スマートフォン用ページはこちら
ホーム > ニュース総合 > 特集・コラム > 数土直志の「月刊アニメビジネス」 > 【数土直志の「月刊アニメビジネス」】「AnimeJapan 2019」企業ブースから見えるアニメ業界勢力図

特集・コラム 2019年4月24日(水)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】「AnimeJapan 2019」企業ブースから見えるアニメ業界勢力図

イメージを拡大

■イベントの会場マップは、まるで戦国合戦図
 「東京ゲームショウ」や「東京おもちゃショー」など、巨大展示場を会場にした業界イベントは数多い。僕はそんなイベントに出かける時、まず会場マップを広げてみる。
 どんな作品があるのか、あるいは現場で取材に周るための導線確認である。しかしそれより注意するのは、ブース出展企業の名前とブースの大きさだ。出展ブースをどう扱うかは、各企業の現在のビジネスへの考え方や勢い、さらに懐具合にも左右される。単純に景気のいい会社はブースが大きくなる。会場地図は、さながら業界における帝国領土か戦国合戦図にも見える。
 たとえば「東京ゲームショウ」は、少数の巨大企業の大型ブースを中小ブースの他のゲーム会社が取り巻く。「東京おもちゃショー」はもっと極端だ。バンダイナムコグループとタカラトミーグループが、それひとつが個別イベントのような巨大ブースで他企業を圧倒する。玩具業界の2社寡占体制が、そのまま会場地図に反映されている。

それではアニメ業界はどうだろう。アニメの業界イベントは、2019年3月23、24日にパブリックデイが東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2019」だ。アニメ関連企業・団体が、4月以降に向けて新作・人気作を一挙にお披露目する。アニメファンならお馴染みだろう。
 ここでも視点をちょっと変えて会場地図を眺めると、アニメビジネスの現況が読み取れる。まずは会場全体。企業出展者数もブースの面積も、2015年の第1回以来増え続け、過去最高。それは近年拡大を続ける日本アニメそのものだ。
 バンダイナムコ、エイベックス・ピクチャーズ、KADOKAWA、トムス・エンタテインメント、東宝……と大型ブースは目白押し。そして小型のブースから大きなものまでサイズが万遍なく多数あることにも気づく。アニメ業界はゲーム業界や玩具業界と比べて、中小企業から大企業まで様々な会社によって支えられていることがわかる。それは同時に競争の激しさも示している。

■新たな強力プレイヤー アプリゲームと動画配信
 そのなかでも今回会場で目を引いたのがソニーミュージックグループだ。アニメビジネスの中心であるアニプレックスに加えて、音楽レーベルのSAKURA RECORD、同社の主要タイトル「Fate/Grand Order」「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」などがそれぞれ大型ブースをだしていた。ブースが並ぶ一角はまるでアニプレックス村のようだった。僕は勝手に「アニプレ通り」と名付けたほど。

アニプレックスの前出の主要作品2つは、いずれもアプリゲームである。そんなアプリゲームの勢いは、他の企業からも伝わる。
 80小間の超巨大ブースのブシロードも、「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」や「バンドリ!ガールズバンドパーティ!」などのアプリゲームで成功した会社だ。そして「Fate Grand Order」を開発するディライトワークス、XFLAG(ミクシィ)、KLabといったゲーム会社自体の出展もあった。ゲーム企業がアニメ業界の一角に確実に食いこんできている。

もうひとつの新顔は、動画配信である。オリジナルアニメで勢いを増すNetflixは、今年2回目の参加だ。昨年に続く巨大ブースには2つのステージが設けられた。期間中は、30人以上もの声優をゲストに招いた。
 動画配信では中国のビリビリもすでに「AnimeJapan」の顔なじみだ。ビリビリのメイン企画もステージイベントである。ところがその対象は実は日本のファンでない。「AnimeJapan」の会場でゲストトークをし、それを海を越えた中国までライブ配信する。彼らの顧客はスマートフォンやPCの向こう側にいる。配信に加えて、アニメの世界コンテンツ化というまた別の流れもここから伝わってくる。

イメージを拡大

開催1日目、ビリビリのステージでは、さらに日本アニメのグローバル化を象徴するような出来事があった。ビリビリとアメリカで日本アニメビジネスを展開する大手企業ファニメーションの提携発表会見が行われた。中国の配信会社とアメリカ企業が、日本を飛び越えてアニメで協力するという。まるで日本抜きでもアニメビジネスは出来るとも受け取れ、日本から見ると少し気になる動きでもあった。

■アニメはイベントでも楽しむ時代に変わっていく
 さらに2019年に目立ったトレンドを追ってみよう。ひとつはステージイベントの多さだ。公式の大型ステージだけ48プログラム。ほぼ全てがスタッフや声優・アーティストが登壇する。それでもここ数年、公式ステージへの引き合いが多く、調整に苦労しているとの話を伝え聞く。アニメファンにとってイベントが作品を楽しむ要素としてますます重要になっている。
 ブース内に設けられた物販コーナーも増加傾向である。「AnimeJapan」にきてキャラクター商品を買う。それ自体がライブなエンタテインメントなのだ。増加の理由はステージイベントに近い。昨今アニメの楽しみ方が映像だけでなく、関連商品や音楽、ライブエンタテインメトに広がっているとの指摘は多い。それを現したのも「AnimeJapan 2019」のパブリックデイである。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

イベント情報・チケット情報

AnimeJapan 2019(アニメジャパン) 21
開催日
2019年3月23日(土)
場所
東京ビッグサイト Anime Japan(東京都)

フォトギャラリー

フォトギャラリーへ

特集コラム・注目情報

イベント情報・チケット情報

関連するイベント情報・チケット情報はありません。

イベントカレンダーへ

  • 今日の番組
  • 新着イベント
  • 登録イベント

Check-inしたアニメのみ表示されます。登録したアニメはチケット発売前日やイベント前日にアラートが届きます。