2019年6月21日(金)18:00
奥野香耶&青木志貴、「SSP」再演で感じる舞台の醍醐味と声の仕事との違い
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声優と舞台役者を織り交ぜたキャストで送るオリジナルの舞台「Stray Sheep Paradise(ストレイシープパラダイス)」(以下「SSP」)。昨年12月の初演を経て、8月に「Stray Sheep Paradise:em(エマ)」として再演される。「嘘つきの才能」をもつ 、“ヒツジ”と呼ばれるメイド姿の少女・リゼッタを演じる奥野香耶(写真左)、「万能の才能」をもつヒジリ役の青木志貴に、舞台ならではの楽しさ、声の仕事との違いなどを聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
――初演の話から聞かせてください。奥野さんにとって単独初主演だったそうですね。
奥野:はじめての主演で最初は不安な気持ちがありましたが、共演者の皆さんやスタッフさんたちが助けてくださって、最後までやりきることができました。毎日台本とにらめっこする日々でしたが、やっていくうちにどんどん楽しくなって、リゼッタのことも志貴さんが演じるヒジリのことも好きになっていきました。みんなで物語をつくりあげていく感覚があって、これまでにない感情の入り方をしていたと思います。
青木:「SSP」は2.5次元よりのアニメや漫画に近い世界観で、設定やキャラクターの絵をいただいたときから面白そうな物語だと思っていました。ヒジリは「万能の才能」をもつキャラで自分自身とのギャップが大きかったので、その部分での不安はありましたが、脚本・演出を手がける淡乃晶さんの舞台には何度も出演していましたので安心して稽古にのぞみ、本番をむかえることができました。公演中はとにかく楽しかったです。
――声優と舞台の仕事、どんな違いがあると思われましたか。
奥野:声優になりたての頃、レッスンの先生から「声優をやりたいなら舞台には絶対でたほうがいい」と言われていたんです。当時は「どうしてだろう」と思っていましたが、実際にやってみてその意味を実感しました。キャラクターの感情の流れを、自分自身の体で感じながら演技ができるんですよね。
キャラクターと心情を重ねて自分なりの感情の流れをつくること自体は声の演技と同じなのですが、舞台だと実際に体を動かしますし、また対面する相手がいることによってより現実味が増す感覚があります。舞台の上で「キャラクターに自分がなる」ことによって、感情を重ねるのとはまた違ったキャラクターをつくることができるのだなと思いました。
――アフレコは録り直しができますが、舞台ははじまったら止められないのも大きな違いですよね。そうしたプレッシャーもあるのではないでしょうか。
奥野:ほんとに怖いですよね。初演のときに一回だけ本当にセリフが分からなくなってしまったことがあって……。ヒジリと2人のシーンなんですけれど(笑)。
青木:ありましたね(笑)。
――ベテランの人でもなることのある「セリフが飛ぶ」状態ですね。
奥野:はい(笑)。そんなに難しいセリフではないのに、ひとつの単語だけポーンと飛んでしまって似た言葉を探すのに必死でした。あのときは精いっぱいやりましたが、今振り返るともっと上手なやりかたがあったのになぁと思います(笑)。
――青木さんから見て、奥野さんとの初演はいかがでしたか。
青木:本番までは「セリフが不安だ」と台本を読みこんでいる姿が印象的でしたが、いざ舞台の上に立つとそうした不安を感じさせない堂々とした立ち振る舞いをされていました。あまりに安定感があったので、自分のほうがへまをして足を引っ張らないようにしなければという緊張感がありました(笑)。
――青木さんは、声の演技と舞台との違いについてどうお考えですか。
青木:アフレコと舞台は、似ているようで全然違うなと感じることが多いです。舞台は、自分のセリフをしゃべっている間はもちろん演技をしているわけですが、そうでないときも壇上にいて役としてずっとその空間に生きていないといけません。他の人たちがセリフをしゃべっている間も「自分が演じているキャラクターはどんな行動をするのだろう」とずっと考えながら演じなければならないのが、マイク前で演じる声の仕事と違うところだと思います。
アフレコでも皆さんと一緒に録りますし、いろいろなやりとりもあるのですが、舞台では相手と対面してセリフのやりとりをし、お互い顔を見た動きもありますので、アフレコ以上に相手からもらう感情に引っ張られやすいと個人的に感じています。「SSP」でも奥野さんが演じるリゼッタが感極まっているとそれだけで僕もグッときてしまい、泣いてはいけないところでも泣きそうになってしまうことがありました。
――再演決定の話を、いつ頃知ったのでしょうか。
奥野:正式にやるというお話を今年の3月ぐらいに聞きました。初演が昨年の12月でしたので「まだ3カ月しか経っていないのに」とビックリしましたが、それだけ再演を希望する方が多かったと聞いてうれしかったです。前回来られなかった方もふくめて、いろいろな方に見てほしいなと思いました。
今回の再演では衣装がバージョンアップしていて、学院の子はみんな指輪をつけることになりました。指輪がどのように物語に関わってくるのか今からワクワクしています。
青木:ヒジリのキャスト変更がなくてホッとしました 。もう一度ヒジリを演じられるのがうれしかったですし、再演となると脚本や演出が変わってくるところがでてくるでしょうから、そうした部分も楽しみでした。今のところ、どう変わるかは知らされていないのですけれど(笑)。
奥野さんも話されたように前回の公演からそれほど時間があいていないこともあって、「あのときはこういう動き方をしていた」「こういうセリフがあった」とハッキリ頭のなかに残っているので、安心感じゃないですけど初演ほどのプレッシャーはない感じです。
――奥野さんが演じるリゼッタは「嘘つきの才能」をもっていて、物語のなかで嘘をつき通さなければならない役どころです。奥野さん自身は“嘘”について、どんなイメージをもっていますか。
奥野:うーん……。なんて言ったらいいんでしょうね。リゼッタとして嘘をつくのが楽しいときもつらいときもあるのですが、そうした複雑な感情を演じることができるのはすごく楽しかったです。特にあるシーンでは、志貴さんが演じるヒジリに嘘をつかなければいけなくて、初演のときは毎回「ううっ」と思いながら演じていました。自分としては演じていて心苦しい部分がありますし、リゼッタとしても「嘘をつかなければいけない、でも本当は……」と葛藤していて。人格が4つぐらいあるような気分で演じていました。
とにかく出ているキャラクターがみんなかわいくて、楽しかったり切なくなったりいろいろな気持ちになれる舞台です。ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。
――青木さんは、初演で毎回無茶ぶりのアドリブを披露するコーナーがあったそうですね。
青木:はい(笑)。最初はもっとソフトなものでさらっと終わるものを想定していたのですが、「がっつりやってほしい」とのオーダーがあったので毎公演で違うことをやりはじめてしまったところ無駄にハードルがあがってしまい、毎日ヒイヒイ言いながらネタを考えてました。もし再演でもアドリブコーナーがあったらどうしようと今から若干震えています(笑)。
――演じるほうは大変でしょうが、そうしたところも舞台の醍醐味ですよね。
青木:あのコーナーは鉄仮面のようなヒジリのキャラを唯一くずせる場でありつつ、お客さんと一体となって声をだして笑える場にもなっています。舞台を見ることに慣れていない方だと、演じている側は笑ってほしいシーンでも「声をだしたらいけないのかも」とかまえてしまうこともあるんです。そうした方々をほぐせる場にもなったらいいなと思いますので、もし再演でもアドリブコーナーがあったら、さらに新しいことができるよう頑張ります。
イベント情報・チケット情報
- Stray Sheep Paradise:em【1回目】
-
- 開催日
- 2019年8月15日(木)
- 時間
- 19:00開始
- 場所
- 東池袋あうるすぽっと(東京都)
- 出演
- 奥野香耶, 青木志貴, 永野愛理, …
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