2016年9月2日(金)20:00
ライトノベル作品を多数手がけた中山信宏が語るアニメ「天鏡のアルデラミン」の作り方 (2)
――もっとスピードを速めていく選択もあったのですか。
中山 いや、話を詰め込むことになって、そうなるとキャラクターが立たないので、無理だったんじゃないかなと思います。原作ファンで、アニメもご覧いただいている方には分かっていただけるかと思うのですが、削っている要素も結構あります。
――うまくシーンをセレクトしている印象があるのですが……。
中山 ありがとうございます。実は3巻で区切ったこともあり、昨今のライトノベルにおけるアニメ化の中では、丁寧に追っている方ではあるんです。それでも原作は内容が詰まっていますから、どうしてもカットする部分が出てくるのは残念です。
――原作の要素を取捨選択していく際に気をつけていることは、どういった点だったのでしょうか。
中山 キャラクター性に関わることは基本的に落とさないようにしています。もちろんこの作品は説明シーンも大きな魅力のひとつですが、勢いで押せるのであればカット対象にする場合があります。ただ、その際に忙しい感じにはしないということには気をつけています。劇中では結構時間が飛びますし、場所もかなり移るので、そのあたりは注意していますね。
■キャラクターデザインは作品性ありき
――キャラクターデザインが昨今では珍しいリアルなデザインになっていると思いますが、何か意図はあるのでしょうか?
中山 キャラクターデザインについては、作品性を第一に考えた上での選択でした。やはり、視聴者の方の中には、原作イラストの竜徹さんや、さんば(挿)さんの絵に近いものにして欲しかった方もたくさんいらっしゃると思います。あるいは、もう少し萌えに振ってほしかったという意見もあるだろうと。スタッフ側としてもそういう意見が出ても仕方ないとは思っています。ただ、ここについては、何度も検討を重ねて、結構覚悟を持ってやっている部分なので、作品の展開を見ていただき、視聴者の方々に判断していただければと思っています。
私もこれまで、原作キャラの可愛い要素を拾う方向で作品を作ってきましたし、マッドハウスさんの今回のチームも「織田信奈の野望」を制作していますから、可愛いキャラクターでシリアスな展開をする作品も経験しているわけですが、今回はこの路線で行くべきだろうと判断しました。
――個人的には、可愛いキャラでシリアスな作品という組み合わせは、ギャップが生まれて話題になりやすいのではないかと思うのですが……。
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中山 確かにそうですね。しかしここが難しいところで、可愛くデフォルメされたキャラクターは「痛み」を伝えづらい。精神的な痛みは、伝え方やシンボリックな演出で伝えることも可能なのですが、肉体的な痛みは難しい。原作の非常に重要な要素として、かなり真面目に戦争を扱いますし、人も死ぬ。そういう痛みを伴った表現は、特にアニメに落とし込んだ際、やはり頭身、表情、芝居、アクションといった面を含めて、ある程度リアルでないと成立が難しいと思えたんです。今後の話数では、より「このキャラクターデザインだからこそ」という表現が増えてくると思います。
――先ほど現在の案に至るまで検討を重ねたとのことでしたが、これとは違ったテイストの案もあったのでしょうか。
中山 方向性そのものは変わらなかったのですが、だからといって一見さんお断りのデザインにはできないとは思っていたので、萌えではないにしても、ギリギリ今のお客さんに見てもらえるレンジはどこかを探りました。そこで何度かキャラクターデザインの香月(邦夫)さんに稿を重ねていただきました。動いている本編を見てもらえれば、アニメ的な要素も自然と見て取れる……というデザインにしたつもりではあります。やり取りを重ねる中で、香月さんや監督、橋本さんを始め、マッドハウス側は本当によく付き合っていただけたと思います。
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