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特集・コラム 2019年8月22日(木)19:00

【明田川進の「音物語」】第27回 役者がアニメに多く起用される事情と最近感じる変化

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最近の劇場アニメでは、役者さんなど声優専門でない方をメインの役に使うケースが多く見受けられます。僕自身の実感として、役者がアニメによく出演するようになってきた経緯と、最近感じている変化についてお話しましょう。

昔のアニメでも役者を使っているケースがわりとありました。プロデューサーが「この人に合う」と思って選んでいる作品もあったはずですが、「この人は今人気があるから……」という選び方も多かったように思います。また、役者側も「アニメだから」という捉え方をされて、出演に前向きでない返事をされることが今よりずっと多かったです。

そうした流れが変わったきっかけのひとつとして、宮崎駿監督をはじめとするスタジオジブリ作品の存在は大きかったと思います。役者の味を生かした、いいキャスティングをしているなと感じることが多かったですし、あれだけヒットしていくことによって、アニメーションに対するみんなの見方も変わってきました。役者側も出演するメリットがでてきて、むしろ積極的になる今の流れがでてきたと感じています。予算が潤沢にあって宣伝をきちっとやるタイトルだと、実写映画よりも役者にとって露出効果があるのではないでしょうか。

今は、起用する側の考え方もだいぶ変わってきているように思います。今のアニメ監督やプロデューサーは、声優と役者の垣根なく、「お、この人面白いな」という人に目をつけ、実写でポンとでてきた新人も選ぶようなキャスティングをしているように感じます。また、売れっ子の若い役者がどんどんアニメにでているのは、役者自身が漫画やアニメで育っている世代で、「この作品や監督とやりたかった」となることが多いからでしょう。

これまでも、「なぜ声優を使わず役者ばかり」という言われ方を随分されてきましたが、ここまでお話してきたように最近はだいぶ風向きが変わってきている気がします。日本のアニメーションの作り方だと、この前お話した「AKIRA」もそうでしたが 、声の芝居によって絵も変わってくるアテ書きのようなよさがあるんですよね。また、今の若い役者は昔のように声をあてるのは苦手だという考えがそもそもなくて、自分が求められていることを表現するにはどうしたらいいかをサッと考える学習能力も高い。キャラクターに声をあてることで、自分ならではの表現を思いきりだしてみる面白さを、今の役者のほうが実践できているように感じることもあります。

役者がでている今のアニメを見ていると、僕も面白いなと思っていた若手の役者を抜てきしていたり、「この人にやってもらって面白くなった」と感じたりするものが多いです。ずっと昔にさかのぼると、声優という言葉が生まれる前はみんな役者がやっていましたからね。「白蛇伝」(1958)は森繁久彌さんがやられていますし。森繁さんは「もののけ姫」(1997)にもでていますが、その前に僕は「風が吹くとき」(1987)という核戦争の恐怖を描いた海外アニメの吹き替えでご一緒しています。日本語版監督として大島渚さんが立たれていますが、音響関連は僕のほうでやっていて、あの仕事は面白かったです。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

作品情報

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