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特集・コラム 2024年1月19日(金)19:00

原作者・雨川透子に聞く「ルプなな」の魅力【「ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する」リレーインタビュー第1回】

(C)雨川透子・オーバーラップ/ループ 7 回目製作委員会

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「小説家になろう」に連載し、「オーバーラップノベルスf」から書籍版が刊行され人気を博しているライトノベル「ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する」。本作のアニメ化にあたって、関係者の方々に取材を敢行し、シリーズのかたちでお届けする。第1回は原作者の雨川透子さん。本作がどのような作品なのかを中心に話を聞いた。(取材・構成:揚田カツオ)

「運命の人」ではなく「運命の敵同士」

――まずは、実際にアニメの映像をご覧になられての感想をいただけますか。

雨川:どこを見てもキャラクターの絵ばかりでうれしいです!

――(笑)。たしかにそれは小説の挿絵と違うところですよね。

雨川:「アニメになりますよ」と読者さんにお伝えしたときにも、「キャラクターが動いてしゃべるんだ!」といった反応をたくさんいただいていて。それが実現していて感動しました。自分のなかにはもちろんキャラクターのイメージがあるのですが、プロの方々が全力で表現してくださったものは、私の想像を超えていてすごいなって……。おそらく各セクションの方々は原作をすごく掘り下げて、向き合ってくださったのではと勝手に思っています。

――では、あらためて作品についてうかがっていきます。本作はいわゆるループものでもありますが、これだけ数多くループを終えたうえではじまる作品は珍しいと思います。どういう意図でこのような設定にされたのですか。

雨川:ロールプレイングゲームでよくある「強くてニューゲーム」のイメージです! ゲームをクリアして2周目をはじめるときに以前のセーブデータを使うことで、1周目より能力が上がった状態でスタートできる。そういうゲームをたまたまプレイしていたときに、クリアするごとに主人公だけ強くなっているお話って楽しそうな気がして。小説で書いてみたいと思ったときに、過去6回の人生の職業はすぐに決まりました。

――主人公であるリーシェの前向きな性格や、皇太子アルノルトのミステリアスな雰囲気も印象的な作品です。

雨川:そういったキャラクターが好きなんです(笑)。自分でお話を書くなら、強くて前向きなヒロインが、いろいろとわけありなヒーローを振り回す話にしたくて……。アルノルトが秘密主義なのは、自分の好みを詰めこんだこともありますが、リーシェとの関係性のバランスを意識した面もあります。リーシェはああいうキャラクターなので、成長しきったキャラクターとして7回目のお話を書くこともできたのですが、この7回目にもリーシェの成長と変化がある物語にしたくて……。リーシェにやりたいことがあって、その最大の障害になれるのが、私のなかではアルノルトだけでした。そうなると、たとえ婚約者でも、何を考えているのか読めない相手にしなくてはと。ある程度なんでもできそうなリーシェの、さらに上をいく存在じゃないと、その障害にはならないので……! とはいえ本当にシンプルに、「ふたりとも自分が書いていて楽しいキャラクターである」というのが、このキャラクター像になっている最大の理由です!

――雨川さんのほかの作品を拝見していても、同様の傾向があるように思えたのですが。

雨川:! そうですね……。黒髪の何を考えているか分からない強い男が好きです……!

――(笑)。リーシェとアルノルトの関係性についてはどう考えていましたか。

雨川:お互いがお互いの最大の障壁になるだろうと……リーシェの生き延びたいという目標を阻むのはアルノルトです。そして、リーシェはアルノルトの戦争を止めようとしている。
それでも育まれていく絆のなかで、ふたりにどんな葛藤があるのかを大事にしたいなと思っていて。だからふたりは「運命の人」というよりは、「運命の敵同士」なんですね。

プロットを超えるキャラクター

(C)雨川透子・オーバーラップ/ループ 7 回目製作委員会

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――本作は「アルノルトがなぜ未来で戦争を起こすのか」といった大きな謎や、各エピソードに解決するべきさまざまな謎がでてきますよね。このようなミステリアスな展開にしているのはなぜなのでしょうか。

雨川:読者の方に「この先どうなるんだろう」と思っていただけると楽しいなと、情報を出す量は調整して書いています。

――ミステリアスな展開にする際に、意識していることはありますか。

雨川:必ず最終回を決めてから書くようにしています。途中までの紆余曲折はあるのですが、最後の「犯人はお前だ」の部分が決まっていれば、そこを翻弄するようなミスリードは仕込みやすいですよね……(突然手を叩いて)あっ! そうだ!

――どうされましたか。

雨川 資料で読んだもののなかに、「ふたつ以上の役割を持つ物しか持ち歩かない」と書かれたサバイバルの本がありまして。「これはアルノルトの思考に使えるな」と思いました。それで、アルノルトが何かをするときには複数の意味を持たせるようにして……ここまでのお話は他でもしたことがあるのですが、お話の構造にも取りいれて意識をしている話は、まだしていなかったかもしれないと思い出しました! キーアイテムにも、アルノルトの思考と同じように、複数の意味をもたせるようにしました。意味を重ねていくことで、ミステリアスな伏線を張りやすくなる気がして……。

――キャラクターの行動によって、読者が想定する展開をさらに裏切ることも多々ある作品だと思うのですが。

雨川:作品を書く前にまず自分のなかでプロットを立てて、キャラクターにその行動を落としこんでいるのですが、そのうえでさらに予想を裏切る展開にするように、もうひと捻りを加えるようにはしています。

――それはキャラクターの行動もふくめてですか。

雨川:はい! 各章のプロットを立てるとき、全キャラの行動の感情についても、キャラごとに個別でプロットを立てています。たとえば物語はリーシェ視点で進みますが、「リーシェがこうしているときアルノルトはこんなことを考えていて、こういう感情である」といった道筋を、章の始まりから終わりまで全キャラ書いていきます。リーシェ、オリヴァー、テオドールと立てていくと、最初に立てていたプロット通りでは、浅いのではないかということが見えてきたり……。「このキャラはもっと深く考えて、私が考えたプロット以上の行動をとるはず」ということに気づきます。とくにアルノルトは、私が立てたプロットの上を行く筆頭で、さらに展開を捻らなければ……! という発見をいつももたらしてくれます。自分よりも頭のいいキャラクターを書く、楽しい苦しみです(笑)

原作者のキャラクター解説がそのまま台本に

――今回原作者としてはどのようにアニメに関わられたのでしょうか。

雨川:まず、制作にあたり手元にある設定や今後の想定展開などはすべてお送りしました。もともと、コミカライズを担当されている木乃ひのき先生が、クラウド上に資料共有スペースをつくってくださったのを活用していて……。そんな場所をアニメ用にもつくろうと思い、世界観とキャラクターとで分けて制作しました。格納資料でぱっと思い出せるものだと、年表、リーシェの死因リスト、アルノルト視点のプロット、アルノルトの感情変化表、アニメチームの質疑応答のリストが相当数。こまかなものだと、科学レベル、季節感、月の呼び方、日付、曜日、気温、交通手段、世界の広さ、通貨単位、長さと重さなど……。

――かなり詳細に資料をつくられているのですね。第1話にはタリーとの出会いなどオリジナルシーンもありましたが、ああいったシーンの監修もされているのですか。

雨川:監修というよりは、基本的には私が小説で語れなかったシーンを、小説なり脚本なりのかたちで書いてお渡ししました。

――シーンそのものを雨川さんが書き下ろしているんですね。

雨川:はい。今お話しがあったタリーとの出会いは、木乃先生もコミックで書いてくださっていたシーンです。それは大事にしたかったので、そこが引き立つように意識して描きました。1話でいうとほかにも回想でミシェルとカイルがしゃべっているシーンや、ミシェルのところにリーシェが教え子として行くシーンも書いてお渡ししています。
それとオリジナルに見えるかもしれませんが、実は原作小説1巻の特典で書き下ろしていたお話も、アニメ本編のシーンに混ぜていただいているんですよ。原作ファンでも、小説2巻以降で好きになってくださった方はご存じない小説がアニメになっているので、そこも楽しみにしていてほしいです。

――話が前後するようですが、原作者として脚本の監修もされているのですよね。

雨川:脚本についての協議には、各話、ある程度皆さまでの話し合いが進んだところで、原作者として混ぜていただくことを繰り返していました。脚本やシナリオって小説とはぜんぜん違うんだなというのが、最初に抱いた印象です。アニメという限られた尺のなかで、小説とはまた違う文字数でベストを尽くしてくださっているのを感じました。また、私の小説はセリフのひとつひとつが長いのですが、それをアニメで映えるかたちに上手く縮めてくださって、すごくワクワクしました。
あとは皆さま私に非常にこまやかな確認を取ってくださって、感動しました。私が脚本への提案をするたび、皆さまその都度ものすごく丁寧にご相談に乗ってくださったのですが……まずそもそも驚いたのは、私の手元に来た時点での脚本のファイル名の稿数がとても回数を重ねており……。

――雨川さんのところに来るまでに、すでに多数回にわたって脚本が練られていたと。

雨川:そうなんです。そこから私が監修に加わると、今度は私の書き出した案によって、さらに全体へ修正が加えられていくという……。アニメとしてベストなかたちになる調整が、丁寧に重なっていって。その工程にびっくりしました。ノベル原作の担当さんは会議に参加しすぎてアニメのセリフを全部覚えているぐらいです。
 それともうひとつ驚いたのは、脚本監修の際に、私がたとえば「ここのアルノルトはこういう感情のため、セリフではこう発言していますが、内心での機微はこうなります。なので、アニメ的な表現にするなら、セリフはこうしたいです。また、その感情はたしかに存在しますが、声音には出さないというかたちにしたくて」などとこまかすぎるご相談をするんです。すると、そのときお伝えした内容が、脚本にすべてそのまましっかり書かれていて……。そのこまかすぎる解説が、最終的に絵コンテやアフレコ台本のト書きにまで残っていました。びっくりしました。

――原作者の解説が台本にまで載っているんですか。それは珍しいですね。

雨川:(笑)。これは別の場所でもお話ししたのですが、最初に原作小説の担当さんから、アニメには本当に多くの方が関わってくださるということを教えていただきました。そんななかで、すべての方になるべく原作の意図が伝わるように、各フェーズでそういうこまやかな気遣いをしていただいたんだと思います。それを感じて、本当に嬉しかったです。

「これがお芝居なんだな」

(C)雨川透子・オーバーラップ/ループ 7 回目製作委員会

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――キャスティングについてはいかがでしたか。

雨川:皆さま本当に理想的な声とお芝居で……! オーディションにも参加させていただきましたが、どのキャラも私自身が「このキャラはこの方に演じていただきたい!」と感じた方々に決まり、うれしかったです。

――実際にアフレコをご覧になられていかがでしたか。

雨川:皆さんすごく素敵でした! 自分の声って自分では正確に聞こえないはずなのに、声優の皆さんは、こちらの相談に応じてすぐに合わせてくださって……。お芝居では「こうした声を出そう」というよりも、「こんな感情で演じよう」と思っていらっしゃるのかな? と、勝手に感じました。それが演技の幅につながっているのではないかなと……。
 たとえば初めてのアフレコの際、オリヴァーとアルノルトのやりとりを録る前に、いわた(かずや)監督が「オリヴァーって、アルノルトにとってのお母さん役なんです」とおっしゃったんです。そのときの解釈一致ぶりで「監督……!」と感動したのですが、土岐(隼一)さんと島崎(信長)さんのおふたりが、それをすぐに繊細な演技で表現してくださって。関係性の解釈によってかけあいが多彩に変化して、すごいと思いました。

――なるほど。

雨川:私は趣味で舞台観劇によく行くのですが、アフレコ現場であらためて、「お芝居を演じる」ことの奥深さを感じました。

――今、舞台観劇の話がでましたが、アクションシーンは舞台を参考にされているそうですね。

雨川:殺陣の影響はすごくうけていると思います! 舞台だと、役者の方が退場されない限りは、自分が観察したいお芝居をずっと眺めていられるので! 殺陣などで敵の動きや倒れた側がどうなっているのかが観察できて、勉強になります。

――アニメでも、1話、2話どちらもかなりアクション要素がありました。

雨川:アクション、気合い入っていますよね……! それと、(3話の)ダンスシーンにモーションキャプチャーが入るのにも驚きました。

――アクションシーンは、ご自身のイメージに近かったですか。

雨川:近いどころか、アニメのほうがずっと上です! こんなにアクションに気合いをいれていただいていいんですか!? と震えました。うれしいです。

(C)雨川透子・オーバーラップ/ループ 7 回目製作委員会

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――ほかにお話しできる範囲で、2話以降見どころになりそうなシーンはどんなところでしょうか。

雨川:2話といえば、本編もそうですが、オープニングとエンディングも初のお披露目となります。どちらも絵コンテと演出を担当された中村(亮介)さんが描いてくださったものが、すごくこまやかで! オープニングとエンディングは、ふたりの年齢差なども本編とは違ったIFの世界の光景を交えつつ、中村さんの独創的なストーリーが込められていて。オープニングのポイントや、エンディング全体に使われている細居(美恵子)さんのイラストもすごくキレイで。
 オープニングは赤ちゃん姿のリーシェや、小さい姿のリーシェもでてきます。途中挟まれるリーシェのダンスも本当にかわいくて。「いつか自作のキャラに踊って欲しいけど、この作品でそんなことがあるはずない」と最初から諦めていたので、「夢ってかなうんだ」って(笑)。
 本編のお話をしてしまうとネタバレになってしまいそうですが、このインタビュー以降に放送される3話以降の本編もとっても素敵です! 暗いところにアルノルトがいるシーンは全部、私がとくに大好きなシーンです(笑)。6話は最初のかなり大きな山場、そしてそれにぴったりの回となっていますので、お楽しみに!

いつか、のんびりゴロゴロするために

――最後に、あらためてこの作品のテーマについてうかがいたいのですが。

雨川:作品全体のテーマのようなもの、たとえば「人生にはいろんな可能性が眠っている」「どんな人生も考え方によっては楽しめる」といったものは、リーシェの言葉をとおして視聴者の方も感じていただけるでしょうか……? これはテーマが先にあったのではなく、まずリーシェというキャラクターが生まれて、この子だったらこんなふうに考える、というキャラクターありきのテーマに近いものです。あとは、「いつか楽をするために、今苦労する」でしょうか。

――意外なテーマですね。どういったところでそれを表現されているのですか。

雨川:リーシェがまったくごろごろしていないところです……(笑)。これは矛盾して見えるかもしれないのですが、リーシェは自分が快適に生きるためにお掃除を全力で頑張るし、自分にとって最適な人脈をつくるために、アルノルトに商会との場を設けてもらったりします。今後のアニメ本編でも、そんな動きを随所に見つけていただけるかと!
 「いつか楽をするために、今苦労する」は、学生の私が当時のアルバイト先で感銘をうけた言葉で、「私も楽をするために、全力で頑張ろう」と感じました。リーシェもきっとそんな思考なんじゃないかなと……。
 なのでよく「(リーシェは)自由気ままに生きてない」と突っ込みをいただくのですが、私自身は自由気ままな女の子としてリーシェを描いているつもりなんです。いつかのんびりゴロゴロするために準備をしているだけなんだよ、って……。「できないと思いますよ」と言われるんですけど、そんなことはない、リーシェはいつかゴロゴロできるはずだって、私もリーシェ本人もずっと思っています(笑)

揚田 カツオ

「ルプなな」リレーインタビュー

[筆者紹介]
揚田 カツオ(アゲタ カツオ)
テレビアニメ「ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する」のリレーインタビューの取材・構成を担当。

作品情報

ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する

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