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特集・コラム 2020年2月24日(月)19:00

【まなおのアニメ感想戦!】第15回 アニメの力をかりて受けとめたい世界

モン=サン・ミッシェルにて

モン=サン・ミッシェルにて

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将棋は「世界一平和な戦争のゲーム」と言われています。プロの勝負は過酷ですが、基本的には穏やかで恵まれた日常のなかにあるものです。エンタメアニメももちろん大好きですが、「この世界の片隅に」との出会いは大きな転換期で、鑑賞以来、より思いつめているような、大きなものを背負っているような作品はないだろうかと、目を向けるようになりました。そんな気持ちでフランスに旅に出たとき、空の上で偶然にも、同じ舞台を扱う2作品に出会いました。

◆「ブレッドウィナー」(生きのびるために)
 原作の小説タイトル「生きのびるために」(Netflixではこのタイトルで視聴可能です)の文字通り、タリバン政権下のアフガニスタン、過酷な情勢の中で命を繋ぐ危うさとたくましさが描かれます。現代日本の感覚でいえば、ルールのひとつひとつに衝撃と絶望を禁じ得ません。特に女性は、男性と同行していなければ外出も許されず、違反にはシビアで残忍な罰を覚悟いけないのは、残念ながらファンタジーではないでしょう。
 両親と姉、小さな弟のいる少女・パヴァーナの一家は、あるきっかけで父が連行されてしまいます。生活の困難に直面したパヴァーナは意を決して、長い髪を切り、男子に扮することで“活動”することがかない、様々な物語に発展します。私たちの感覚ではあまりにも不条理に死や束縛と隣り合わせの環境下で、脆さと勇猛さと合わせながら高まる緊迫感に目が離せません。少女の闘いを見守るなかで、彼女たちがどう生き抜くべきなのか、切に考えさせられます。
 絵は「ロング・ウェイ・ノース」とも通ずるところがある味わい深さで、哀愁漂う切り絵タッチにも心をゆさぶられました。

◆「The Swallows of Kabul」(カブールのツバメ)
 「ブレッドウィナー」鑑賞から間もなく出会ったこの作品。カブールは地名で(調べたところ「カーブル」ともいうそうですが)、2組の夫婦がフォーカスされます。そのうちの1組は、現代音楽を聴き、愛と自由を渇望する若いカップル。タイトルのツバメは物語の冒頭で、権力下に生きる彼らの象徴だと示唆されます。
 砂漠めいた土地柄とかけ離れた瑞々しさ、やわらかい光にあふれた水彩調のイラストが目に焼き付きますが、景色が儚げなゆえに、乾いた銃声や悲鳴が響くときには、日常の壊れるリアルさに背筋が凍ります。
 若い夫婦の愛には「この世界の片隅に」のような、気持ちのうえである種の救いを感じられる一方で、その脆さに現実の厳しさを突きつけられ、絵の印象とかけ離れたより生々しい鑑賞経験となりました。

◆覚悟と勇気を受け止めたい
 こうした現実色の濃い作品に取り組む勇気はどれほどのものなのでしょうか。邦画でも、ここ数年で東日本大震災を扱う作品が増えています。「Fukushima50」「太陽の蓋」のように主題にするものから、物語の象徴的なシーンとして組み込まれている場合もあります。全てでないにせよ過酷な現実が下地になっていて、必ずしも受けとめ難い題材で、時間とあらゆるものをかけてできあがった作品は、ひとつでも多く受けとめたいと心がけています。ご紹介した2作品は、アニメというレイヤーで作られたからこそ出会えたものですし、アニメの力をあらためて噛み締めることができる作品としても、見ていただきたい作品です。

香川 愛生

まなおのアニメ感想戦!

[筆者紹介]
香川 愛生(カガワ マナオ)
日本将棋連盟女流棋士。15才でプロ入り後、女流王将2期獲得、現女流三段。受賞歴は女流最多対局賞・女流棋士賞など。ゲーム、コスプレなど、多彩な趣味を活かし将棋普及活動にもいそしむ。著書は「職業、女流棋士」(2018)。

作品情報

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