2020年3月22日(日)19:00
【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第28回 「ドロヘドロ」の美術、そして3DCG
(C) 2020 林田球・小学館/ドロヘドロ製作委員会
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「ドロヘドロ」が楽しい。ドライさとウェットさの不思議な同居。クールなようで、ほのぼのと明るくもある。哄笑に満ちたセクシー(notエロ)&バイオレンス。まさに混沌。それが「ドロヘドロ」。原作コミックの猥雑な世界を、なんと見事に映像化していることか。新型コロナウイルスの騒動でどうにもクサクサしている気分にも、よくフィットする。現実では品切れ続出のマスクも、大量に出てくるし(関係ないし、よくわからない理屈)。
映像化成功の鍵は、ひとつは美術だろう。昨年「海獣の子供」でも素晴らしい仕事を見せてくれた美術監督・木村真二の力が、今作においても大いに発揮されている(今作でのクレジットは「世界観設計・美術監督」)。ケバケバしくもダーク、薄汚くも美しい、どこかアジアンなテイストの漂う美術がおしげもなくドシドシと画面に投入され、見応えバッチリだ。
もうひとつが、3DCGではないか。今作のキャラクターは、いわゆる作画と3DCGのハイブリッド形式で表現されている。大半のカットは3DCGで手がけられており、複雑なディティールと活き活きとした芝居を両立させることに成功している。そのどちらが欠けても、「ドロヘドロ」らしさは消えていたはずだ。MAPPAの公式ツイッター()にカット担当者のコメント付きで簡単なメイキング動画が掲載されているので、未見の方はぜひ、チェックされたし。サメ恵比寿()の絶妙なユーモアなど、驚くのではないだろうか。
3DCGが魅力的な作品といえば、今期には「空挺ドラゴンズ」もある。意欲的なセルルック3DCG作品をコンスタントに送り出し続けるポリゴン・ピクチュアズの最新作だが、モデルの造形や影の処理などに工夫が見られ、キャラクター表現において同社のこれまでの作品からさらに一歩抜きん出た魅力を感じさせるものに仕上がっている(ヴァナベルさん、好きや……)。セルルック3DCGによる表現追求のパイオニア的存在であるサンジゲンが、また一歩前に踏み出し、ゲームのイベントCGに近いルックに挑戦している「BanG Dream! 3rd Season」も見逃せない。「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」「シドニアの騎士」「楽園追放 -Expelled from Paradise-」と、洗練されたセルルック3DCGアニメ作品が立て続けに現れた2013年から15年前後の驚きといったらなかったが、さらに時代は前に進んだのだなと、これらの作品を見ていると、あらためて感じ入ってしまう。
本稿で名前を挙げた作品群や、昨年の「BEASTARS」「HELLO WORLD」などのことも思い浮かべると、この先には、もはや「3DCGアニメである」ということを、視聴者がことさらに意識しない時代がやってきそうだ。いや、もしかしたら、既にそうなっていて、単にオールドなアニメファンである自分が取り残されているだけなのかも? トホホ。
……なんだか最後はしょんぼりしてしまったが、これからもめげずにやっていきたい。ってな感じで、また次回~。
前Qの「いいアニメを見に行こう」
[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ) 1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。
作品情報
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