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特集・コラム特集PR 2020年10月23日(金)16:30

【数土直志の「月刊アニメビジネス」特別編】「D4DJ」大型タイトルで世界展開を目指すブシロードの戦略

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DJをテーマに“アニメ”“ゲーム”“声優ライブ”など、様々なメディアミックス展開する「D4DJ(ディーフォーディージェー)」が2020年より本格始動している。この10月からはテレビアニメ「D4DJ First Mix」が放送開始、10月25日にはリズムゲーム「D4DJ Groovy Mix(グルミク)」もリリースする。
 「D4DJ」はブシロードが世に送り出す大型プロジェクトでもある。製作はブシロード一社出資とし、プロジェクト実行のスピードを最大限まで高めた。これまでにない仕掛けも満載だ。
 なかでも海外展開は注目だ。放送と合わせて吹替え3言語、字幕15言語を同時展開、世界各国のプラットフォームに加えて自社YouTubeチャンネルで全世界に届ける。当初から海外ありきのプロジェクトである。
 ブシロードは「D4DJ」で世界をどう攻略するのか? 同社海外営業本部の中山淳雄さん(執行役員 海外営業本部 本部長)と田口聖教さん(海外営業本部 海外推進部 部長)にその秘策を伺った。

「D4DJ」はこうして世界を目指す

――「D4DJ」の作品についてから教えていただけますか。

田口聖教さん(以下、田口) 「D4DJ」は4人ずつで6組のDJユニットが織りなすDJ音楽ライブ、アニメ、アプリゲームのメディアミックス作品です。アニメは学園でのDJストーリーで、この中にDJユニットが登場します。6組のDJユニットごとに雰囲気もだいぶ違って、アイドル性の高いユニットや、目指すべき先輩ユニット、などチームカラーも含めて色々なキャラクターがいます。カバーしている曲も大人ぽかったり、電子音で近未来っぽかったり。担当ユニットごとに音楽プロデューサーも変えています。自分の好きなイメージで推しをつけやすいかもしれないですね。

中山淳雄さん(以下、中山) ブシロードで言えば、2017年に「BanG Dream!」(バンドリ!)がメディアミックス作品として立ち上がり、大成功をおさめました。ただ「バンドリ!」ではそれぞれの声優が楽器演奏という技術を身につけ、オリジナルの楽曲を制作し、全員がライブを行うためのスケジュール調整など、コンテンツを広げていく時の制約がありました。それがDJでは歌やダンスなどパフォーマンスの役割が変更可能で、曲もオリジナルだけでなくカバー展開もできるし、コラボもできる「広げる」機能が追及出来るだろうと考えられました。18年4月に木谷(高明)(現・代表取締役会長)がシンガポール在住から日本に帰ってきた時から「D4DJ」を推進していくことになりました。
スタートは19年7月の幕張メッセでのファーストライブ。セカンドライブを10月に品川プリンスホテル ステラボールで行いました。アニメが始まる1年以上前から少しずつライブを行い、ファンを育ててきました。

――「D4DJ」メディアミックスを当初から掲げています。現在の展開はどうなっていますか?

中山 「D4DJ」はこの10月にアニメとモバイルゲームが同時にリリースされます。アニメもゲームも、最初からフルスロットルで海外化進めてます。アニメは10か国語以上もの多言語展開したものを、この秋の同時期に世界中でリリースします。ゲームも21年に向けてすでに開発を進め、こんなペースで海外化されるコンテンツは正直、業界でほかに見たことありません。カバー楽曲も多い中でアニメ・ゲームを世界150か国以上に同時展開されるベースには音楽権利処理のノウハウも相当な練度が要求されていて、こうした組織的な体制も含めて「バンドリ!」や女性向けの「ARGONAVIS」、そして「D4DJ」へと続くブシロードの組織知の集大成ともいえます。

――これまでの作品と違うところは?

田口 DJは取りかかりやすく、パフォーマンスがしやすい。それだけに広まりやすいと思います。世界ではDJ文化は日本より大きく、もともとのパイも大きい。そういう意味で集大成ですね。

――海外での具体的なターゲット層は?

田口 DJですので、様々なアニメソングはもちろんJ-POPもゲーム音楽もあり、いろんな世代にリーチできる曲を揃えています。「ロックマン2」とか「ストリートファイターll」とかちょっと驚くようなゲーム音楽とかも。今までこうした声優ユニットのアニメは、日本のアニメが好きなオタク層とか一定のリーチにとどまっていたのですが、今回は音楽をフックにいろんな層にと考えています。そして日本の音楽で海外に強いのはアニソンやゲーム音楽ですから、そうしたところから最初から世界展開を見据えています。

――ブシロードは海外で成功された作品が多いのですが、なぜ新たな大型タイトル「D4DJ」なのですか?

田口 日本のコンテンツを海外に持って行くと、市場は作品全体の1、2割ぐらいなんです。本当にいいものであれば、海外でも日本と同じかそれ以上いくはずです。「バンドリ!」ですら、日本に比べると海外はまだ全然小さいんです。
普通なら「バンドリ!」が当たったから、次はこのぐらいを狙ってとなります。ただそれではいけないと思っていて、「D4DJ」では日本と同じくらい盛り上げて大きくしていこうとの野望があります。

中山 一言でいうと海外は競争が少ないことで全然違う市場が作れます。2011年頃の「カードファイト!! ヴァンガード」の時に、世界中のカードゲーム店舗・問屋側から引き合いが急に来ました。「『ヴァンガード』面白いから、うちにも扱わせてくれ」って。そこで木谷自身が、シンガポールやアメリカに支社を作りにいっているんです。その時の売上は日本に比べると全然小さかったのですが、競争が少ないのでその後安定的に増加しており、最近ではかなりのボリュームを海外で収益化するようになってきています。
国内は競合が多くて、厳しい戦いなのですが、北米では「ヴァンガード」が実は5、6年もの間ずっと業界7位あたりで安定しています。何よりも海外ユーザーは人数も多く、ロイヤリティが高い。売上だけでいうと日本の1/3とか1/4だったとしてもユーザー数だけでみると日本と同じかそれ以上だったりします。あとはそうしたユーザーのなかで高いシェアのアジアなどで所得があがっていけば、自動的に海外市場がそだってくることになります。
こうした経験もあるので海外化することへのブシロードの感度はとても高い。僕は16年9月、ちょうど「バンドリ!」がでる半年前に入社したのですが、最初から「バンドリ!」を海外でどうやるか考えてくれ、という木谷の依頼から始まっているんです。普通の会社であれば17年3月のヒットした後に海外展開を考えるのですが、ブシロードでは最初から海外にだすことを決めて、逆算で何が必要かを考えている。

吹替3言語と字幕15言語、自社YouTubeでも全世界へ

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――海外でより大きくするにはどういった施策がありますか。

中山 僕も田口も海外営業本部に所属していて、アニメ・ゲームからイベントやスポーツ興行までコンテンツを海外でいかに大きくするかを考えてます。国ごとのローカライズ施策を打つと同時に、グローバルなメディアや問屋と協業して、ファンを育てながらマネタイズすることをずっとやってきました。それがゆえに、この表のようにアニメのグローバル同発展開などが実現しました。

田口 より多くの人にアニメを見てもらうためにいろんなパートナーと組む戦略にしています。今回は幅を最大に広げる戦略を取りました。海外配信プラットフォームはクランチロールを始め各国の有力プラットフォーム、さらに自分たちのグローバル版YouTubeチャンネルでも配信します。

――これだけいろいろな配信会社でやるなかで、さらに自社YouTubeチャンネルという理由を教えてください。

中山 これは他社には出来ないですよね。委員会で考えると海外からの番販ライセンスが大きな収入ですから。全世界に無料で見れるYouTube配信すると、正直ライセンスの販売価格はかなり安くなってしまいます。「D4DJ」では目先の売上額に拘らず、将来の市場パイを広げることだけを最優先に考えた動きをしました。

田口 海外プラットフォームで配信しても、実は作品に対する個別の数字は意外と判らないのです。どれだけ見られているかは内部情報ですから。

中山 「よかったよ。リクープ(投資資金回収)しました」ぐらいの反応しかないんですよね。2期を売りに行った時に意外に高く買ってくれて、「なんか今回あがったね」「いや評判よかったんだよ」「そうなの?」といった感じですよね。
自前YouTubeであればデイリーで視聴データをトラッキングできるし、手づかみでファンが増える過程を味わえます。
本当は日本から自由に展開でき、ユーザーデータも追える、マネタイズもできるプラットフォームがあればいいのですが、それがないのでYouTubeを使っています。YouTubeにガンガン広告をいれるとかは考えていないです。

田口 YouTubeならどれくらいのユーザーがいるかも確認出来るし、それによって攻め方も考えられます。アニメの後にゲームもあるので、ファンと接点を作りたいというのもあります。ゲームの告知もそこで出来るとか。長い目でみて自分達でやるのがいいと考えています。

――配信でカバーする言語の数がすごいですね。

田口 多言語の吹替えと字幕ですね。吹替えは英語、スペイン語、北京語の3言語。字幕が15言語です。

――多言語となると予算もかなりかかりそうです。

田口 J-LODという補助金制度も活用しています。海外展開のためのコンテンツローカライズをすると資金の一部を支援していただけ、その資金もあったので展開もできました。非常に感謝しています。

――字幕では主要言語だけでなくロシア語やタイ語、マレー語、アラビア語とかもありますね。

田口 正直チャンレンジですよね。去年サウジアラビアアニメエキスポ(SAUDI ANIME EXPO 2019)というイベントがあったのですが、その時の人気作品が「鬼滅の刃」とか日本とあまり変わらなかったんです。全世界にどこもあまり変わらない感覚を持ったファンがいると感じています。
あと今回、おそらく歴史上初めての取り組みだと思いますが、明石真秀役の各務華梨さん自身が日本語版アニメも英語版吹替アニメもご本人で担当します。彼女はアメリカ生まれでインターナショナルスクールに通っていたので英語が堪能なんです。普通は北米のネイティブ声優に依頼するところ、リモートのアフレコを行うことで、同一声優の複数言語吹替を実現しました。彼女に対して外国のユーザーがファンになってくれれば。

――海外でのライブも考えていたりされますか?

田口 コロナ次第になります。各国に合せたかたちでユニットを使い分けるという構想はあります。
あとは有料ライブ配信ですね。オンラインでボーダレスになったんですよね。海外のファンは日本に較べて情報量も少ないし、イベントにも参加できなかったんです。有料ライブ配信はこれまで業界でタブー視されてきて、こうした状況だからやり始めたのですが、それが逆に海外からするとありがたい。お客さんもこれまでお金を払って配信を見ることがあまりなかったのですが、いまは実際に利用されています。いろんなプラットフォームが増えて、海外のユーザーリーチする機会は逆に増えています。

本当の価値が試されるのは海外

――ブシロードにとっていま海外で大きな地域はどこになりますか。

田口 中国本土とアメリカは母数が大きいので、売上げは大きいです。ただタイやシンガポール、香港、台湾、韓国は、人口こそ大きくはないけれど、結構ブシロードのコンテンツの浸透度が高くて、充分な規模のマーケットになっています。

――日本の売り方と海外の売り方の大きな違いはありますか?

田口 基本的にはそんなに変えていないですね。広告費の違いとか、パートナーの数が少ないといったところで戦略が変わることはあると思います。

中山 同じ売りかたをしています。一般的には日本企業はコンテンツを作り込むのは頑張るんだけれど、売るのは全部外にお任せ、というのが多いです。僕らの場合はは小さい組織・プロジェクトでも必ず海外担当者を置きます。

田口 進めていくなかでも、もし人気のある地域が見つかったら、そこでコラボしていけばどんどん定着すると思います。例えば現地で流行っている楽曲をゲームにいれたりとか。「バンドリ!」でも「BabyShark」など英語版だけの楽曲をいれた例はありますから。そこでリーチできるのであれば積極的にやっていきたい。

――最後になりますがブシロードにとって世界はどういった位置づけなのでしょうか?

中山 作品の本当の価値は、国内より海外によって規定されると思ってます。ここ5年間でアニメがすごい価値を持つことが分かりました。でもそれは国内のメディアではなく、Netflixなど海外のメディアの力なのです。1億人ではなく70億人市場にとってのユニークなものをきちんと精査して、値付けをしてくれる。トヨタや任天堂の企業規模は90年代に海外ニーズの力で倍増させられています。浮世絵の価値が外国人によって定義づけされたように、ブシロードの作品価値も、いかにそれを唯一無二なものとして海外で受け入れられるかで最終的なポテンシャルが決まると考えてます。今後数十年でみれば確実に成長することが分かっている市場で、作品価値をフェアにみてくれるユーザーの中で生き残れるようにスピードを持って海外展開をしています。

田口 早いうちに海外に手をつけるというのはこれまでもありましたが、それがコロナの影響でオンラインを使うことで加速しました。いろんなフックが出来て、いいチャンスだと思います。海外でも日本ぐらいメディアミックスが出来ればもっと広がる可能性もあります。日本以外でもメディアミックスをしっかりやっていくことが、成功への早い道かなと思っています。

――そのなかで「D4DJ」がキラータイトルになりますね。

田口 目的に近づくための最初のタイトルとして進めています。

中山 作品もですが、展開そのものが著作性をもつのではないか、というくらいオリジナルな取り組みをやってます。

ブシロード海外営業本部・中山淳雄さん(左)と田口聖教さん

ブシロード海外営業本部・中山淳雄さん(左)と田口聖教さん

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数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

作品情報

D4DJ First Mix

D4DJ First Mix Check-in10

「ハッピーアラウンド!」が口癖の愛本りんく。日本に帰国した彼女は、DJ活動が盛んな陽葉学園に転校する。そこで目にしたDJライブに感動し、明石真秀・大鳴門むに・渡月 麗を次々と巻き込んで、ついには...

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