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インタビュー 2019年11月28日(木)19:00

スロウカーブの挑戦とGONZO魂 “弧を描く謎の決め球”のようなアニメをつくりたい (2)

(C) 2019 HUMAN LOST Project

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――「HUMAN LOST 人間失格」はポリゴン・ピクチュアズさんが制作されていて、メインスタッフの方々もふくめ、とても魅力的な座組だなと思いました。ポリゴンさんとは、どんな経緯で一緒にやることになったのでしょうか。

尾畑:個人的な話になりますが、ポリゴン・ピクチュアズの副社長の守屋(秀樹)さんは、GONZO時代の僕の上司だったんですよ。守屋さんがポリゴンさんに移られてからも親交があって、「いつか一緒に仕事をしたいね」と話していまして。アニメ「シドニアの騎士」を見てからは、よりご一緒したいという気持ちが高まり、「HUMAN LOST人間失格」の企画はルックもふくめてポリゴンさんのカルチャーと合いそうだと、僕からお願いしにいったというのが経緯です。

――木﨑文智監督はGONZO制作のアニメ「バジリスク~甲賀忍法帖~」の監督をされていて、当時、尾畑さんはGONZOサイドの宣伝を担当されていますね。

尾畑:くわしいですね(笑)。「バジリスク」以降はご一緒する機会がなかったのですが、ずっと「木崎さんいいな」と思っていて、「HUMAN LOST人間失格」は作品的にもあいそうだと感じましたので、「ほんとにご無沙汰しています」という感じで再会したところ、木崎さんは僕のことを覚えていてくださって、企画内容を説明したところ「面白い」と引き受けていただけました。

――スロウカーブの企画は、「こういうものがやりたい」という初期衝動からはじまっているのですね。もうひとつ分かったのは、企画にじっくり時間をかけられていることでした。「スロウカーブという社名なのに、アニメプロデュースに急カーブをきっている」みたいな見出しにしようかなと考えながら今日は来たのですが、「全然急カーブではないんだな」と。

尾畑:そうですね(笑)。

――長い時間をかけて企画されていて、ここ最近の動きだけを見た私が、たまたま急カーブに見えていただけなんだなと。

橋本:死角からこう入ってくるみたいな。

――(笑)。

尾畑:そういう意味でいうと、GONZO時代から20年以上変わらないカルチャーでやっているのかもしれないですね。根底のスピリッツでいうと、あの頃につちかったものが抜けていないといいますか。

橋本:あのときのまんまだよね。

――言い方が難しいですけど、スロウカーブさんのアニメ企画には“GONZO魂”のようなものを感じます。「バジリスク」「巌窟王」「SPEED GRAPHER」をつくっていた頃の、エッジのきいたものをつくるイケイケな感じといいますか。

橋本:染みついているところがあるのかもしれませんね。僕自身そう思うときもありますし、逃れられないようなところがあるのかなと。

尾畑:業界の方からはそう思われがちで、僕自身それでいいと感じているところもあるんですけれど、その限りではないなとも思っているんですよ。僕らは毎週定例会議をやっていて、この前、3時間ぐらいの激論になったことがあって……すみません、ちょっと脱線してしまいますけど。

――いえいえ。

尾畑:スロウカーブの企画チームの未来や、今度どうなっていきたいかということについて、みんなで話し合ったんです。そのときにクリエイティブの方向性についても話題にあがって、社外の人たちからは格好いい鋭いものをやりたいと思われがちだけれど、そこだけでなく、例えば女の子ものやキッズものをやるのもいいんじゃないかと。
 スロウカーブという社名には「決め球は直球ではなく、ちょっと曲がった球を」という意味もこめられているんですけど、アニメの企画でも「ちょっと変わっているな」とか「面白そう」「ワクワクする」みたいなことが感じられれば、どんなジャンルでもいいと僕は思っています。

――なるほど。たまたま、そういう作品が続いているだけということですね。

尾畑:ええ。意図的に、カッティングエッジなものだけをやろうとしているわけではないんです。

橋本:とはいえ思い返してみると、当時GONZOでつくっていた僕らがまた一緒にやったら同じようなものになるかもね、というのはちょっとあるかもしれません。マーケティングとしてはメジャー志向的なのに、そこにちょっとオルタナティブなネタをはてはめていく感じは、あの頃の仕事と重なっているところがあるのかなとは個人的に思います。ただ、今はアニメを取り巻く環境がガラッと変わっていますから。

――たしかにそうですね。

橋本:「あのときの続きをやろう」と思っているわけではまったくないですし、そこは断絶されているものですので、最初に「HUMAN LOST人間失格」をやるぞとなったときから、スロウカーブ的なものとは何であるのかを模索しながらやっています。

――なるほど。

橋本:例えば「revisions リヴィジョンズ」では、アニメというくくり以前に、「渋谷がそのまんま未来に飛ばされたら、どうします?」というような、普通の人が娯楽として楽しめる間口の広さみたいなところは大事にしているところです。そこの中心的なアイデアをバイアスのかかったマニアックなものにはしたくなくて。ただ、じゃあ中身もそのまま一般論的にやるのかと言われたら、それも違うよねっていう、ちょっとひねくれたところがあるのかもしれません。お客さんの裏をかくというか、予想もできないところから急にカーブしてストライクに入っていくような雰囲気にできたらなとは意識しています。

――尾畑さんは、今のアニメ市場についてどう考えられていますか。

尾畑:ビジネス的なところでいうと、やっぱり今の日本はだいぶ市場が狭くなっていますし、そういう意味では勝ちにくくなっているように思います。僕らは必ずしもメチャクチャ勝ちたいと思ってやっているわけではないんですけど、それでもやっぱり3、4年かけてオリジナルをつくって、それが1クールの波にのまれちゃうのも……というのもあるので、基本的には海外にいかにダイレクトに出ていけるかを強く意識するようにはなりました。もちろん、日本のお客様にちゃんと受け取ってもらうのは絶対に大事にしたいので、そのうえでどうやって海外にという意味ですけれど。

――3作品とも、ダイレクトに世界にだしていくことを意識されているのですね。

尾畑:はい。今後の企画も、海外にちゃんと照準があって、スロウカーブらしいというか、ちょっとこう「弧を描いて曲がっているな」というものであればいいなと思ってます。

橋本:尾畑がいろいろな会社と接触して、僕らの企画に賛同してくださるなかでできてくるスキームが、どんどんグローバル化していって、現実に「HUMAN LOST 人間失格」では最初から海外にいくことになりました。そうすると、さきほどお話したように、より「間口の広さ」のある“一般化”したものをつくらないといけないなと。そのことは強く意識していますし、その“一般化”とは必ずしも国内に向けてだけではないのかもしれないとも最近考えていて……。ただ、海外に向けてと言いながら、ただ海外で大きく商売になればいいとも僕らは思っていなくて。

尾畑:そうだね。

橋本:きちんと日本のお客さんに面白いと思ってもらって、自分たちの作品だと感じてもらい、それが海外にでて世界中の人にも楽しんでもらう。そんなふうに横串を通していきたいという思いがあります。そして、普段はディズニーやピクサー、イルミネーションなどの作品を見ている一般の海外のお客さんが、僕らの作品を見て、同じように楽しめるものでありながら「変化球がきた」と感じてもらえるような作品づくりが最終的にできたらいいなと思っています。

――今後のスロウカーブの展望を聞かせてください。

尾畑:引き続き宣伝の仕事もやりますし、当然アニメ企画もやっていくんですけど……これは社内で言っていることですが、企画チームと宣伝チームがいて、その出口としてMD(マーチャダイジング=商品化)チームというトライアングルがあって、この3つを通低していくものをやっていきたいなと思っています。今社内向けにこんな資料をつくっていまして――(ノートパソコンで、パワポの資料を見せる)。

――「スロウカーブという謎の決め球で、ゆるやかな弧を描くエンタテインメントを仕掛け、世の中をわくわくさせる」ですか。「スロウカーブという謎の決め球で」というワードがいいですね。

尾畑:なんか謎は残しておきたいんですよね(笑)。宣伝についても、「スロウカーブはワクワクするような宣伝をするよね」と受けとってほしいですし、MDのほうも「スロウカーブがつくると、ただのクリアファイルにならないよね」みたいになるといいなと。

橋本:例えば、「ゆるキャン△」のコンロとか。

――あれはスロウカーブさんが企画した商品だったんですね。あっという間に売り切れたという(※焚き火台グリル「笑's B-6君 リンちゃんのYAKINIKUセット」)。

尾畑:MDチームは、共同代表の上條(誠)を中心にやっています。「スロウカーブの企画は、ちょっと曲がっていて面白いよね」と思えるものをつくって、それと上手くつながる宣伝と商品化を社内でできたなと思いながら今やっているところです。

橋本:スロウカーブが企画をして、製作できる座組をつくり、責任をもってプリプロダクションをする。そうして優秀なプロダクションさんと組んで制作をし、しっかりと宣伝してお客さんに届ける。さらにその後は、ライツ事業できちんと収益に結びつけていく。そんなふうに一貫してやれるといいなと。

――その中心には、「面白いことをやりたい」があるわけですね。それをビジネスとしても成立させるため社内に仕組みをつくりたいと。

尾畑:そうですね。ただ、会社を大きくしようとかはまったく考えていなくて、面白いことをやりたいにつきます。それをずっとやれればいいなと。

橋本:うん。やり続けていきたいですよね。

――企画自体も当たるにこしたことはないと思いますが、まずは面白いことをやっていきたいと。

橋本:当てるつもりでやっていますけどね。とはいえ、当てることだけが目的、というのはちょっと違う気もしますけれど。

尾畑:昨日、「HUMAN LOST 人間失格」が海外の映画祭で賞をいただいたんですよ(※カナダ・モントリオールで開催された「第23回ファンタジア国際映画祭」で、「HUMAN LOST 人間失格」がアニメ部門「今敏アワード」の特別賞を受賞)。そのときに主催者側の方から、「グランプリではないけれど、特別によかったので『特別賞』を贈ることにしました」というような言葉をいただいて。

橋本:普段ない枠でいただけたのはうれしかったですよね。

尾畑:特別賞をいただけたのは、スロウカーブが狙っている“謎の決め球”を体現しているなと感じられて本当にうれしかったです。

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作品情報

HUMAN LOST 人間失格

HUMAN LOST 人間失格 5

「恥の多い生涯を送って来ました」。医療革命により、“死”を克服した昭和111年の東京――人々は体内の“ナノマシン”とそれらを“ネットワーク”により管理する“S.H.E.L.L.”体制の支配により...

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