2016年8月11日(木)20:00
日常と非日常の狭間のリアリティがストーリーの軸に TVアニメ「正解するカド」村田和也総監督&野口光一プロデューサーインタビュー後編
謎のベールに包まれたまま、2017年の放送開始を待つテレビアニメ「正解するカド」。村田和也総監督と野口光一プロデューサーを訪ねたインタビューの後編では、イントロダクションが公開されたことで、徐々にその姿を現しつつあるストーリーに迫る。小説家の野﨑まど氏が脚本を手がけた、ミステリアスな物語が開く新境地とは?
――ところで「正解するカド」という、一風変わったタイトルは、どなたが命名したんですか?
野口:野﨑まどさんが最初から付けていたタイトルなんです。いくつかあるプロットの中でも、特に目を引いたものでした。
村田:聞いただけではよくわからない、意表をついた感じが、目指す作品の内容とピッタリ合っていました。アニメのタイトルとしては今までにないパターンで、おもしろいですよね。
――ストーリーを生み出すにあたり、野﨑さんとは、どのようなやり取りをされたのでしょうか?
野口:野﨑さんと村田さんは、ずっと人類の進化についての議論を戦わせていましたね(笑)
村田:最初にいただいたプロットは、視聴者を置き去りにしてしまう筋書きだったので、そこは「難しいことを言っているけど、理解はできる」という落とし所にしてもらいました。また、テレビシリーズでは、視聴者が最初に作品に抱いた欲求や期待を、話が進むごとに満たしてあげる必要があるので、一旦敷いたレールを根本からひっくり返すようなことは避けましょうと話し合いました。意表をつくのはOKですが、視聴者がまったく思いもつかない方向に物語が進んでいき、当初望まれていた欲求が満たされないというのは、好ましくないですから。ですが、綿密なやり取りを重ねたおかげで、視聴者のみなさんの予想を裏切り、なおかつ期待に応えられる脚本になっていると思います。野﨑さんは第1稿から読者を楽しませる脚本を仕上げてくださるので、拝見していて感心しきりでした。
――先ほど(前編)もお話にのぼりましたが、タイトルにもなっている巨大な立方体「カド」には複雑怪奇な3Dフラクタル構造が用いられており、メイキング映像も公開されています。どうして3Dフラクタルに注目し、それを全面に押し出すことになったのでしょうか?
村田:今作には謎の高次元の存在が登場します。すでに公開されているキャラクターのヤハクイザシュニナもそうですが、「カド」も彼と同じ存在なんです。本来ならば、高次元や異次元と言った概念は、我々の感覚で把握しきれるものではないと思うのですが、それをどうにかアニメーションとして表現しなくてはいけない。でも、どんなに高度なデザインを使っても、人の手が関与している以上は、人が作り上げたものという感じがしてしまう。だったら、最初からコンピュータに作らせてしまおうと。
僕自身がかねてより、3Dフラクタルに強烈に惹かれていたということも要因のひとつです。2Dフラクタルのころからおもしろさは感じていたんですが、それが3Dになった時に、ものすごくおもしろい「空間」が表現できるようになった。動画にした時には、無限に変化し続けられるという、アニメーションに向いた特徴もある。ところが、これを作品に利用しようとすると、なかなか使い道が思いつかなかった(苦笑)。たまたま、フル3DCGで制作する「正解するカド」では内容的にも手法的にも3Dフラクタルをうまく使える条件がそろったので、技術的に可能かどうかわからないながらも、「使ってみませんか?」と提案しました。
もちろん、現場のみなさんも初めての挑戦だったんですが、とても積極的に検討してくれました。3Dフラクタルを扱うにあたっては、いくつかの基本的な関数があるんですが、「立方体っぽくなる」関数を用いて「カド」を作ってみてもらったところ、予想を上回る、ビックリするような見栄えだったので、「これは行ける」と。その後も、計算にかかる時間や労力、カットに合わせてカメラワークがコントロールできるのか、動かした時にモーションが付けられるのか、といったことを綿密に確かめていきました。「カド」はキャラクターとして扱っているので、人の手で動かすことができなければいけないんです。
――えっ、「カド」はキャラクターなんですか?
(C) TOEI ANIMATION/KINOSHITA GROUP/TOEI
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村田:「カド」は、見た目は単なる四角い構造物ですが、ザシュニナの意向を汲んで、さまざまなことを行います。さながら「のび太くんにとってのドラえもん」といったところでしょうか(笑)。ザシュニナが「カド」に呼びかけて、アクションを起こさせるシーンもあります。仕草や表情はないし言葉も発しませんが、人間側から見れば意志がある存在のように見えるはずです。また、映像的にも「ただの背景ではなく、積極的に存在感を登場人物にアピールしてくる」といったことから、必然的にキャラクター性を獲得してしまったというのが、実際のところですね。
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