2015年1月30日（金）16:15

新作エピソードはTVアニメ2話分！「劇場版蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐ DC」構成・脚本上江洲誠インタビュー

「蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐ DC」

(C)Ark Performance／少年画報社・アルペジオパートナーズ

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業界初のセルルック・フル3DCGテレビアニメとして、アニメーションの常識を塗り替えた「蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐」。その劇場版第1弾「蒼き鋼のアルペジオ ‐アルス・ノヴァ‐ DC」の封切りが1月31日に迫る。本作は約60分のテレビシリーズ再構成パートに約40分の完全新作エピソードを追加しての上映で、ファンにとっては待望の続編となっている。今回は、テレビシリーズから約1年間を経て、脚本の上江洲誠氏に再びインタビューを敢行。本劇場版の制作秘話や見どころをうかがった。

――本作の企画が始動したのはいつごろだったんでしょうか？

上江洲：一昨年（2013年）の年末に本作の最終回が放映され、翌新年には打ち上げパーティーが開催されて、本作がとてもヒットしたということで、我々一同ホッと胸をなでおろしていたんです。「もうあんな大変な思いをしなくていいんだ」と話していたら、「続編を作ろうと思います」ってFlyingDogの南Pに呼ばれて、パーティーの翌週に同じメンバーが会議室に集結しました。みんな真っ青な顔をしていましたね（笑）。
　「アルペジオ」はテレビシリーズにしてはかなり仕事量の大きい作品で、「これは大きなチャレンジである」という一念でなんとか高いハードルを超えられたんです。なので、続編制作決定を聞いた時は「さらに高いハードルを超えなければいけない」ということで顔面蒼白に。もちろん、覚悟は決まったので「前作を超えるものを作る」という意気込みで望んでいます。

――劇場版ならではの苦労はありましたか？

上江洲：テレビシリーズの仕事は2年先くらいまでスケジュールが決まっています。執筆時期をバッティングさせないようにしているんですが、今回の映画の場合は急遽決まった話なので、スケジュール調整が大変でしたね。年始に企画が始動して、「DC」については夏にシナリオを仕上げました。
　「続編を作る」ということは決まりましたが、当初はテレビシリーズとして続編をやるのか、OVAにするのか。といったことすら明確ではありませんでした。しかし、スタッフ全員のスケジュールや企画としての可能性を考えると、映画以外には考えられなかったんです。可能な範囲で最良の選択肢として、劇場版を2本制作するという方向性が決定しました。
　ここは声を大にしてお伝えしたいんですが「DC」もかなり新作劇場版なんです!!　当初は総集編のつもりで始めたものの、結果としてテレビシリーズにして2話分くらいの新作エピソードが盛り込まれています。
　新規カットの追加でお茶を濁すという案も出ました。でも、僕らが「劇場版として銘打つからには、それではおもしろくない。自分たちがガッカリするような作品は作りたくない」ということで、新エピソードを追加することにしたんです。ところが、当初は20分くらいのつもりだったのが、いつの間にやら40分に……。
　テレビシリーズが「パート1」なら、「DC」と「完全新作劇場版」を合わせた新作エピソードは「パート2」。「DC」は約1時間の「パート1」総集編と、約40分の「パート2」の序章で構成されています。

――その「DC」の「パート2」部分は、どのようなストーリーなんでしょうか？

上江洲：テレビシリーズ最終話から地続きとなっており、群像たちがアメリカに届けた振動弾頭が量産され、人類が霧の艦隊と拮抗する戦力を得たことで「果たしてどうなっていくのか!?」という筋書きです。これまでは一定の距離を置いていた霧の艦隊も、危険度を増した人類に対して、本腰を入れて相対することになります。中でもコンゴウを退けた群像たち蒼の艦隊は“癌”であるとして危険視され、戦艦・ヒエイ率いる“霧の生徒会”が立ちはだかるわけです。
　実はテレビシリーズでは、メンタルモデルのお話に集中するために、あえて群像たち以外の人類側の動きを描いていませんでしたが、今回は劇場用の映画ということで、スケールアップを狙って、人類側の動向を描くことにしました。
　また、海洋を封鎖されインフラが途絶え、疲弊した地上の様子も描くことにしました。これも映画だからこその要素で、テレビシリーズでは岸監督の「お客さんにとってストレスになる画は避けたい」という意向から描写をNGにしていた部分です。群像たちは軍からの支援を受けている、いわばエリートなので、食料などに困ることはありませんが、一般の人々はそうではない。各地のエネルギー問題も深刻です。実際に突き詰めて検証していくと「アルペジオ」は、とてもハードな世界観なんです。海路を封鎖されてしまうと、日本は何もできなくなってしまうんですよね。そうした設定を改めて描くことによって、シリアス度やSF度はアップしていますね。そういう点を、テレビシリーズではあえて避けていたんだ、ということを意識していただくと、かなり“通”な見方が出来るかもしれません。
　とはいえ、重たい話ばかりではなく、最終的には水着のタカオたちのカットも増えています（笑）。一度ヘビーな脚本を作り、そこからさらにバランスを調整しました。テレビシリーズをおもしろいと思ってくださった視聴者の方々には、間違いなく楽しめる続編に仕上がっていますよ。
　ほかには、ヒュウガの髪型が変わったことにも注目です（笑）。