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インタビュー 2015年8月21日(金)20:00

「攻殻機動隊」25周年企画 「攻殻機動隊」が背負った時代性 前編 寄稿・氷川竜介 (2)

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

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■世界観を構築して発生するリアリティ

もうひとつ「攻殻機動隊」の特質を理解する上では、1982年のSF映画「ブレードランナー」(リドリー・スコット監督)の存在も重要だと思います。「サイバーパンク」に隣接するものではありますが、むしろ先駆的な位置づけですから。日本のアニメを含むサブカルチャーで「異世界まるごとをデザインし、構築する」という方法論が常態となるきっかけをつくり、決定的な衝撃と影響をあたえた作品だと言えます。

「ブレードランナー」がそれ以前のSF映画と大きく違って受けとめられた点は数々ありますが、単に「悲観的な未来像を描いた」とか「卓越した特撮(SFX)」とかがすごいということではありません。概念そのもののレベルが違っていた。決定的だったのは「異世界丸ごとを構築して見せる」という点です。

酸性雨が常時降りしきるロサンゼルスの猥雑な街並み――そこにひしめく中国・アジア系の市民とは、言葉さえ通じづらい。こうした端的な描写で、「なぜそうなったか」という経緯の想像が触発されるよう、万物が配置されている。ディテールの集積が「世界」のリアリティの根拠となって、確固たるものにまで高まっている。そこを映画の根幹である「ビジュアル」で説得力豊かに提示した点こそが、真にすごいのです。

そしてここで述べた「すごさ」は、そのまま「攻殻機動隊」の一連の作品を讃えるものとつながっています。単にビジュアル要素から見た目の影響があったということではなく、発想法がつながっているのです。

イノセンス

イノセンス

(C)2004 士郎正宗/講談社・IG, ITNDDTD.

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現在では当たり前になりすぎて、もしかしたらその「すごさ」が分かりにくいかもしれません。「設定」を積み重ねて「世界観」を構築するのは、マンガ、アニメ、ゲーム、ライトノベルでも定番の手法になってしまった。「ブレードランナー」は、そこをひとつ極めたことで別のステージに行った作品で、その確固たる世界観の中で「バイオテクノロジーで作り出された人造人間レプリカントは人なのか」というテーマを描く「表現と内容の同一化」がすごかったのです。なぜならば、それによって逆に「人が人である理由とは何なのか」という普遍的な探求が切実に浮かぶから……。

このように抽象度を高めて解説すれば、「攻殻機動隊」の全シリーズで追い求めているテーマとの近似性、共鳴関係、時代性へのコミットが見えてくるかと思います。

もうひとつ「ブレードランナー」から「攻殻」につながる大事なことは「ハードボイルドもの」「ポリスアクション」として「サイバー犯罪」を描いたことです。都市に住む孤独な探偵が、無理難題の依頼に取り組むというハードボイルドは、中世で言えば主君をなくした騎士道物語の末裔にあたるもの。そこにも「人として変わらぬ正しさ」を求める普遍性な構造があるわけで、これも「攻殻機動隊」で活躍するサイボーグ捜査官の姿勢や言動の凛とした魅力に通じる部分があるのではないでしょうか。

作品情報

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