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インタビュー 2015年8月21日(金)20:00

「攻殻機動隊」25周年企画 「攻殻機動隊」が背負った時代性 前編 寄稿・氷川竜介 (3)

攻殻機動隊 新劇場版

攻殻機動隊 新劇場版

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会

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■士郎正宗の先駆性

「攻殻機動隊」の原作者・士郎正宗もまた、1980年代が生み出した「時代の申し子」的な作家に位置づけられます。1985年に刊行された描きおろし単行本「アップルシード」は、その緻密な筆致、背後にある膨大な設定と知見、さらには過去から連綿と連なる哲学や思想の未来的な展開に至るまで、驚くべき「濃密さ」に満ちあふれている。しかも、ひとつの美学で統合されています。すなわち「圧倒的な情報量とその有機的な結合、そこから見えるビジョン」こそが、大きな話題を呼んだ中核というわけです。

「普通の読み方では分からない部分」も多々あり、それが繰りかえし読むに値するバリューに高まっている。もちろん80年代を代表する大友克洋のSFマンガ「AKIRA」の影響などもあるでしょうが、フォロワーをはるかに超えた独創性と個性が輝いていました。

1980年代は中盤に誕生したOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)による若手が挑戦する時代でもあり、「アップルシード」「ブラックマジック」「ドミニオン」と士郎正宗マンガは、続々とアニメ化されていきます。しかし……あまりに時期尚早でした。ことに原作者自身が絵コンテを描いて監督をつとめた「ブラックマジックM-66」(87)は、「何を目標としていたか」が今見た方が明瞭に分かるというオーパーツ(歴史上その時代にはあり得ない先進性をもつ出土品)のような作品で、この一事で士郎正宗ビジョンがいかに先駆的だったか、時代の方が後を追っているのかが分かったりします。

ざっくり言えば、士郎正宗的世界観をアニメ映像として定着させるには、1995年の技術的成熟を待つ必要があった、ということに尽きます。表現したい目標と具現化する技術のバランスが、ようやくにしてマッチしてきた作品こそ、押井守が監督し、Production I.Gを現場として制作された映画「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」というわけなのです。

この映画の世界観が「士郎ワールド」を忠実に具現化しているかは、かなり異論のあるところだと思います。しかし、もっと大事なところで原作の「本質」とつながっている部分がある。そう筆者は思っているのです。それはアニメ業界激変の「端境期」に作られたという「時代性」と大いに関係があります。

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG

攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

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設定の根幹にある「サイボーグテーマ」とは、「生身」と「機械」の結合によって生じるエクステンション(拡張)とコンフリクト(競合・対立)の両面を浮き彫りにするものです。映画の中で描かれていることで言えば、生身のボディだと跳べないような高みへジャンプできるのが能力のエクステンションで、逆にその分身体が重たくなってしまって、水中で沈んで浮いてこなくなるのではないかという悩みは、サイボーグ化で喪ったものとのコンフリクトです。

そして1995年のアニメーション映画は、まさに「手づくりのアニメがCGという機械化で予見的に変貌していく」という「アニメのサイボーグ」としての宿命を背負った作品ばかりなのでした。

文:氷川竜介(アニメ特撮研究家/明治大学大学院客員)

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