2019年3月15日(金)19:30
【まなおのアニメ感想戦!】第4回 ずうっと「ドラえもん」といっしょに
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2019
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◆私と「ドラえもん」
3月1日から公開中の「映画ドラえもん のび太の月面探査記」は、いつのまにかシリーズ通算39作目となる、ドラ映画の最新作です。
わたしは物心ついた頃から大のドラえもんっ子でした。母によると、生まれて初めてのお絵かきも、それから一番多かった題材もドラちゃんだったようです。家にあるビデオテープのほとんどが劇場版や大晦日スペシャルの録画で、放送のたびに録画していた劇場版は何本も重複していたり。
他にも山のような学習ビデオ・漫画、目覚まし時計、壁掛け時計、トースターなど家中にドラグッズ。高校生くらいの人生初の“大人買い”も、プレミアのついていた劇場版サントラ「ドラザベスト」。語り出すとキリがないですが、とにかく、母の次に私を育ててくれたのは大山のぶ代さんと言っても過言ではないのです。
◆帰ってきたわたし
いろいろあって離れていた時期もありつつ、前作「のび太の宝島」が本当に久しぶりの劇場での鑑賞でした。昔毎日のように通っていたレストランに、大人になって久しぶりに入ったような緊張感がありました。内装、店員さん、お客さん、コースの内容もがらりと変わっていて、なにより変わってしまった自分がどう受け止めるんだろう、とそわそわ。右に4人家族、左に3人家族に挟まれて、スクリーンど真ん中のぽっかり空いたひと席から、不安を隠せず頬張った作品は、新鮮さが眩しい一方で、思い出せないくらい遠い昔の記憶がふわっと蘇ってくるような……どこか懐かしい味わいでした。
そんなふしぎな感覚が残ったまま、今回も劇場へ。脚本をつとめるのは直木賞作家の辻村深月さん。初の月面が舞台であったり、女性としては劇場版初の単独脚本であったり話題の多い本作は、とにかく「ドラえもん」愛にあふれた作品でした。
そしてまたも、印象的な場面ではもうずっと錆びついていたはずの記憶の蓋が開いていきます。「日本誕生」「宇宙開拓史」「雲の王国」「パラレル西遊記」、「結婚前夜」のパパのセリフや「夢気球」など、挙げきれませんが、演出上のオマージュや小ネタの域に留まらず、幼い頃に心を揺らしたひとコマひとコマを散りばめてくれているかのようで、あぁ、自分は忘れていないし、忘れられてもいないのだなぁと、込み上げてくるものがあるのでした。
◆安心して、未来へ
それでいて、やはり物語としては新しい「ドラ映画」なのです。本作は想像力の大切さを再認させてくれる近未来ファンタジー。海底や地底で聞かされた科学や恐竜の話、魔界や魔境の伝説を聞くのとも違う、未来に積極的な物語です。以前は仕方なく(もしくは気づいたら)大冒険に巻き込まれていくことも多かったみんなが、異星の友のためにと力強く決断する勇姿は、頼もしい反面「立派になったなぁ」としみじみ。
なんだか遠くに行ってしまった気がしたドラえもんが、今も身近でのび太たちを新しい世界に導いているのを確かめられて、正直ホッとしていました。その導き手の中には、私のような、ドラちゃんに育てられた大人たちも増えているんだろうな。そんなふうに考えると、より愛のある世界でこれからのび太たちと冒険に出る子どもたちは幸せだなぁと、いちファンとして羨ましかったりもします。
もし、私が母親になるときがきたら、子どもには必ずそのときの「ドラえもん」を見せてあげると決めています。新しい科学と想像の世界。いろいろな心をドラちゃんから学んでもらうのが昔からのヒミツの夢でした。そうして、人のしあわせを願い、人の不幸をかなしむことのできる存在になってくれるといいな。
まなおのアニメ感想戦!
[筆者紹介]
香川 愛生(カガワ マナオ) 日本将棋連盟女流棋士。15才でプロ入り後、女流王将2期獲得、現女流三段。受賞歴は女流最多対局賞・女流棋士賞など。ゲーム、コスプレなど、多彩な趣味を活かし将棋普及活動にもいそしむ。著書は「職業、女流棋士」(2018)。
作品情報
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