2019年7月6日(土)19:00
【アニメ商売備忘録】第1回 製作・プロデューサーって、そもそも何だろうか。
テレビアニメ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」放送終了後、第1回続編企画会議のホワイトボード。作品の状況、スタッフの今後のスケジュール、制作意欲などを明け透けに、「何を作るか」話し合いました
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初めまして。レコード会社のアニメ部門子会社で、10年余りアニメを作ってきました。とはいえ「プロデューサー(の仕事)」って何なんだろう? とは自分でも日々思うところだったりするので、アニメの「プロデュース」「プロデューサー」について、私の知るところ、思うところを書いてみようと思います。
製作と制作、この2つの言葉は、多くの日本語辞書によれば、さして違いはありません。ですが、コンテンツを扱う業界、とりわけ映像業界ではこの2つを(割と)厳密に異なるものとしています。
◆アニメに限らず、多くの「映画の著作物」を作る環境が、「企画・発注者」(製作者)と「実際に作る作業者」(制作者)とに別れている
◆著作権法が「映画の著作物」の著作権は映画製作者に帰属すると規定している
◆著作権法はまた、映画製作者を「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」と規定しており、これは一般的に「映画製作のために経済的リスクを負担する者」と解されている(主に「責任」の部分で)。
というのが、「製作」と「制作」を分けて扱う大きな理由と思われます。つまり、映画を企画し、その製作費用を負担した者が、その映画の「製作者」として著作権を有することになります。
一方、業界用語としての「製作」には、それ以外の意味合いも含まれます。
コンテンツ業界の仕事は、大きく「制作/宣伝/営業/管理」の4分野に分けることができます。
◆制作:正にコンテンツを作る仕事。作る以前の、「何を作るか」を考える「企画」もここに含まれることが多いです。また、完成したコンテンツのハードコピー、つまり本・CD・ビデオなどのパッケージメディアを作る仕事や、その他の二次的な商品を作る仕事も含まれたりします。
◆宣伝:コンテンツそのものの、またはハードコピー商品の、あるいはその他二次的な商品の想定ユーザーへの情報伝達、です。
◆営業:上記のハードコピー商品やその他二次的商品の卸売・小売などの販売業務と、コンテンツの二次使用権の権利販売(ライセンス営業)など。
◆管理:制作上の管理も一部含みます(監修など)が、主に完成後のマスターほか素材の管理、売上の収受および印税等関係者への分配などの金銭の管理、契約業務など。
あるコンテンツについて、これら全ての業務が「製作」に含まれている、というのがコンテンツ産業、なかんずくアニメ業界の共通認識と言ってよいでしょう。
というわけで、あるアニメの製作プロデューサーは、そのアニメの企画から始まって、制作/宣伝/営業/管理の全ての業務をやらなきゃならないのかぁ、大変だなぁ。
……いやいやいや。無理です。ひとりでは。
そう、何も全ての業務を自ら行う必要はないのです。というかむしろ、実制作の現場含め、様々な業務を社内外の様々な方々に「やってもらう」のが、プロデューサーの仕事なのです。
「やってもらう」、これを仕事っぽい言葉に置き換えれば「発注」です。ひとつのアニメを作り、広め、稼いでいくのに、関わる全ての人に対して「良い発注」をするのがプロデューサーの仕事かな、と最近は考えています。
アニメ商売備忘録
[筆者紹介]
南 健(ミナミ タケシ) 音楽・映像パッケージソフトメーカーの映像製作プロデューサー。新卒でレコード会社に入社後、営業、管理、宣伝の各部門を経験し、2007年より現職。担当作品は「天体戦士サンレッド」、「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」シリーズ、「月がきれい」ほか。
作品情報
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