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特集・コラム 2021年4月23日(金)19:00

【明田川進の「音物語」】第48回 オーディションのあり方の変化

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僕が音の仕事をやりはじめてからオーディションのあり方は随分変わりました。以前は、「音のことはよく分からないからお任せします」というケースが圧倒的に多かったのですが、今は監督やプロデューサーも自分なりの考えをもっている方が増えてきました。音のこともふくめて、「こんな音楽どうですか」「こういうキャラクターの作り方はどうですか」という話を聞くと、「ああ、こういう考え方もあるんだ」と僕自身勉強になることがあります。

役者や事務所側も以前は役を演じるためだけのオーディションだったのが、今はアニメのレギュラーが決まると、そこから派生するイベントやゲームなど関連する仕事がついてくることが多いです。また、作品によってはひとつのオーディションでレギュラーになるかならないかで、その人の人生が変わるかもしれないなんてこともありえます。昔は、「オーディションに呼ばなくても私の声は分かっているでしょう」というベテランの人が多く、決めうちでお願いすることが多かったですが、今はそういう人でも「オーディションに呼んでよ」と言われるようになりました。

原作者から「この役はこの方にやってほしい」と希望がでることも増えてきました。ベテランの監督だとそういうときに自分なりの意見を言うことができますが、新人の監督だと意向をそのまま受け入れてしまうケースが多いです。実際、オーディションで原作者の方が「良い」という人は本当に良いんです。それはよく分かるのですが、その「良い」という人たちばかりを並べると、全体のバランスがまったくとれていないことがオーディションではよくあります。演技的に四番打者のような人がいたほうがいいのはもちろんなのですが、特定の人の好みを優先すると声質がどうしても似てくる傾向があって、そういうとき僕は「もう少し声のバランスをとったほうが面白くなりますよ」と言うことがあります。

作品の本質に関わること以外にも、最近のキャスティングにはイベントのことや今後のプロモーションのことなど、さまざまな要素がからんでくるケースが多いです。昔は監督と音響スタッフで決めこめていたのが、特に製作委員会方式になってからは、きちっと意向が決められたなかで選ぶことが増えてきています。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

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