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特集・コラム 2019年6月24日(月)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】フランス・アヌシー映画祭、大盛況な日本特集ともうひとつの側面

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■満員企画続出の日本企画
 6月10日から15日まで、世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭がフランスで開催された。そのなかで、今年は日本が大きな注目を浴びた。
 20年ぶりのゲスト国に日本が選ばれて、日本特集が組まれたからだ。期間中は戦前の短編から日本初の長編劇場カラーアニメ「白蛇伝」、トリガー最新作の「プロメア」まで数多くの作品が上映された。またゲストにもベテランアニメーターの小田部羊一さんから、若手クリエイターまで日本から多彩なゲストが参加し、トークやワークショップを繰り広げた。

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驚いたのは、どの企画も驚くほど人気だったことだ。話題作「天気の子」の制作過程を紹介するセッションや、コア向けの「HUMAN LOST 人間失格」、さらにアート系の短編、若手アニメーター育成で制作された「あにめたまご」作品集までが早い段階でチケットが完売。「ルパン三世カリオスロの城」の野外上映も好評だった。日本への関心が様々に広がっていることを感じさせた。
MIFAと呼ばれる国際見本市会場でも同じだ。日本ブースは、AR三兄弟と新海誠のVRコラボプロジェクトなど作品展示・カルチャーを強調したが、多くの国がポスタービジュルとミーティングスペースとシンプルな出展の中で異彩を放ち人気を集めていた。

■グローバリスムの中での異質な日本アニメ
 しかしコンペティション部門はやや残念な結果だった。長編コンペティション部門だけでも「きみと、波にのれたら」「バースデー・ワンダーランド」「あした世界が終わるとしても」の3作品、それ以外にも短編、テレビ、受託作品部門に日本の作品が出品されたが受賞はなかった。
 長編コンペでクリスタル賞(グランプリ)を受賞したのは、フランスの「I Lost My Body」。切断された手首が自分の身体を求めながら町を彷徨いつつ、その身体の持ち主の人生を描く。芸術性の高さが強調されている。審査委員賞受賞の「Buñuel in the Labyrinth of Turtles」は、スペインのシューレアリストの映画監督ルイス・ブニュエルの実話を追ったドキュメンタリーアニメーションである。
 昨年のクリスタル賞の「Funan」、審査員賞「生きのびるために」がいずれも政治色の強いドキュメンタリーだったことも加えると、アヌシーがコンペティションで求める作品が見える。卓越した映像以上に、題材の深いテーマ性が必要とされている。
 それは多くの日本の商業アニメとは、かなり方向性が異なっている。日本のアニメは作画や映像の素晴らしさ、ストリーテーリングがより重視される傾向にある。それは映像と作画で観るものを圧倒する「海獣の子供」が長編部門でなくCenterChamp部門でノミネートされ、かつ受賞に届かなかった理由だったかもしれない。
 日本アニメは世界のアニメーションという世界においた時にやはり相当異質であることを感じさせた。同時に異質であるがゆえに、異なったものとして存在感を発揮している。それが今回の日本特集への強い関心だったのではないか。

■世界のアニメーションには3つの大きな流れ
 映画祭にはもうひとつ異質な存在がある。長編コンペティションには、米国作品がほとんどない。「アナと雪の女王2」の大型企画を組んだディズニーも、「トイ・ストーリー4」の公開を控えるピクサーも、さらにドリームワークスもだ。
 世界中で商業的な成功する米国スタジオの大作映画は、実は世界のアニメーション業界というなかではまた異質と言っていい。際立った製作予算と大衆性の追求は、映画祭のコンペテイィションとはまた別の評価軸がある。ハリウッドスタイルのアニメーションは世界であふれるが、それは独自の宇宙を形成している。

いまの世界のアニメーション界には3つの大きな潮流がある。ひとつはアヌシーのコンペティションで競うような作家性を強く打ち出した作品群。長年、ヨーロッパやカナダが得意としてきた分野だ。もうひとつは米国の商業アニメーション、もうひとつが日本の“アニメ”だ。ただし“アニメ”スタイルは日本だけのものでなく、アヌシーで紹介された韓国、あるいは中国の作品にも広がっていて、急激に勢力を広げつつある。
 そして、ハリウッドムービーも日本アニメも積極的に受け入れるアヌシーもまた、アニメーション映画祭のなかで異質な存在だ。しかしそれが過去5年あまりで瞬く間に、世界で他の映画祭を寄せ付けないほどまでに影響力を拡大したアヌシーの秘密でもある。これまでは分断されていた3つを全て同じ“アニメーション”と再定義することで、アニメーション文化の活性化を目指す。
 それは同時に、多くの人々が持っていた曖昧な共通認識を具現化したともいえる。3つのアニメーションは、実際はばらばらでなく互いに重なりがあり、影響し合っている。さらに近年はますます接近し、融合している。
 それは例えばNetflixがアヌシーで発表した「エデン」といった作品が示している。米国のプロデューサー、日本の監督・キャラクター・脚本、台湾の制作、さらにヨーロッパのスタッフも加わった作品だ。近年さらに増加傾向にある国境を越えた共同作業は、相互影響だけでなく新しいスタイルのアニメーションを生みだしはじめている。アヌシー映画祭は、そうしたアニメーションの新時代を映す鏡でもある。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

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