2025年1月20日(月)19:00
【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第58回 「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」から連想したこと
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今回は「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」を取り上げます。といっても、ほとんど具体的な内容の話はしません。この作品を梃子にした状況論というか、半分は自分語りのようなことをしています。ネタバレを気にする未見の人も安心してください。
しかし無意識の匂わせというか、ほのめかしというか、どうしたって書きぶりから伝わってしまうものは多少はあると思うので、まったく事前情報を入れずに劇場に足を運びたい人、またはテレビシリーズとしての放送を待とうと考えている人は、お手数ですがこの時点で引き返してくださいませ。すまんですのう。連載を楽しんでいただけている方で、そういう人がいたら申し訳ありません。次回からまたよろしくです。
……というわけで仕切り直して。
初見の感想は「これは荒れるだろうなあ、ネット」だったんですが、意外とそうでもなかったですね。初日朝イチのIMAXシアターから出てきた人たち、大体笑顔でわちゃわちゃしていたし、上映後の物販も大盛況。私もTシャツを買っちゃいました。
いい時代になったなと思います。今どきのアニメファンはオープンなマインドで物事を積極的に楽しむ姿勢ができている。コアなオタクたちにしても、歳を重ねたからか、やはりだいぶ丸くなったというか。世の中にオタク趣味が広く受け入れられている感があるからか、舐められまい、傷つけられまいと、ハリネズミみたいな攻撃的な護身をしているオタクって、もうあまりいないんだな、いても目立たないんだなー……ということを感じた次第。
そうなんです。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のときにも思いましたが、すっかりオタクって穏やかな気性になったんだなと。ネット掲示板でナイフみたいにとがっては、夜な夜な触れるものみな傷つけていた、あの日のキミはもういない。かくいう私も、43歳を目前に控えて、感情の激しい起伏はなくなってきましたよ。これが不惑ってやつなのか。
トリッキーな、「それ、やっちゃってよかったんだ」的な設定も、びっくりはするもののとにかくヨシ。マチュとニャアン、シュウジの3人の主人公たちの、鶴巻和哉・榎戸洋司コンビらしい思春期感の描写も、もちろんヨシ。宇宙での戦闘の三次元的な空間演出もヨシ。動かすときはダイナミックに、それでいて止めるときは大胆に止める(イメ背と特色のカットがあると「ガンダム」らしさが出るんすなあ)、画面のメリハリもヨシ。うんうん。設定面には考察要素もばっちりで、楽しいものをありがとうございます、みたいな感じ。
オタクは(ちょっといびつなところはあるかもしれませんが)大人になりました。見る側も、送り出す側も。流れた刻が、穏やかに育ててくれたのでしょう。さて、では、そんな大人たちの前で、劇中の思春期のキャラクターたちはどんなドラマを演じてくれるのでしょうか。そこのところは、今回の劇場公開分まででは、ほとんど未知数のまま。
願わくは、令和の世に送り出されるにふさわしい、少女と少年の戦いと成長を見せていただけたらうれしいものです。かつて「ガンダム」は、アニメは、オタクは、上の世代や無理解な周囲に対しての反抗の側面を持った存在でした。ですが今、そのどれもが世の中に受け入れられ、温かな広がりを見せている。ということは、裏を返せば、それらは若い世代であったり、少数派から、反抗「される」立場、強い立場になったわけです。とはいえ、出自としては反抗「する」立場から始まっている。このアンビバレントな立ち位置が、マチュ、ニャアン、シュウジの前に立ち塞がる世界の形に反映されているといいなあ……なんてことを、身勝手に期待してしまうのですが、はてさて、どうなるでしょうね。
ひとまずは心を落ち着けて、「フリクリ」「トップをねらえ2!」を復習しようと思います。そしてテレビシリーズの放送開始を、楽しみに待ちたい。
前Qの「いいアニメを見に行こう」
[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ) 1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。
作品情報
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機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning
宇宙に浮かぶスペース・ コロニーで平穏に暮らしていた女子高生アマテ・ユズリハは、戦争難民の少女ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技《クランバトル》に巻き込まれる。エントリーネー...
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