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特集・コラム 2018年8月8日(水)19:00

【明田川進の「音物語」】第10回 マジックカプセルの軌跡と、音響監督が同じ役者と組む理由

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「マジックカプセル」という社名は、当時僕がプロデュースしていたゴダイゴの映画のタイトルと同じです(※「MAGIC CAPSULE」。1979年公開)。世界に飛びたった彼らのライブを追うドキュメンタリー映画のタイトルがなかなか決まらず、それが決まったら社名も同じものに変えて動いていこうと考えました。

「マジックカプセル」には、いろいろなものが詰まっている意味合いがあって面白いかなと思いました。当時は音の仕事だけでなく、いろいろことをやっていこうという気持ちがありましたし、虫プロの同僚などからも「どうして、明田川はあんなにいろいろなことをやっているのだろう」と思われていたところがありましたので、そういう意味でもいいかなと。今は略して、「マジカセ」なんて言っている人が多いようです。

会社を立ちあげた頃は、ゴダイゴの事務所の一角を借りていました。その後、青山の紀ノ国屋近くに引っ越し、そこが手狭になって神宮外苑のいちょう並木あたりに事務所を移したあたりから、マジックカプセルは本格的に動き出しました。なぜ、その場所にしたかというと、すぐ近くに秩父宮ラグビー場があって、土日に仕事が終わったあとすぐにラグビーを見にいけるからです(笑)。

現在のビルに引っ越すまで、マジックカプセルは自前のスタジオを構えず、町場のスタジオを借りながらやっていました。スタジオは自由に使えるわけではありませんから、最初の契約に4時間とあったら、あとがつかえていることもある。そうなると、どうしても時間に縛られる部分がでてくるわけです。スタジオをつくることができる物件を何年も探して、今のところに移って今年で4年ほど経ちます。

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自前のスタジオをつくるさいには、どんな機材を設置したらいいかなどを勉強するため、技術スタッフにも外部のスタジオまで足を運んでもらいました。そうするなかで、自分たちのスタジオを少しでもよくしようとの意識が生まれてきたのはうれしかったです。自前のスタジオで作業ができると少し余裕が生まれて、外部ではできない細かな調整もできます。今はアニメがはじまると、関連したゲームやアプリなどの付随した仕事が入ることがよくありますので。

音響会社は、会社系列だったり、どこかのグループに入っていたりするところが多いのですが、マジックカプセルはフリーランスでやっています。そのため、どの会社とも付きあえますが、その反面、大手の仕事で「スタジオは、いつもここを使っています」という場合には、ほとんど組めません。ただ、何本も仕事をして監督とのつながりができることで、監督サイドから「前のつくり方がよかったから、次も同じ音響監督でやってほしい」との要望がでることがあります。そうした声のおかげで、お付きあいのなかった会社と一緒にやるようになったケースが最近でてきています。

物作りですから、やっぱり人と人の繋がりや絆のようなものが大事だと僕は思っています。監督の気持ちをうけとめて、納得してもらえるような音作りをしつつ、なおかつ発注元の会社は、予算どおりにきちっと収められるかどうかをみますから、そこも守っていくことを旨として、みんなで頑張っています。以前は、つながりで仕事の話がくるのは、僕と息子の仁(※音響監督の明田川仁氏)ぐらいでしたが、今は音響制作プロデューサーで凄腕の女性がいて、彼女への指名で仕事がくることも多くなりました。これも人との繋がりのおかげだと思っています。

繋がりといえば、最近、音響監督が同じ役者ばかりを使うことを「また、あの人を使うのか」というふうに言われることがあるようですが、けして悪いことではないと思います。僕自身がそうですが、「この人にお願いすると、こういう芝居をしてくれる」と分かる安心感がありますし、役者さんも「アケさんがまた呼んでくれたから、これまで以上に頑張ろう」と、こちらが思っている以上に役をふくらませてくれる。そうした阿吽(あうん)の呼吸だからこそできる良さがあって、はじめての人相手でそこまでいくのはなかなか難しいところがあります。もちろんその人の声がキャラクターにあっていて、監督にOKしてもらえることが大前提ですけれど。おこがましい言い方ですが、黒澤(明)映画の「黒澤組」のように、より良い音をつくるためのスタイルのひとつなのだと思います。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

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