2020年9月9日（水）19:00

村田太志＆松岡禎丞、「針の穴に糸を通すように」一心に紡いだ「海辺のエトランゼ」駿と実央の恋 (2)

アフレコは繊細な作業の連続
朝から晩まで続き「OKが出るまで妥協は許さない」

――アフレコ時、監督からはどのような演出があったのでしょうか。

(C)紀伊カンナ／祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

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村田　駿は、はっきりしないところがあるので、気の強い女性から「そういうところがダメなんじゃないの」というようなことを言われた時、いかに反撃するか。その反撃の強さの度合いを、監督のイメージに近づけるために何度かリテイクを重ねたことが印象に残っています。

松岡　アフレコでは、常に繊細なものを求められました。その繊細さの加減が、今まであまり受けたことがない方向性というか。部分的に変えるのではなく、「じゃあ何カットから何十カットまで、ちょっと長いのですが、お付き合いいただけないでしょうか？」と言われて、僕らも「やりましょう！」という感じでした。

村田　（笑）

松岡　思ったように演じられなかった時も、「もう1度やりますかい？」と言っていただいて「やりましょう！」という流れでしたね。

村田　そうでしたね（笑）。その時は、結果的にテストが使われましたね。最初に録ったものがしっくりきたという。

(C)紀伊カンナ／祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

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松岡　テストは、用意してきたものをそのまま出せるので「そこでしか生まれない感覚」があるというか。同じようなニュアンスを出そうとしても、どこか違うんですよね。かまえてしまうんです。

村田　難しいですよね。

松岡　今回どうしてもテストのテイクを超えられなかったがシーンがありました。テストの時、自分でも「信じられないくらい自然にできた」「テストでやっちゃった。これ、本番どうなるの!?」と思ったのですが、やはり本番で同じニュアンスはだせなかったです。アフレコはとにかく難しくて、朝から晩までずっとそれを繰り返していました。

村田　集中する時間が続きましたね。10年以上声優をやってきましたが、今回は「ここまで試していただけるんだ」と思うほどに、針の穴に糸を通すような作業でした。それだけスタッフの皆さんが本気でしたし、「これが作品のためなるなら」「それに応えてこその声優ですから」という思いでやらせていただきました。

――演技において、ドラマCDから変化した部分はありますか？

(C)紀伊カンナ／祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

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村田　ドラマCDは絵がないので、聞き手に届きやすいよう、原作を見て感じたものを表現しようと思いました。でも映画はシーンやセリフが厳選され、原作そのままを上映するわけではないので、アニメの映像や世界観に寄り添うように演じました。ドラマCDの時より、若干、駿がツンツンしていたり、ひょうひょうとした部分が薄まっているような印象を受けるかもしれません。その部分は意識して作り直しました。

松岡　ドラマCDだと自分たちの間尺でお芝居ができますが、アニメーションはカットごとに間尺が存在します。そういった意味では、新しい作品に携わるような感覚があります。でもドラマCDで演じたものは、しっかりとベースにある。あとは現場でかけあって生まれていくものだと思います。だから一言で言うと……大変でしたね。

村田　そうですね（笑）。

松岡　我々は出てないところがないので、本当に疲れました。

村田　魂を込めましたね。

松岡　休憩時間はありましたが、すごく繊細なことを納得がいくまでやっていたので、精神的に疲れてきてしまって。（仕事の）休み明けということもあって、オンとオフの切り替えがうまくできず、朝から晩までずっと気を張っていました。毎回ものすごく細かい感情の機微を求められ、OKが出るまで妥協は許さない。熱い現場だったと思います。