2018年1月2日(火)19:00
新春アニメプロデューサー放談(2)KADOKAWA田村淳一郎氏 「お色気ものは、年1本ぐらい作っていこうと思っています」 (2)
――個人的に気になっていることで恐縮なのですが、KADOKAWAさんのラインナップのなかには、「紳士枠」と言われるお色気ものが定期的に入っていますよね。
田村:はい(笑)。
――「魔装学園H×H」などでは、テレビでは作ったままを映すことができないことを逆手にとった工夫をされていて、そういうことに熱心なプロデューサーの方がいるのかなと思っていました。
田村:自分のなかで、ああいったお色気ものは定期的にやっていこうっていうのが比較的ありまして(笑)。さきほど映像ソフトが売れないという話がありましたが、この手の作品はわりと健闘するジャンルでもあるんですよね。海外にたいしても、「ちょっと過激だしどうかな」と思っても、意外といい評価をいただけることが多い。「なろう」的な冒険ものや、SFっぽいものなど、いろいろな路線があるなかのひとつとして、お色気ものもジャンルとして期待されている方がいらっしゃるので、年に1本ぐらいは作っていこうというところで、やらせていただいています。
――「これぞアニメ」といいますか、日本のアニメならではの表現のひとつだと思います。
田村:そうですよね。今の実写では過激すぎて実現できないような企画を、見せ方をふくめ、監督と話しあいながら作っています。「魔装学園H×H」などは、ギリギリどこまでいけるのかというのもテーマのひとつでしたので、画面にロボットの手をだしたり、歯車を入れたり、いろいろと話し合いながら作っていきました(笑)。
――ご自身の作品からはなれて、他社さんの作品やトピックなどで17年に印象的だったものはありましたか。
田村:個人的な好みの話でいいますと、「Re:CREATORS」には企画チームの強さみたいなものを感じましたし、勉強にもなりました。オリジナルで2クールやることをふくめ、内容も創作と現実をおりまぜたチャレンジャブルなものでしたよね。すごくきちんと作られていて、面白いなと思いながら見ていました。あと、3DCGものの「宝石の国」も、とてもきれいに作られていましたよね。「正解するカド」もそうでしたが、3DCGでSFっぽいものをやるのは面白いし、ありだなと思いました。
――今年の展望について、聞かせてください。
田村:最初にお話した制作のリソースの問題は、さらに深刻化していくと思います。そこの構造を変えるべく業界全体で取り組むことを、どこかで考えなければいけないですよね。真剣に向き合わなければいけないときがきていると、他のメーカーの方ともよく話しています。この問題は、18年に関わらず、ずっと続いている話ではあるのですけれど。
「シュタインズ・ゲート ゼロ」キービジュアル
(C) 2018 MAGES./KADOKAWA/ STEINS;GATE 0製作委員会 (C) 2018 MAGES./KADOKAWA/ STEINS;GATE 0 Partners
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――最初にお話されていたように、他のメーカーの作品が遅れることで、田村さんの作品に影響がでることも、また逆のケースもおこりうるわけですものね。
田村:少しずつ玉突き衝突していくような感じなので、業界全体で考えなければいけないという危機感をずっと抱いています。弊社の作品の話をさせていただくと、皆さんに待ち望んでいただいていた「シュタインズ・ゲート ゼロ」と「フルメタル・パニック!」の2シリーズを、今年だせることになりました。その他、ちょっと変わったものなどを織り交ぜつつ、皆さんに楽しんでいただける作品を送りだしていければと思っています。今のアニメって、見てみないと、面白いかどうか、なかなか分からないじゃないですか。放送前の評判と、その後の評判がイコールになることってあまり聞かないですし、逆の言い方をすると、何が当たるか分からない面白さがある。今申し上げた2つの大作のほかにも、面白いもの、かっこいいもの、お色気ものといった、あらゆるジャンルをやっていくことで、皆さんに飽きられないような充実したラインナップで今年も臨みたいと思っています。
――1月からはじまる「BEATLESS」は、田村さん自身がプロデュースをつとめられている作品です。そちらについても一言お願いします。
田村:水島精二監督と、「艦これ」(「艦隊これくしょん -艦これ-」)のディオメディアさんに、難しい題材の原作にチャレンジしていただいています。原作は真面目なSF作品で、テーマも重いものですが、それをいかに分かりやすく映像として伝えるか、監督をはじめとする現場スタッフ一同、腐心されています。物語は、AIと男の子のラブストーリーにまとめ、「ニュータイプ」連載中からイラストを描かれているredjuiceさんの絵も、了承をえたうえで、アニメファンの方に見やすいタッチのものに調整しています。SFは、好きな人以外はなかなか入りにくいところがありますが、そんな原作を、どれだけエンタテインメントのドラマとして落とし込んでいるのか、ぜひ見ていただければと思います。
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