2017年8月24日(木)19:03
「きみの声をとどけたい」伊藤尚往監督に聞く、新人声優6人全員の見せ場を作るための工夫
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8月25日公開のオリジナル長編アニメ「きみの声をとどけたい」。約3000人の応募者からオーディションで選ばれた6人の新人ユニット「NOW ON AIR」と三森すずこを主演に、さわやかな青春ドラマが繰り広げられる。2015年にスマッシュヒットを記録したテレビアニメ「オーバーロード」に続いて本作を手がける伊藤尚往監督に制作の経緯を聞いた。
――映画とても面白かったです。登場人物の描写が過不足なくまとまっていて、物語として絶妙なバランスなのが特にいいなと思いました。
伊藤:ありがとうございます。自分で言うのもなんですが、お話いいですよね(笑)。
――脚本作りに、かなり時間をかけられたのではないですか。
伊藤:シナリオ作業は先行していて、オーディションをやる頃には今のかたちになっていました。僕が参加したのは「オーバーロード」が終わった頃で、マッドハウスさんから次の仕事のひとつとして、こういう企画がありますとの話をいただいたのが最初です。その段階では今とはまったく違ったプロットでしたが、その後、女の子たちがミニFM局を作る話になっていきました。
――企画を聞いて、最初どう思われましたか。
伊藤:青春ものは好きなほうですし、面白そうだなと思いました。あと、青木俊直さんのキャラクター原案が自分のツボに入って、「いけるんじゃないかな」と思ったのも大きいです。東北新社さんから「青木さんのキャラでやりたい」という話がでていて、何回目かの脚本打ち合わせのときに絵があがってきたんです。それまではビジュアル的なアイデアが特になくて、どうしようかと思っていたのですが、青木さんの絵をみて作品のかたちが見えた気がしました。
――脚本とキャラクターがある程度できてから、オーディションが始まったのですね。
伊藤:2次審査の頃には、線画状態のキャラ表をみせることができていたと思います。オーディションでは、応募者に何をしてもらうか、どんな基準で選ぶかというところから意見をださせてもらいました。応募書類も見せていただき、他の審査員の方々と侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をして(笑)。2次審査以降の面接でも、通過者の皆さんと色々と話をさせてもらいました。
――脚本について、何かリクエストはされたのでしょうか。
伊藤:脚本段階で、歌や音楽の扱い方は明記されていませんでしたので、そこは私のほうでジャッジさせてもらいました。どんな楽曲や音楽を発注するか、先行して音楽スタッフの方と相談しています。オーディション用の曲は最初の頃からあって、その後1曲ずつあがってくる感じで、最後の曲をいただくまで半年ぐらいかかったはずです。
――本作の上映時間は94分ですが、最初から1時間半ぐらいでという話だったのでしょうか。
伊藤:そうですね。脚本の分量的には、90分でやるにはそれほど多くない印象でしたが、音楽のシーンを作っていくと尺は長くなるだろうから、足りないぐらいでちょうどいいぐらいのバランスで考えていました。
――他に、何か要望はだされたのでしょうか。
伊藤:映画全体として、主演の女の子の見せ場をきちんと作りたいという話をしました。端役を数人選ぶのではなく、メインの6人をオーディションで選ぶわけですからね。せっかく選ばれてもセリフはほんの少しで、ほとんど活躍しないというふうにはしたくなくて、見ている人に「この子、ちょっと扱い小さくない?」と思われないぐらいのバランスにしたかったんです。あとは、ミニFMの話をするときに、どのぐらい説明をするべきなのかという相談もして、ライターの石川(学)さんに脚本を調整していただきました。
――たしかに出番の少ないキャラクターにも、それぞれ見せ場となるシーンが用意されています。
伊藤:なぎさの一人称に近いところで物語は進んでいきますので、彼女が出ずっぱりになるし、モノローグも多くなる。それは仕方ないと思ったのですが、他の女の子たちの描写もしっかり作ってあげなければというのはありました。その代わり、周りの大人たちの出番は最小限にとどめていて、なぎさの祖母役の野沢雅子さん、幼なじみの大悟役の梶裕貴さんといった主役級の方にでていただいているのに出番が少ない感じになり、申し訳なく思っています。
――音楽をバックに、なぎさのモノローグで描写を飛ばしていく構成も大きな効果を発揮していると思いました。
伊藤:実際に絵を作り始めると、なぎさのナレーションの後ろでやらなければいけないことが多くて焦りました(笑)。限られた尺のなかでドラマを進めていくために、モノローグのところは、お話をつなぐために最低限のことをやっている感じです。今の話に関連することですが、女の子たちが出てこない商店街の描写などの絵コンテは、助監督の山城(智恵)さんに一度すべてお願いして、同時並行で進めていました。ハリウッド映画の2班監督のように、あるシーンは他の監督にお任せするような感じですね。実は映画の冒頭は、山城さんがコンテで描いたキャラクターの雰囲気を生かして、絵コンテの作業としてはいちばん最後に仕上げています。
――どのようにして同時並行で進めたのでしょうか。
伊藤:商店街の八百屋のおじさんなどは、最初から青木俊直さんがモブキャラクターとして描かれていたんです。そういった人たちが「こんな人で、こういう芝居をする」という絵コンテを、まず山城さんに描いてもらいます。その後、私が最終的に絵コンテをまとめるときに、彼女の絵コンテをもとに冒頭の八百屋のおじさんのシーンを作る感じです。音楽をバックに描写を飛ばすところも同じですね。山城さんの絵コンテを細切れで使うかたちになって申し訳なかったのですが、彼女に作ってもらった描写が作品の厚みに繋がって、なぎさたちと街の人々の繋がりを描けたと思います。非常に有難かったです。
――冒頭が後半の展開のいい伏線になっていると思っていたのですが、順序が逆だったのですね。もうひとつ、この作品で良いなと思ったのが、キャラクターを深堀りしすぎていないところです。なぎさと母親の関係など、さらっと描かれていて。
伊藤:女の子たちの細かいプロフィールは、脚本の石川さんの方で作られているはずですが、映画で描く物語に直接関わることではないので、そこまで深く描かなくていいかなと思ったんです。そういった部分は、ネットラジオ(「NOW ON AIRのLOVE!おんえあ~」)内のラジオドラマで広げられています。
作品情報
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舞台は湘南。高校生たちの友情、葛藤、そして夢。届けたい“声(想い)”――。海辺の町、日ノ坂町に暮らす行合なぎさは将来の夢が見つからず少し焦っている16才の少女。「言葉にはタマシイが宿っているんだ...
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