2016年8月5日(金)19:00
ドラマを魅せるフル3DCGアニメへの挑戦 TVアニメ「正解するカド」村田和也総監督&野口光一プロデューサーインタビュー前編 (2)
――とはいえ、3DCGアニメで人間ドラマを表現するというのは、ハードルの高い試みではないかと思うのですが。
村田:人間ドラマの場合は、登場キャラクターの感情を視聴者に十全に共感してもらうというのが重要なのですが、生身の人間が抱く感情を、3DCGのキャラクターに表現させなければいけないということが、とても難しいですね。ちょっとした仕草や表情、目線の動きなど、すべてを統合して一個の人間としての存在感を表現し、なおかつそれが視聴者に正しく伝わるようにコントロールしなくてはいけないので。

村田和也総監督と野口光一プロデューサー
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3DCGの場合は手描きに比べ、作り手の身体感覚から離れたところでの作業になります。手の動きが鉛筆を通してダイレクトに反映される手描きとは異なり、3DCGの場合は、ワイヤーフレームで構成されたキャラクターを動かすことで、細かいニュアンスを生み出していくわけです。手描きの絵は、描いた瞬間にすでにレンズの長さやアングルも含まれていますよね。ところが、3DCGはモデにポーズやアニメーションを付けて、カメラの位置も決めて初めて「絵」になる。すべて別工程なんです。ですから、作り手が意図した表現との間に、たくさんのフィルターを通す形になってしまいます。それによる乖離(かいり)が、3DCGで人間ドラマを描くにあたっては、とても難しいところですね。
野口:3DCGアニメーターが演出までを行うほうが作業工程を理解している分、労力は少なくて済むんですが、やはり肝心の演出力はアニメで鳴らした監督のほうが遥かに上なので、骨を折ってもらっています(笑)
村田:また、僕自身が3DCGを作れるわけではないので、自分の意図を言葉でしか伝えられないというもどかしさもありますね。たとえば、キャラクターの芝居のニュアンスを表現するのにも「体の角度はもっと外側に開いて、もうちょっとヒジを張って、足を伸ばして……」と、写真家がモデルさんに指示を出すように、とても細かくアニメーターさんにお願いする必要があります。カメラのアングルについても同様です。
僕自身はどんな画にすれば、どんな効果が得られるか経験的にわかっているんですが、それを実現するためにどうすればいいのかを具体的に伝えるのがなかなか難しい。僕は「劇場版ポケットモンスター」や「翠星のガルガンティア」などの作品を通じてCGを扱う経験は積んでいますが、それでも人間のお芝居を表現する今作は、難しいチャレンジです。
野口:スタッフと積極的にコミュニケーションを取れるタイプの監督でなければ、3DCGは扱えないのかもしれませんね。
村田:海外では、ピクサーさんやディズニーさんが3DCGアニメーターに対して、2Dアニメーターが直感的にアドバイスできるようなツールを導入していますから、国内でも少しずつ事情が変わってくると思いますよ。
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