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特集・コラム 2021年5月27日(木)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】相次ぐCGアニメスタジオ新設はどこに向かう

「シドニアの騎士 あいつむぐほし」キービジュアル

「シドニアの騎士 あいつむぐほし」キービジュアル

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

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先頃、KADOKAWAが公開した決算発表のプレゼン資料で気になる一文をみつけた。「世界トップクラスのクリエイターを集めた、グローバルで通用する3DCG制作スタジオ設立を検討」というものだ。KADOKAWAは2019年末にアニメ制作会社のキネマシトラスと資本業務提携をし、18年にはウルトラスーパーピクチャーズ、サミーとともにデジタル制作スタジオENGIも立ち上げている。新スタジオは検討段階とはいえ、相次ぐアニメーション制作進出に驚かされる。
 KADOKAWAだけでなく、制作スタジオ不足の対応もあり、昨今はアニメ関連企業によるスタジオ買収や新設が増えている。なかでも注目されるのが、CGスタジオへの進出だ。

大きなところでは17年設立のTENH ANIMATION MAGICは、SOLA DIGITAL ARTS、ウルトラスーパーピクチャーズ系のギャラクシーグラフィックス、東映アニメーションが手を組んだもの。エイベックスがグラフィニカとともにFLAGSHIP LINEを設立したのは18年、20年にはアニプレックスがBoundaryを設立した。東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、サンライズといった2D手描きが主軸のスタジオもCGアニメ制作部門を強化・拡張している。CGスタジオブームだ。

アニメの企画から納品までを請け負う「元請制作」に、CGスタジオが本格進出するようになったのは、13年から14年にかけてだ。サンジゲンの「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」(13)、ポリゴン・ピクチュアズの「シドニアの騎士」(14)、グラフィニカの「楽園追放 -Expelled from Paradise-」(14)などである。
 この頃の元請け進出はCG技術の進歩に加えて、手描きアニメの人手不足とも絡んでいる。15年前後は、国内テレビアニメ・劇場アニメの制作が急増した時期に重なる。それまでほぼ全編をCG・デジタルで仕上げた作品はコスト的に難しいとされていた。しかし制作スタジオ不足は、制作コストは多少上昇しても、CGスタジオでチャンレンジしたいとの機運につながった。
 気合の入ったスタジオの各作品は大きなヒットになり、CGスタジオの存在感がいっきに増す。白組やOLMデジタル、デジタルフロンティアといった老舗、オレンジやサブリメイション、アニマといった中堅企業も元請制作に加わる。10年代後半のアニメ業界が人手不足を乗り切ったのには、CGスタジオの役割も大きかった。

しかし昨今のCGスタジオ新設や拡張には、新たな視点がありそうだ。「グローバル=海外進出」である。
 KADOKAWAは新たなスタジオについて「世界に通用する」を掲げている。TENH ANIMATION MAGICも「グローバルの作品を目指す」とし、現在は日中米合作の「The Monkey Prince (仮)」の制作を進める。世界を目指すからこそ、海外で制作の主流であるCGとなる。
 世界のCGアニメーション業界は、ディズニーやピクサー、ドリームワークス・アニメーション、イルミネーションといった巨大スタジオが目白押しである。大ヒット作「ナタ」や「白蛇:縁起」をみると中国でもCGのレベルと規模が急激にアップしていることが分かる。CGアニメーションは技術だけでなく、人や設備に投資できる資本力にクオリティが左右されがちだ。巨大マーケットを持つ米国や中国のスタジオが優位にある。国内勢は厳しい競争を強いられそうだ。もちろんこれに対抗するためのグローバル展開ではあるが、海外の巨大スタジオに対抗する方法はあるのか。

それはむしろ手描きアニメの伝統にあるのでないだろうか。15年頃から増えたCGスタジオのアニメ作品は、ビジュアルを手描きアニメの寄せたセルルックが主流になっている。2Dアニメに馴染んだ国内ファンに向けたためだ。
 一方で最近は海外でも「鬼滅の刃」や「ドラゴンボール超」のように、2Dアニメがより広い層にヒットすることが増えている。セルルックは日本だけのものでない。世界で一般的なより立体的なフォトリアルも悪くない。でも日本が得意とするセルルックを打ち出すことで、差別化が可能でないだろうか。あるいはセルルックとフォトリアルをさらに発展させた新しい表現だ。
 アニプレックスのBoundaryは「3DCGとセルアニメーションの境界を越えた、新たな映像表現」を掲げている。ここにはそうした意味も含まれているかもしれない。技術的なガラパゴス化はグローバル時代にそぐわないかもしれないが、表現の独自性は必要とされている。それが日本の新たな強みになるはずだ。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

作品情報

シドニアの騎士 あいつむぐほし

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