2019年7月31日(水)19:30
「Anime Expo2019」新作アニメ発表でもコスプレでもない視点から見たイベントレポート
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7月4日から7日(3日には前夜祭も)にロサンゼルスで開催された北米最大のアニメイベント「Anime Expo2019」。リアルタイム含め、レポートがいろいろと上がっていますが、またちょっと違う視点のものをお届けしたいと思います。
Anime Expoを語るのに、よく日本のコミケットや「Anime Japan」が引き合いに出されますが、イベントとしての性質はかなり異なります。アメリカでは一般的なコンベンションという形式で、日本だとこの形式をとっているのはSF大会くらいですが、アメリカではアニメだけではなく、SFやコミック、オモチャ、ドール、映画などさまざまなジャンルで毎週開催されているもの。国土が広いアメリカだからこその泊まりがけ前提のイベントスタイルであり、年間数百単位(下手すりゃ数千?)で開催されています。
Anime Expoの内容としては、メーカーやショップが展示や販売を行うExibit Hall、ファンが自作のイラストを販売するArtist Alleryといった日本のイベントでもおなじみの形式の部分に加えて、あちこちの部屋で開催されているプログラムというコンベンションならではのものがあります。プログラムというのは、アニメ上映やライブ上演、新作発表、研究発表、講演などが、20カ所以上の場所で600以上開催されるもので、その総計は900時間以上! 日本から来たスタッフや声優が参加していたり、世界初公開やアメリカ初公開の新作が上映されたりするといったメジャーなものもあれば、アニメや漫画の歴史についての講義、太鼓や生け花といった日本文化の講座、カラオケ、コスプレイヤーの合わせ、ビデオ上映、ダンス、メイドカフェ&執事カフェ、サイン会などなどその内容も方向性もさまざま。
今年のAnime Expoの参加人数は4日+前夜祭で35万人。これだけの人数がこれだけのプログラムに参加しているので、1人で行って(チームを組んで数人で行っていても)全貌をつかむというのは不可能。まさに“群盲象を撫でる”状態で、ひとりひとり見ることができる場所が限られるため、レポートをしてもごく一部を切り取ったものにしかならないのです。
日本に伝えられるレポートで言えば、近年特に注目されているのは会場での新企画発表。Anime Expo自体の注目度が高まるに従って、会場で新作発表や世界最速上映などが行われることも多くなっているのです。今年は150名以上のゲストが参加し、19本の世界初上映もしくはアメリカ初上映がありました。今回、ゲストと新企画と言うことでは大友克洋の新作&「AKIRA」再アニメ化が大きな話題となっていましたし、「僕のヒーローアカデミア」第4期などが世界初上映となっています。
そして日本に伝えられるもう一つの面としてはコスプレイヤーのレポートがあります。Anime Expoというか、アメリカのイベントでのコスプレ率は日本よりも異常に高く、10人にひとりくらいはコスプレしているような印象です。10人にひとりは大げさとしても、会期中延べ人数で万単位のコスプレイヤーがいるのは確実。本格的なものから気軽なものまでさまざま、とても楽しそうなのが特徴で、コスプレ撮影の場所は制限なく、会場、もしくはその周辺のあちこちで撮影しています。それどころか自宅やホテルからコスプレのまま会場に来るのが普通なので、ホテルのエレベーターで「FGO」のジャンヌ&邪ンヌと一緒になったり、ホテルから数キロ離れたレストランで外を見ると綾波レイが歩いていたり。
ちなみにホテルはこういったコンベンションへの対応は当たり前で、フロントや柱にアニメの宣伝イラストが貼られ、ルームキーもアニメ仕様(今回は「ワンピース」「盾の勇者の成り上がり」「Dr.STONE」などから選べました)。
と、前書きが長くなりましたが、そういったAnime Expoで自分が見た一部をまとめてみましょう。
まず第一印象としては、とにかくどこに行っても行列がひどいということ。いまや、サンディエゴの「コミコン」(アメコミや映画系の世界最大のコンベンション)に並んでLINE CON(行列コンベンション)の異名をとるようになっています。まず、初日では会場に入場するだけで4時間待ちとか、それ以上だったとか。人気プログラムに確実に入るためにはかなり前から並ぶ必要があり(入れないことも多々)、人気ブースでは買い物列に並ぶことさえできない(列を流すスペースがなくてカットされている)。Artist Alleyでは人が多すぎて身動き取れない。何か食べようと思ってもフードトラックには長い行列。通路には床に座り込んで休んでいる参加者も多数。データ上では参加人数は極端には増えていないのですが、実感としてはかなり行列ひどくなったなぁという印象です。入場の遅さに関しては、以前コスプレの小道具として実銃を持ち込んだ人がいて、それ以来カバン&ボディチェックが厳格になったからという理由があるそうですが。
こういった入場者の集中に対して、展示ホールでは連日30分早く開場していたようなのですが、そういった対応が行われていると言うことは一般参加者にはアナウンスされておらず、さらに展示ホールのメーカーに対しても開場が9時半に早まったという情報が来るのが9時15分といつもギリギリだったとか。何千人ものボランティアが中心になって運営しているのですが、その運営に関してなかなか厳しい話も多く聞きました。
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なお、行列に対して有利に動く方法として、PREMIER FAN BADGE(以下プレミアファン)という一般入場の4倍くらい(5万円)するチケットもあります。これだと会場へも専用の入り口から先に入れて、プログラムでは一般列の前に入ることが可能、ゆっくり休憩できるスペースもあったりします。他にもライブや上映など有料イベントの先行予約&ディスカウントがあったり、ホテルを優先予約できたりも。私自身、以前一般参加した際にいろいろ有利なこのプレミアファンを見て、次回はこっちにしようと心に決めたのですが、実際に差額に見合うだけの(というか、こっちにしておかないといろいろ満喫しきることが出来ない)ものでした。ですがそのプレミアファンであっても初日の入場は1時間半待ちでしたが(笑)。
続いて、Anime Expoで見た人気作品の傾向について。これもそれこそごく一部の印象論になりますし、各メーカーがこの時期にプロモーションしたい作品が目立つ形になるので、実は簡単には語れないことなのですが、自分で見た範囲内、聞いた範囲内でいくつかトピック的にまとめてみましょう。
人気が高く目立つ作品ということでは、昨年に続いて「僕のヒーローアカデミア」。コスプレイヤーでも一番目立ちましたし、すべてのプログラムの中でもシーズン4(10月放送開始作品の先行上映)のプレミアム上映が一番人気でした。
コスプレに限って言うと、他にちょっと目立っていたのが「はたらく細胞」。比較的新しい人気作であり、コスプレしやすい衣装というのもポイントでしょう。
日本での人気傾向との違いとしては、アイドルものはそんなに強くない(ライブが開催された「ラブライブ!サンシャイン!!」Aqoursについては熱心なファンが来ていましたが、それでも昨年よりも小さいライブ会場になっています)、美少女いっぱいの日常系やメカorミリタリー+美少女なども強くないという傾向で、「ソードアート・オンライン」や「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」などのRPG系のほうが人気で、なおかつ作品ごとの人気継続期間は日本より長め。
今回個人的に注目していたのが、ミリタリー+美少女ジャンルで「アズールレーン」がアメリカに進出し、ブースを出して更に声優さんも交えたパネルも開催していたこと。前述のようにそういったジャンルはアメリカでは強くないという印象だったのですが、「アズールレーン」はブース周りにグッズ購入の列が絶えず、パネルにいたってはプレミアファンで会場の2/3がうまり、一般はよほど早くから行列してない限りは入れず入場が断られていたのです。大きくない会場だったとはいえ、これは驚きでした。コスプレイヤーも多くはないものの、ちょこちょこ見かけた感じ(非常にクオリティの高くて雰囲気ぴったりのエンタープライズを見かけました)。なお、「艦隊これくしょん -艦これ-」はアメリカには進出してないのでコスプレを少しだけ見かけたというレベル。「アズールレーン」で面白かったというか、意外だったのが、中国では中国艦を中国人が演じているのでアメリカでアメリカ艦はアメリカ人が演じるんだろうと思っていたら、声優さんはそのまま日本人だったこと。それでいいのか!(笑)と思いつつ、やはりアニメ文化の一端として捉えられているんだろうなと感じたことでした。
「アズールレーン」パネル開場前のプレミアファンの行列とブース。
プレミアファンでいっぱいで一般ファンが入れなかったという話では「グランブルーファンタジー」のプログラムでもあったらしいという話も聞きましたが、そちらは詳細不明。一方、「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」のアメリカ初上映ではこれが大きな問題になっていました。もともと希望者数に対して大きくないホールではあったようなのですが、朝3時から並んだ一般ファンが入れなかったとか。ただ、これは運営側の列整理の不手際もあった模様で、イベント終了後も不満がSNS等で流れていました。
ゲーム系では「Fate/Grand Order」は安定して非常に高い人気、「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」がアメリカの配信が始まったばかりということもあって、会場外の広告やラッピングバスを含めて猛プッシュしていました。また、アメリカでは独自のコンベンションも開催しているブシロードも各所で存在感を発揮していました。
というところが、ざっくりした印象。本当はまだまだ面白いことはいっぱいあるのですが、きりがないのでこのくらいで。ただ最初に書いたように、Anime Expoは内包している要素が非常に多くてそのどこを見るかによってまるで別のイベントになります。イベントレポートとして日本に伝えられる場合は、こういう新作発表があった、この声優さんやスタッフが参加したイベントがあった、こういうコスプレイヤーがいたというあたりが中心になっていますが、それはこのイベントのごく一部。イベントというのはどれもそうなのですが、実際にその場に行ってみないと分からないこと、その場にいるからこそ感じられることが多数あって非常に面白いのです。なかなか大変だとは思いますが、海外でアニメがどう見られているかに興味がある人は一度参加してみることをオススメします。日本ではイベントというと声優さんが中心ですが、Anime Expoではふだん表に出てこないようなスタッフの参加も多くサイン会も行われたりするので、そういった点でも面白いですよ。ただ、チケットとしては多少高くてもプレミアファンをオススメします(笑)。
自分のメインの目的であるフィギュア・ホビー系に関しては次の記事で。
ホビー&フィギュア トレンド
[筆者紹介]
島谷 光弘(シマタニ ミツヒロ) フィギュア専門誌「フィギュアマニアックス」を企画・編集し、2000年頃からフィギュアが質、量、人気ともに拡大する10年以上の時期をメディア側で見続ける。現在はフリーでウェブ「ホビーマニアックス」の運営や、ホビー系のウェブやメディアで執筆中。
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物語は近未来、建設途上のスペースコロニーを舞台に特異な環境や社会の中、翻弄されながらも生きていく少年達の冒険活劇。
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