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特集・コラム 2021年7月23日(金)19:00

【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第37回 「月が導く異世界道中」と「寮母くん。」でジャンルの距離感を考えた

「月が導く異世界道中」キービジュアル

月が導く異世界道中」キービジュアル

(C) あずみ圭・アルファポリス/月が導く異世界道中製作委員会

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異世界転生ファンタジーものにちょいと食傷気味なアラフォーのアニメ好きおじさんこと私ですが、今期の「月が導く異世界道中」は楽しんでます。

結局このジャンルの作品は、物語の展開や設定面で、ジャンルのフォーマット……いわゆる「お約束」との距離をどう取るかがキモで、そこのツボが合う・合わないに、作品を楽しめるかどうかの判断が直結するなと思う次第。その点、この作品の重すぎず、軽すぎず、地味すぎず、派手すぎない塩梅の設定や展開は、私にとっては大変ホッとする空気感なわけですわ。主人公の深澄真は当然のようにチート的に強いんですけど、性格は善人すぎず、悪人すぎず。比較的、等身大な感じで造形されたティーンの男子で、お供になるヒロイン2人も、そこまでピーキーなデザインや性格付けをされておらず。主人公を慕ってはいるものの、別にデレデレってわけでもないというあたりの、このほどよさよ。見た目にちょっと和のテイストがあるのも、いいアクセント。

そして、映像のテンポがとにかくいい。石平信司監督の作品のなかではダントツに「ヘボット!」が好きなのですが(ちょっとだけ仕事でも関わらせていただきました)、ボケとツッコミの速度感に、それに近いものを感じますね。

もう1本、今期、肩のこらないつくりで気軽に楽しめそうなのが「女神寮の寮母くん。」。クセの強い女子大生たちの暮らす女子寮の寮母として、住み込みで働くことになった少年の悲喜こもごもを描く、いわゆるエロコメ。画面の肌色成分は結構ガッツリなんですが、不思議と清潔感がある。すっきりとまとめたキャラクターデザインの力かしら。演出のさじ加減の問題かしら。

で、小ネタなんですが、エロコメ作品って、セクシーショットの大事なところを、なんらかのかたちで隠すじゃないですか。そのなかには、モザイクとかじゃなくて、単独の画像素材になっているやつありますよね。「ハヤテのごとく!」のアニメの「自主規制君」がおそらく発祥のアレ。この作品の1話で、それが作中に設定として盛り込まれていたんですよ。長い棒の先にデフォルメされたキューピットの顔がついた、その名も「風紀まもるくん」。ヒロインの早乙女あてなが、他のヒロインが主人公の少年・南雲孝士の前でセクシーショットを披露すると、そのアイテムで大事なところを隠す。……なんか文字で書いてると頭がフットーしそうになりますが、これ、原作コミックの時点であるネタで、つまりアニメで必要に迫られて生まれた表現が、マンガのなかでネタとして扱われ、それがアニメ化されることでメタにメタを重ねたギャグになっているというのは興味深い現象でした。

これもまた「お約束」との距離感問題で、テレビアニメを数多く見るとさすがに飽きがくるときもございますが、こういう楽しみ方ができるようになるのがいいものだなと思いますね。では、そんなところで、また2カ月後にお会いしましょう。

前田 久

前Qの「いいアニメを見に行こう」

[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ)
1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。

作品情報

月が導く異世界道中

月が導く異世界道中 54

平凡な高校生だった深澄 真は、とある事情により“勇者”として異世界へ召喚された。しかしその世界の女神に「顔が不細工」と罵られ、“勇者”の称号を即剥奪、最果ての荒野に飛ばされてしまう。荒野を彷徨う...

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