2023年10月26日(木)19:00
上海、バンコクでワンフェス開催、フィギュアバブルがはじけた(?)中国…海外フィギュア市場あれこれ
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10月に、中国・上海とタイ・バンコクで「ワンダーフェスティバル」が開催されました(上海は2~3日、バンコクは20~22日。12月には北京ワンフェスも開催予定)。いずれも会場マップ&ブース紹介や行った人の話を聞いていると、アニメやゲームキャラの当日版権フィギュアが中心の個人ディーラーが会場の過半数を占める日本のワンフェスとは少し異なって、一般販売のメーカーフィギュアの展示や販売が大きな比率を占めているようです。また、個人ディーラーはアート的なものや作家性の強いソフビなどが多いようで、そのあたりの雰囲気も日本のワンフェスとは異なっている様子(前回の日本のワンフェスでもそうでしたが、ソフビは世界的なブームになってきているのです)。ただ、フィギュアだけのイベントが各地で開催され、そこにワンダーフェスティバルと冠されているというのは、フィギュアというジャンルの強さと、ワンフェスというブランドのポテンシャルを感じさせるものとなっています。
他にも各地で開催されるアニメやゲーム系のイベントでは、フィギュア関係の情報がよく出てきます。海外のイベントにも積極的に参加しているグッドスマイルカンパニーやバンダイをはじめ、海外メーカー含むさまざまなメーカーの新作情報が流れてきたり、会場のあちこちでフィギュアを売っている様子が確認できたり。
別記事でも書きましたが、以前はアニメの物理的な商品でいちばん重要な地位を占めていた映像ソフトも売れなくなり(アメリカの大手小売りチェーンのBEST BUYでもDVDの販売は2024年で終了というニュースも)、代わりにアニメ関係の物理的なフラッグシップアイテムのひとつとして注目されているのがフィギュアと言えそうな状況なのです。
今回はそういった海外のフィギュア状況を少しまとめてみます。なお、上述したソフビ関係はまた別のトレンドなので今回は省きます。
まずは北米から。メーカーの人に話を聞くと、フィギュアが伸びている市場としてまず上がるのがここ。なかでも、日本ではプライズフィギュアやロトフィギュアとして発売されている低価格帯フィギュアの人気が非常に高いのです。北米市場ではそういったフィギュアは30~50ドル程度で普通に販売されています。プライズだけではなく、ロトフィギュア(一番くじのフィギュアは“Ichibansho”というブランド名)も単体の商品として販売されています。もちろんいずれも正規ルートのもの。7月に開催されたAnime Expoの展示ルームを歩いている動画を見ると、あちこちにそういったフィギュアを扱っているブースがかなりありました。
また、バンダイはアメリカなどでは低価格帯(だいたい20ドル以下)の可動フィギュアを出しています。「鬼滅の刃」や「ナルト」「ドラゴンボール」などいろいろあり、いずれも可動はシンプルでサイズも小さめ。これらはAnime Expoではバンダイブースに展示されていました。アメリカだと「スター・ウォーズ」やアメコミの安い可動フィギュアが昔から出ていますが、それに準じたようなものということになります。これらは基本的に日本では展開していない海外市場向けのもの。
なお、ついでにAnime Expoの各所レポートを見ていて気になったものもまとめておきましょう。日本からはいつものようにグッドスマイルカンパニー、コトブキヤ、バンダイなどが展示ホールに出展していましたが、他にもフリューやボークス、渋谷スクランブルなどが出ていました。講演や発表を行うパネルにはコトブキヤやフリューが参加(フリューは2コマやっていました)していましたが、例年パネルを展開していたグッドスマイルカンパニーは今回は無し。海外メーカーで目新しいところでは、中国で非常に人気が高いPOP MARTが大きなブースを展開、さらにJIMEI PALACEという中国メーカーが「ワンピース」などの巨大なフィギュアを多数並べていました。なかには全高2メートルの等身大サイズ「KOF」不知火舞があったり、会場でもかなり目立つも一角になっていて盛況のようでした(POP MARTのほうは動画やレポートからその反響は確認できませんでした)。JIMEI PALACEのものは正規版権商品(ただし日本国内では販売できない)で、Anime Expoオフィシャルの配信レポートでもインタビューされるくらいには注目されている様子。ただそのレポートで、ここで買えますと口頭でウェブのアドレスを読み上げてたフィギュアショッピングサイトを確認してみると、中国系で非常に多い無版権フィギュアを数多く扱っているサイト。JIMEI PALACEのものは正規版権であるとはいえ、そういったサイトを紹介するというのは版権意識の低さを感じるところでした。他にもAnime Expoでは気になるポイントもあったのですが、会場で実際に確認しないと判断できない部分もチラホラ。動画レポートで一瞬写ったものを確認したいと思っても、どうしようもなく。来年はAnime Expoに現地参加する予定(ついでにニューヨークにも行ってタイムズスクエアにできた魂ネイションの直営ショップも見物するつもり)なので、また最新&詳細情報を確認してきます。
なおアメリカで非常に人気が高くアニメやゲームキャラも多いFUNKOですが、コレクター商品としては相変わらずの人気で、徹夜での争奪戦などの話もチラホラ入ってきます。一方で最近若い世代に人気が高いフィギュアメーカーとして2019年にできたばかりのYoutooz(https://youtooz.com/)という名前もよく聞くようになりました。ここもアニメやゲームキャラも含むデフォルメキャラフィギュアを出しているのですが、そのデザイン的な特徴は目。FUNKOはまん丸い目ですが、Youtoozはアーチ型のニッコリ目。このニッコリ目は、アメリカ人が日本アニメのデフォルメを描くと必ずと言ってもいいくらいよくやる表現パターンで、かなり昔、90年代くらいから見かけるある意味パターン化したもの。そのデザインに加えて、フィギュアのネタとしてはネットミームになったものを数多く手がけているのが特徴。Youtooz側のコメントによれば、FUNKOの購買層の中心は30代、Youtoozは10代と若い世代中心だとか。このあたり、市場がどう変化していくかも注目しています。
続いて中国。これもあちこちで聞くのが、中国のフィギュアバブルははじけたという話。経済のバブルのほうもなかなか大変なことになっていますが、フィギュアについてもかつてほどの勢いはなくなっているというのは、他の取材時にも複数のメーカーから聞きました。とはいえ、もちろんまだまだ大きな市場であるのは間違いないところ。
中国国内のアニメやゲームなども強くなり、そういった作品のフィギュア化も増え、中国のフィギュアメーカーもかなり増えています。上海ワンフェスでも中国メーカーが多数出展していたようですが、大きなサイズで派手なベースを使った大ボリュームのものが多いというのが特徴(欧米でも多いのですが、中国はさらに強いという印象)。投機的な意味合いもあるという話も聞きます。バブルがはじけたと言われる状況下で、それがどうなっていくか。
今後中国IP、日本IPの扱い含めてどのように変化していくか、中国のフィギュア工場はどうなるのか、政治経済状況含め予断を許さないところです。
ヨーロッパ圏だと、主にフランス語圏のメーカーですが、ルクセンブルクにあるTSUME ARTというメーカーをはじめ、大きなサイズで高価格のフィギュアをつくるメーカーがいくつかあります。このエリアでも低価格帯フィギュアは順調に伸びているようで、POP UP PARADEやプライズフィギュアは確実に増えつつある模様。
一方で、南米はこれからの市場。日本のアニメなどの人気は高いのですが、さまざまなコスト面の問題もあって、いまのところはあまり……という話を聞きました。
駆け足でざっくりとさまざまな地域の様子を知る限りでまとめてみました。
フィギュア市場が形成されるには、まず日本のアニメやゲームが浸透するのが必要。コロナ禍以降、配信等を通じて視聴層が確実に増え(GOOGLE TRENDで“ANIME”の検索数をチェックしてみると、コロナを機に検索数が急上昇しているのが分かります。Anime Expoも過去最高の参加者数でした)、ほぼ日本と同時に視聴できる地域が確実に増えています。そのフラッグシップグッズとしてのフィギュアへの注目度はまだまだこれからも高まっていきそうです。ただ、コストが上がって価格が上がり、中国の工場が今後どうなっていくか分からないなどの不確定要素はあります。3Dプリンターが革新的に進化すればまたいろいろな可能性が生まれそうでもあります(そう簡単にはいかないですが)。
こういった状況はあちこちで話を聞いたり、現地イベントに行ったりしないと正確な状況はつかめません。フィギュア関係はまだまだこれからも面白そうなので、こういった取材は続けていきたいと思っています。
ホビー&フィギュア トレンド
[筆者紹介]
島谷 光弘(シマタニ ミツヒロ) フィギュア専門誌「フィギュアマニアックス」を企画・編集し、2000年頃からフィギュアが質、量、人気ともに拡大する10年以上の時期をメディア側で見続ける。現在はフリーでウェブ「ホビーマニアックス」の運営や、ホビー系のウェブやメディアで執筆中。
作品情報
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