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インタビュー 2020年1月1日(水)12:00

【新春アニメP放談】KADOKAWA田中翔氏×AbemaTV椛嶋麻菜美氏 日本のアニメ、テレビで見るか?配信で見るか?

「Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版」

Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版

(C) 長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会

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謹賀新年。昨年10月にロゴとアイコンをリニューアルし、7月9日には開設5周年をむかえるアニメハックを、今年もどうぞご愛顧ください。

今年の新春企画は、3年連続登場のKADOKAWAアニメプロデューサー田中翔氏と、インターネットテレビ局「AbemaTV」()アニメ局局長の椛嶋麻菜美氏よる対談をお届けする。スマートフォンやタブレット、配信サイトやSVOD(定額動画配信)サービスで映像を見ることが当たり前になった今、テレビ放送とネット配信、それぞれの役割は大きな変化を迎えている。そうした変化を日々の仕事のなかで感じている椛嶋氏と、普段はまったくテレビを見ないという田中氏に、国内アニメの配信事情や今後の展望を、2019年を席巻したテレビアニメ「鬼滅の刃」の話題などを交えつつ話してもらった。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)

――椛嶋さんのお仕事について聞かせてください。

椛嶋:約5年前、「テレビ朝日と動画配信プラットフォームを立ち上げよう」と代表藤田(晋)の一言でプロジェクトがスタートし、気づいたらAbemaTVで最古参としてプロデューサーをしております。アニメ担当として、編成、調達、宣伝を行い、世の中に企画を仕かけて、アニメドメインの拡大に貢献することがお仕事です。

――作品に出資し、プロデューサーとして製作委員会に参加されてもいますよね。

椛嶋:17年6月にグループのCygamesとアニメファンドを立ち上げました。(※CA-Cygamesアニメファンド)。サイバーエージェントグループとしてIPを育てていこうとクールにつき2作品ペースで出資し、製作委員会に参加もしています。そのなかでKADOKAWAさんともご一緒していて。

――田中さんとは製作委員会で知り合われたのですか。

椛嶋:いえ、そういうわけではないんです。AbemaTVは配信プラットフォームですから作品を調達する側で、向きあうのは基本的に配信窓口担当の方になります。ただ個人的に、作品の真意や意向などを直接プロデューサーに聞いてみたかったので、勝手に動いて田中さんに会えるように頑張りました(笑)。AbemaTVを立ち上げる前からラインナップをそろえるために各社といろいろ交渉していて、田中さんと会えたのは立ち上げ1年後ぐらいのタイミングだったと思います。

――AbemaTVには「声優と夜あそび」という生放送のオリジナル番組もあって、こちらのプロデューサーも務められていますよね。しっかりつくりこまれた内容で、テレビのバラエティのような印象があります。

椛嶋:ありがとうございます。「声優と夜あそび」は開局2年目からはじまった生放送の帯番組です。AbemaTVは、当時、リニア放送でしっかりと視聴習慣をつくっていこうという考えが大前提としてあり、アニメは初速が好調で、新しいチャレンジとして帯の生放送で何かできないかと藤田と話したのがきっかけです。
 実は私、アニメ担当になる前にはアニメをまったく見ていなくて、恥ずかしながら声優もほぼ知らずという。今でこそ沢山の事務所さんとお付き合いがありますが、開局準備期間にイベントに通ったり、映像を片っ端から見たり、勉強しました。もともと私がアニメにくわしくなかったこともあり、根本のところでは、アニメ好きや声優さん好きの方以外にも楽しめる内容にしたいと強く意識しています。

――田中さんは、椛嶋さんと初めて会ったときのことを覚えていますか。

田中:なんかすごいかわいい人きた! と思いました。

椛嶋:(笑)。最初にお会いしたときは、なぜか「プリコネ」(※「プリンセスコネクト!Re:Dive」)の話ばかりしていた気がします。その後は、飲み友達として、いろいろ勉強させてもらっている感じです。

田中:最近、配信担当の方とお話する機会が多いんです。アニメビジネスにおける配信の窓口収益は、大きく右肩上がりというわけではありませんが、多くのユーザーが自分のライフスタイルにあわせたかたちでの視聴習慣がつきはじめていることもあって、まだまだ大きな可能性が眠っている領域だと感じています。だからこそ、こちら側もユーザーの変化にあわせてどんなタイトルを展開するべきか常に考えていく必要があります。僕個人はどちらかというとアンチテレビ派なので、テレビに縛られない自由な視聴環境がもっと根付いて欲しいと思っています……って、こんなことを言うとテレビ関係の方から怒られちゃいますが(笑)。

一同:(笑)。

田中:AbemaTVさんが新しいテレビのかたちを模索しながら、積極的に展開されている姿は非常に頼もしく、キー局という言葉を死語にするくらいの勢いで頑張ってほしいなと思っています。

椛嶋:AbemaTVはテレビ朝日と共同出資でやっていますが、AbemaTVならではの、痛いところに手が届くような視聴体験を作りだして、唯一のマスメディアになれればなと思います。

――私は録画をしたいので今でもテレビ派ですが、まわりと話していると、そもそもテレビで見るという選択肢がなくて、配信で見るのがデフォルトな人がかなり増えている印象です。

椛嶋:テレビをネット経由で見ている人も多くて、今の若い子はテレビと配信の境目をそれほど意識していないように思います。テレビというよりモニターという感覚で、スマホより大きなセカンドスクリーンみたいにとらえている人も多いんじゃないでしょうか。

――ちなみに田中さんは、一視聴者としてテレビと配信、どちら派ですか。

田中:これも怒られそうですが、僕はテレビを1秒も見ないので、年間視聴時間は0分です。思考の浮世離れを防ぐ意味でも人気の番組などは見たほうが良いと思いつつ、思ってるだけで2019年は幕を閉じました。

――最近はテレビをまったく見ない人も多いと思います。

田中:アニメも配信でしか見ないので、配信展開が充実していないタイトルや独占配信を行っているタイトルは、申し訳なく思いながらスルーすることも多いです。

――椛嶋さんはいかがですか。

椛嶋:私もほぼ配信ですが、朝のニュースだけは好きな番組があってテレビで見ています。そういう意味では私もテレビの視聴習慣がついていますし、見ているとテレビで取り上げられたものがネットのトレンドに入ることも多いんですよね。やっぱりテレビの力は大きくて、一定数の視聴者がいるのだなと実感します。19年だと、日曜夜にやっていた「あな番」(ドラマ「あなたの番です」)がヒットしたじゃないですか。あのヒットの仕方も、若い子から30、40代までばーっと瞬間的に広がっていて、ああいう広がり方はテレビの力ならではだと思います。

田中:出版社としてはテレビさまさまで、本当にテレビはすごいなと思うことばかりです。テレビで取り上げられる=本が売れる図式は変わってません。ただネットの口コミから爆発することもあるので、その神通力がいつまで続くのだろうとも思っています。テレビに関することで言うと、いまだにネット上では「(あるテレビアニメが)私の地域で放送されていない」と嘆く方がいますが、見ようと思えば配信で見れますよと伝えたいですね。そういう発言を目にすると、まだまだ配信は世の中にアプローチしきれていないのだなと感じます。そういう方たち全員にAbemaTV を知ってもらえるよう、椛嶋さんには頑張っていただきたいですね!

――椛嶋さんは日々のお仕事のなかで、普段テレビを見る層が配信に流れてきていることを実感することはありますか。

椛嶋:2019年の流れは大きかったなと思います。AbemaTVは4500万ダウンロードまでいって、アニメの分野でいうと、ひとつの節目をむかえた感じがありました。テレビでもあつかうようなマス向けのニュースや記者会見をAbemaTVで見て、そのままアニメを見てくれる人が非常に多かった。特に、山里亮太さんと蒼井優さんの結婚や、令和の元号発表の生放送はインパクトがあって、たくさんの方にAbemaTVに来ていただけました。

――「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」の0話(Episode 0「Initium Iter」)は、AbemaTVで見させてもらいました。実際に体験すると配信で構わないなと思いますし、「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」ではキャストによる副音声をつけて配信していましたよね。ただ流すのではなく、プラスワンをつけることを意識されているように思いました。

椛嶋:おっしゃるとおりで、ただ作品を調達するのではなく、その作品をどうやったら面白く伝えることができるか、「見たい!」と思ってもらえるかという切り口を常に考えています。大きなプラットフォームにお金をかけられたら負けてしまうような勝負はしたくないと思っていて。

――アニメ作品の調達や編成は、どのような基準で決められているのでしょうか。いろいろな要素があると思いますが。

椛嶋:AbemaTVのユーザーとの相性はもちろん見ますし、世の中的に注目されているかどうかも大事な要素です。また、AbemaTVで展開することで作品がライト~マスまで広がるポテンシャルがあるかどうかで判断したりします。

――スタート後の反響を見て、この路線のものをもっと増やそうみたいなこともあるのでしょうか。

椛嶋:ありますね。編成を変えることもありますし、新作の場合は初速の反響を見て、振り返り放送のタイミングや特番の切り口を決めたりもします。特に新作の場合は、単に配信するのではなく、一緒に作品を盛り上げようと作品側の宣伝プロデューサーの方々と一蓮托生の思いでやっています。

――「声優と夜あそび」にも、新番組に関連したゲスト声優の方がよく出演されていますよね。

椛嶋:19年はありがたいことに「出演したいです」とのお話が増えてうれしかったです。18年はこちらから「出てください」とお願いしてキャスティングすることも多かったんですけれど。「声優と夜あそび」では作品を広めるようなつくりにしつつ、作品を知らない人にも興味をもってもらえる企画にすることを心がけています。

――田中さんはアニメを企画するさい、配信で見られることを意識することはありますか。19年に手がけられた「彼方のアストラ」は、配信で一気見したくなるタイトルのように感じました。

田中:そうできたらなと思っています。とはいえ施策的に配信とがっつり組んで展開できるタイプのタイトルって、単発の1クールものだとなかなか難しかったりするんです。例えばスマホ向けゲームなど、継続して動いている“生きた別のサービス”があると、連動していろいろなことができるので、とても有効的だったりします。あとは長く続いている息の長いタイトルですかね。今のところ単発で1クールやって終わりの仕事が8割ぐらいで、自分もそうしたコンテンツをつくって単発の仕事から脱却していきたいと焦りを感じっぱなしです。

――「リゼロ」(※「Re:ゼロから始める異世界生活」)などは息の長いシリーズで、単発の作品でも続けていくことで、ひとつの大きな潮流になっているように思います。

田中:シリーズで続けられるような人気作品になってくれて、非常にありがたく思っています。ただ「リゼロ」も、最初のシリーズのときは先行配信なんてもってのほかだし、いくつかの配信先も「競合なので難しいです」と言われて制限を受けていたので……これ言っていいのかな。

椛嶋:私は記事に残してほしいかな。ユーザーの方にとっては知らないことかもしれませんが、配信状況を見れば分かることですし。

――配信されるタイトルと、そうでないタイトルに大人の事情があることはユーザーもなんとなく分かっていると思います。最近よく見る「○○独占配信」と同じようなことですよね。

田中:初期の頃はサブスクリプションの大手配信先もNGが出ていました。お金の力に屈して「○○は別です」といった事例が多くなっていきましたが、AbemaTVさんは今でも制限されることが多いですね。放送終了後であったり、放送からある程度期間が過ぎればOKなど、条件付きで許諾が下りることもありますが、視聴率が下がりそう、競合他社のサービスはちょっと……といったユーザーライクとはかけ離れた理由で制限がかけられるのは納得のいかない部分です。
 「配信されると(テレビで)視聴する人がいなくなる」という迷信は今でもまことしやかに囁かれることがありますが、配信サービスを利用している人にとって、テレビで放送されているかどうかは、ほとんど関係ないと思うんですよね。テレビを見る習慣がある人は最初からテレビで見るでしょうし、配信で見る習慣がある人は配信で見るわけですから、そもそも同じ土台にのっていないと思います。配信先を増やすことは全体のパイを広げることであり、現状の深夜アニメの事業スタイルにおいて、デメリットになることはないと僕は思っているのですが……。こうした感覚は、我々送り手のほうが常にユーザーよりも新鮮でいなければならないと思いますが、いつまでも古いしきたりのようなものに縛られ、意識改革は行われず、「ああ、もっと広げることができるのに」と感じることが多いです。AbemaTVさんはそこに風穴をあけてくれるであろう素晴らしいサービスだと思っています。

作品情報

Re:ゼロから始める異世界生活 新編集版

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