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インタビュー 2018年1月4日(木)19:00

新春アニメプロデューサー放談(4)アニプレックス柏田真一郎氏 「手元においておきたいと思っていただけるものを作り続ける」 (2)

「冴えない彼女の育てかた♭」キービジュアル

冴えない彼女の育てかた♭」キービジュアル

(C) 2017 丸戸史明・深崎暮人・KADOKAWA ファンタジア文庫刊/冴えない♭な製作委員会

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――ここ数年、アニメビジネスの枠組みが変わりつつあって、劇場でのイベント上映や、海外向けの配信など、各メーカーによって、さまざまな試みがなされています。そうした点で、考えられていることがあったら聞かせてください。

柏田:おっしゃるように、海外向けの配信などは広がりを見せていますが、自分の中では、今も昔も変わらず「パッケージが売れないと駄目だ」と思っているんですよ。配信は見放題のものもあって、とても便利ですけど、見たいときに確実に見られない気がして不安なんですよね。自分が古い人間だからなのかもしれませんけれど。

――いえいえ。たしかにネットに繋げないと見られないものもありますよね。

柏田:見放題だったけれど、配信のラインナップから外れることもあって、見ようと思ったときに見られないのは、自分的にはちょっとストレスかなと。あとやっぱり、本当に気に入って「自分のバイブルです」と言えるぐらい大好きになった作品は、皆さん、パッケージを買われると思うんですよ。言葉は悪いですけど、結局買っていただけないというのは、そのレベルの出来だったのかなと思っていて。

――なるほど。

柏田:なので、自分は、ファンの方にパッケージを買っていただくためにどう作るかを、全力で考えなければいけないと思っています。今の話は、全部ブーメランになって返ってきますので、「おい、ぜんぜん売れてないじゃないか柏田」ってことになるかもしれませんが(笑)、自分としてはそういう心持ちでいないと駄目だと思っています。

――それぐらい厳しく考えられているのですね。

柏田:パッケージは本当にきつい状況ではあるのですけど、どう考えてみても、パッケージが売れないと駄目なんですよ。これは、今年も来年以降もたぶん変わらないと思います。自分たちがやるべきことは、パッケージが売れる作品を作ることで、手元においておきたいと思っていただけるものを作り続けることだと思っています。

――昨年は、「冴えカノ」の劇場版が発表されて、驚くと同時に「見てみたい」とも思いました。テレビアニメを、映画や第2期に発展させていくとき、どんなことを考えられているのでしょうか。

柏田:これも今までの話と同じで、「なぜ第2期をやるのか」を全力で考えなければいけないと思っています。「第1期で、ある程度結果がでたから」ではなく、「こう作れば第2期も勝負できる」というやり方でなければいけない。去年、「冴えカノ」の第2期をやるときも、なぜ第2期をやるのか、しっかり考えながら作っていきました。例えば、8話のようなエピソードをやりたかったから、とかいろいろあったのですけれど。
 第2期は、こちらがそれぐらい気をつけてやらないと、ファンの方も絶対飽きてくると思うんですよね。「冴えカノ」については、第2期が終わったあとに、まだやりたいことがあって、それは劇場で展開していきたいと思ったというところです。

――なるほど。第1期がよかったからと、ルーティーンで第2期や劇場版をやるのではなく、作るための理由づけがきちんとなくてはいけないと。

柏田:そうしないと、原作がかわいそうなことになってしまうじゃないですか。原作ものをアニメ化するときに、自分がいちばん大事にしているのは、原作者さんと原作ファンの方に幸せになってもらいたいということなんです。なので、アニメ化するさいには、必ず原作者の方に会って話をさせていただくようにしています。お預かりした原作をアニメ化し、次のステップにつなげるためには、絶対にアニメは成功させないといけません。第2期や劇場版を作るときも同じで、そうした理由づけはやっぱり必要かなと思っています。

「ソードアート・オンライン アリシゼーション」キービジュアル

ソードアート・オンライン アリシゼーション」キービジュアル

(C) 2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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――「SAO」の続編も、原作の続きをやりつつ、スピンアウトもやることで、広がりをもたせていますね。

柏田:「SAO」も、「アリシゼーション編」がすごくいい話だからやろうというところからはじまっています。「劇場版」が上手くいったからこそ取り組めている案件で、これもファンの方の応援あってこそだと思います。続編をやるときには、それをやる意味はきちんとあって、見ていただくと“答え”がありますと、こちらが上手く提示できれば、ファンの皆さんに喜んでいただけて、結果もついてくるのではないかと思っています。

――これまでのお話を聞いて、柏田さんは常に不安や怖さのようなものを抱えながら仕事をされているように感じました。

柏田:いや、もうほんと常に怖いですよ。「来年は、もう何も売れなくなるんじゃないか」といつも考えていますし、「冴えカノ」の第2期をやるときも、みんな売れると思ってやっていなかったと思います。売れる・売れないは、あくまで結果論ですから。

――作るときは「これがいいはずだ」と一生懸命考えるけれど、それが受け入れられるかどうかは……。

柏田:そこはやっぱり“運”ですよね。「エロマンガ先生」のときも、原作の伏見(つかさ)さんとお会いして、「紗霧を、とにかくかわいく描きたい」というところから話がはじまりました。もちろん、他のヒロインも魅力的なのですが、まずは紗霧をフィーチャーしようとやったのがうまくいき、彼女を好きになってもらえたのかなと。そういう積み重ねでしかないですし、ほんとに結果論ですよね。「エロマンガ先生」のときは、同じ伏見さん原作の「俺妹」(「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」)が売れているので、もうプレッシャーしかないんですよ。

――ああ、比べられてしまうという。

柏田:もし「エロマンガ先生」のアニメが「あれ?」ってことになったら、伏見さんにもファンの方にも申し訳ないですから。なので、もちろん勝ちにいくために最善をつくすのですが、それでもやっぱり実際のところは運で、まあギャンブルみたいなものですよね。毎回本当に、「人事をつくして天命を待つ」の心境です(笑)。

――最後に、今年の展望を聞かせてください。どんな1年にしたいと思われますか。

柏田:まわりの人に聞くと、後厄がいちばん気をつけなければいけないそうなので、ここ数年通っている佐野厄除け大師に今年も行こうと思っています。そのうえで、今年は、「グランクレスト戦記」をきちっと盛り上げ、新しい土壌を切り開きたいと思いますし、「SAO」の2タイトルも、引き続き頑張りたいです。またアニプレックスとしては、劇場アニメの「君の膵臓をたべたい」が控えていて、ここでもしっかり結果を残したいと思っています。実写映画が35億円という興行成績を出されていて、プレッシャーしかないのですが、アニメのほうも、たくさんの方に見ていただけるよう、社内一丸となって頑張っていきたいです。

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グランクレスト戦記

グランクレスト戦記 34

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