次創作を認めている版権元であっても、フィギュアなど立体物に関しては当日版権のシステムに則った申請を必要とする、もしくは別途独自の版権システムを運営しているという状況でした。そんな中でYostarの「アズールレーン」「アークナイツ」、さらにシティコネクションが保有するJALECOのゲーム(「スーチーパイ」シリーズや「ゲーム天国」なども含む)の二次創作ガイドラインではフィギュアを含む立体物も二次使用可能と明記されているのです。つまり当日版権イベント以外での販売もOKということ。もちろん、公序良俗に反しない、趣味の範囲内など基礎的なお約束はありますが。
「アズールレーン」に関しては以前からこの発表はされていたのですが、当日版権イベントではそのシステムに則ったかたちで運営されており、その他の同人イベントや通販等ではこれまであまり利用されていませんでした。それが当日版権イベント開催スケジュールの不透明さ、来年冬ワンフェス当日版権申請の締め切りの早さなどもあって、注目度も増しているのです。
特に「アズールレーン」はワンフェスの当日版権申請数でもトップグループの1つで、フィギュアとしても非常に人気の高い作品。新キャラや新衣装の発表も頻繁に行われているので、当日版権申請でかかるタイムラグなしに新作を発表できるというのは魅力的です。実際に通販も行われるようになってきています。
他に人気作品では「東方Project」も同人の範囲内での二次創作は自由とされており、イベントなどでレジンキットなど立体物が頒布されていることがあります(「東方Project」は企業作品も二次創作作品扱いだったりいろいろと面白いのですが、詳細はそれぞれ調べてみて下さい)。
ただ、基本的には当日版権イベントに参加する際にはそのイベントでの決まり事に従う必要があります。別途当日版権申請が必要なところもあれば、二次創作ガイドラインを適応して自由に出せるところも。
もともと当日版権という、1日だけ公式に商品化することを認めるという独自のシステムは、ゼネラルプロダクツが主催していた時期のワンフェスで生まれました。84年にスタートした最初期のワンフェスでは同人誌のようにディーラーが版権を取らずに自由気ままにフィギュアを作って頒布していたのですが、87~88年頃から当日版権システムが始まったのです。これはレジンキットを無版権で売っているというのを版権元から怒られた(誰かチクった人がいたとか)けど、単に排除するのではなくアマチュアディーラーをどうにかこの時だけでも参加させられないかということで考えだされたもの。一般商品として販売されているものと同じようなものが無版権で売られているという状況だったため、これは仕方ない話なのです。
その後、版権元が当日版権に対してどのように考えるかというのは、時代によって変わってきました。人気ディーラーに数百個単位で許諾をする&それが一瞬で完売するなんていうこともあれば、正式な許諾はしないけど「DEAD OR ALIVE」を無許諾で販売してかまわない(いろいろエロいものが出たことなどもあって、その後これは取り消しになり当日版権そのものも下りなくなった)なんていうこともありました。PVC完成品がブームになり始めた頃は当日版権レジンキットについては割と自由な感じのところが多かったような気がしますし、フィギュアが商品としての地位を高めると許諾が降りなくなったり再販NGや個数制限など条件が厳しくなったりしています。
一般の会社の業務として考えた場合、当日版権に関わることでかかる手間とその収入はほとんどの場合見合わないものであり、ファンサービスの一環として行われているというのが実情。立体物に関して理解のある版権元は個数制限や版権料を緩やかなものにすることがあったり、ディーラーが作りやすい独自版権システムを導入したりしてきました。そういった中でのこの二次創作ガイドラインは、さらにその自由度を増しているわけです。
今後こういった扱いの作品が増えるのか、各ディーラーさんはそういった状況に対してどう対応していくのか、注目なのです。
ホビー&フィギュア トレンド
[筆者紹介]
島谷 光弘(シマタニ ミツヒロ) フィギュア専門誌「フィギュアマニアックス」を企画・編集し、2000年頃からフィギュアが質、量、人気ともに拡大する10年以上の時期をメディア側で見続ける。現在はフリーでウェブ「ホビーマニアックス」の運営や、ホビー系のウェブやメディアで執筆中。
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