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特集・コラム 2018年9月13日(木)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】製作委員会を越える仕組みは可能か? 「ポプテピピック」から「未来のミライ」までの新潮流

「ポプテピピック」キービジュアル

「ポプテピピック」キービジュアル

(C) 大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード

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■脱製作委員会? 変わるアニメのつくりかた
 「製作委員会」という言葉を聞いたことのある人は多いだろう。日本のアニメの製作で長年利用されてきた仕組みだ。複数企業が製作資金を分担し、作品の権利も共同保有する。各社のビシネスリスクを軽減し、同時に参加企業を増やすことで作品が大きくなるのが利点だ。
 一方で製作委員会は、権利分散がビジネスの決定を遅くするとも言われている。またアニメーション制作をするスタジオは、自らが製作委員会に出資しない限りは作品の権利は持てない。作品が大ヒットになっても恩恵は少なく、アニメ制作現場が厳しい理由ともされている。
 製作委員会の存在は功罪半ばだが、それでも過去20年間のアニメビジネスの中心だったのは、これまでこれに変わる仕組みがなかったからだ。

ところがここ数年、少し状況が変り始めている。製作委員会を使わないアニメ製作が増えているのだ。例えば大ヒットになった「ポプテピピック」はキングレコードの1社出資。2017年春の「正解するカド」は東映アニメーション、東映、木下グループが製作し、製作委員会は組んでいない。
 なかでも目立つのがスマホアプリゲーム会社だ。Cygamesは「神撃のバハムート GENESIS」(14)と続編「神撃のバハムート VIRGIN SOUL」(17)を、ミクシィは「モンスターストライク」を自社単独出資でアニメ化する。
 いずれも作品権利の集約、迅速なビジネスが念頭にあるだろう。しかし、それは製作委員会の利点であった複数企業による協力の効果を失わないだろうか?

■「未来のミライ」の示す未来とは?
 この点で今年夏公開した「未来のミライ」が新しい可能性を示している。「未来のミライ」の著作権表記が「スタジオ地図」であることに気づいただろうか。「未来のミライ製作委員会」ではない。本作でも製作委員会が使われていない。
 アニメ映画は、これまで「○○製作委員会」と権利表記されることが多かった。細田守監督の前作「バケモノの子」もである。
 ここで表記されている「(C)スタジオ地図」は、アニメーション制作の「株式会社地図」ではなく、「スタジオ地図LLP」を指しているようだ。LLPの出資者にKADOKAWAがあるのは同社のIRから確認できる。さらに株式会社地図や日本テレビ放送網が出資しているとみられるが、出資者数は限定されている。
 一方で、映画のエンディングクレジットでは、これまでどおり東宝をはじめ多くの協力企業名が並ぶ。つまりビジネスはこれまでどおりだが、その枠組みに製作委員会を使わない。目的は製作委員会の弱点であった権利分散や収益配分の煩雑さを避けること、迅速な決断の実現と見ていい。

2018年5月にテレビ放送を開始した「カードファイト!! ヴァンガード」は、より明確だ。シリーズを一新にするあたり、製作委員会からブシロードの単独出資に切り替えた。
 雑誌「Newtype」6月号で、ブシロードTCGプロジェクト最高責任者の木谷高明氏は「カードゲームを題材にした作品のほとんどはカードゲームしか売れていないんです。ならばカードゲームでどうやっていくかに最適なフォーメーションを組むのがよいという結論です」と話している。製作委員会はいまでも有用であるが、製作委員会を使わないほうがよい作品もあるというわけだ。

「どろろ」キービジュアル

「どろろ」キービジュアル

どろろ (C) 手塚プロダクション/ツインエンジン

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■アニメスタジオは自ら製作出資できるのか?
 アニメスタジオからも変化が起きている。自らが作品に出資し、権利を持つ動きだ。ジェノスタジオ、リボルティオ、スタジオコロリド、レイ・デュースの4つのスタジオを束ねるツインエンジンは、2014年に設立したばかりで歴史は浅い。
 ところが2018年に「刻刻」「からくりサーカス」「どろろ」「バビロン」「pet」の1社単独出資を発表した。同時期に発表した「ヴィンランド・サガ」も出資の大半はツインエンジン。新興のアニメーション制作会社は作品の権利を持てないといった状況をひっくり返しにかかる。

スタジオの直接出資に大きな役割を果たすのが、配信会社である。外資系のNetflixは、2018年1月にProduction I.Gとボンズの2社と包括的業務提携を結んだ。両スタジオは複数の作品を製作し、Netflixはその配信権を購入する。Netflixは製作委員会でなく、両スタジオと直接交渉する。
 3月から配信中の「B: The Beginning」はProduction I.Gの単独出資作品で、Netflixは製作予算を丸々カバーした金額で番組を購入したとみられる。こうしたかたちは今後も増えそうだ。
 スタジオには、製作費がカバーされ、作品の権利も手元に残るNetflixとの取引は魅力的だ。Netflixにとっても、この方法はメリットが大きい。製作委員会からの購入は、すでにある企画や番組になりがちだ。しかし自社サービスの視聴者によりアピールするために、作品のクリエイティブにもっと踏み込みたいNetflixにとっては、スタジオと直接向き合うかたちはありがたい。

■資金問題の解決策になるのか ジャパンコンテンツファクトリーの設立
 製作委員会以外の選択肢は増えているが、しかし誰でも可能とはいかない。最大のハードルは資金調達である。そもそも製作委員会のいちばんの目的は、各社の資金分担にあった。
 例えば外資系配信会社の支払いは、作品完成後、配信開始後になる。すると製作者は企画開発・アニメーション制作開始から支払いまでの2~3年、その資金を全て自分で用意する必要がある。深夜アニメ1クール(3カ月)で2億円から3億円。さらにツインエンジンのように並行して複数の作品を走らせると必要資金は何倍にもなる。国内の多くのアニメーション制作会社の年間売上高が数億円から数十億円と考えれば、投資負担の大きさは想像がつく。
 製作委員会を使わずに単独・少数企業で製作出資できる企業は、資金が豊富か、資金調達の容易な安定企業、有力企業になりがちだ。すると豊かな企業がますます豊かになるだけになってしまう。
 解決策のひとつとして、9月に「株式会社ジャパンコンテンツファクトリー」の設立が発表された。同社の目的は、自社製作する企業に作品が完成し、作品の対価が支払われるまでの資金を貸し付けるものだ。細かな仕組みや条件は明らかにされておらず未知数だが、内容次第では資金調達に悩む企業にとっては、ひとつの選択肢になるだろう。
 逆にこうした仕組みが注目されるのは、アニメーション制作会社の多くが自転車操業、資金調達の仕組みが未発達であることの表れだ。製作委員会に替わる新たな仕組みの確立の鍵は、実はファイナンスにある。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

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ポプテピピック

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暗闇は無く、無知があるのみ。―ウィリアム・シェイクスピア―

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