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特集・コラム 2019年8月9日(金)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】2019年上半期ビジネスニュース振り返り ジーベックから中国最新事情まで

「千と千尋の神隠し」中国版ポスター

「千と千尋の神隠し」中国版ポスター

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暦はすでに8月になったが、2019年上半期(1月~6月)のアニメビジネスの大きなニュースを振り返ってみたい。わずか半年だが、昨今流れの早いアニメ業界、気になるトピックスが多い。今回は多くのニュースから「ジーベック事業譲渡」、「4Kアニメ」、そして「中国最新事情」の3つを取りあげた。

■IGポート、ジーベック制作事業をサンライズに譲渡
 19年4月にIGポートがグループ会社ジーベックの制作事業の大半をサンライズに3億円で売却し、アニメ業界を驚かせた。ガンダムシリーズなどで知られるサンライズは新会社SUNRISE BEYONDを設立し、これを引き継いだ。
 譲渡した以外の事業はIGポートの各グループ企業が継承、ジーベック自体も5月にプロダクションI.Gに吸収されるかたちで24年の歴史の幕を閉じた。
 流れの早いアニメ業界では、スタジオ再編はけして珍しくはない。しかしジーベックは1980年代からのIGグループ会社で、「機動戦艦ナデシコ」などヒット作の多い老舗だ。それだけにインパクトは大きい。
 事業譲渡の理由は昨今のアニメスタジオを取り巻く環境にある。近年、人材コスト、CGコスト、デジタル投資などによりアニメーション制作コストは急激に上昇している。老舗、大手企業グループでも、アニメーション制作だけではなかなか利益がでない。制作受注が中心のジーベックは赤字が続いており、製作投資も目指したいIGポートグループ全体の方向性とずれが出ていたのでないだろうか。
 同時にアニメ業界では深刻な人材不足が続いている。長い経験を積み重ねてきたジーベックの制作事業は魅力が大きい。そこに目をつけたサンライズがこれを譲り受けたかたちだ。両社の考えが一致したというわけだ。

■始まった4Kアニメ
 「4Kアニメなんかとても無理」。5年前なら間違いなくそう思っただろう。超高精細な映像である4K画質をアニメで実現するのは技術的な課題だけでなく、かなりの高予算が想像される。
 ところが19年上半期に4Kアニメに取り組むニュースが相次いだ。ひとつはプロダクションI.GとNetflixが共同で開発に取り組むというもの。プロダクションI.G が4K HDRで手描きアニメを制作し、19年秋にはNetflixがオリジナルアニメとして配信するという。当初から4K作品、しかも手間のかかる手描きで目指すというから野心的だ。
 現時点でタイトルは発表されていない。作品先行でなくまず4Kを進めるうえでどんな技術と設備・環境が必要かを実際に作りながら試していくようだ。Netflixは4K作品をより高いプレミア料金で配信しており、そのための番組が必要だ。人気の高いアニメでも4Kがどれだけ対応可能かを探っている。

テレビ放送も負けてはいない。19年4月からポリゴン・ピクチュアズが制作した「シドニアの騎士」、「シドニアの騎士 第九惑星戦役」の高画質4Kリマスター版が、NHK BS4Kにて放送されている。こちらも今後ニーズが高まる4K作品でアニメの可能性を探る。数多いアニメ作品のなかでまず「シドニアの騎士」となったが、もともとCGをベースにした作品だけに、4K画質へのアップグレードは現実的な選択だ。

それに対してサプライズだったのが、バンダイナムコアーツが20年4月に「AKIRA 4Kリマスターセット」発売を発表したことだ。「AKIRA」は過去30年以上にわたり様々なメディア展開をしている。新たなコストが映像のアップグレードに限られる利点はある。
しかし手描きアニメの4K化はかつて、「セル画の塗りムラや背景美術の紙の毛羽立ちまで見えてしまう。それに意味があるのか」と言われたこともある。それだけに1988年に誕生した「AKIRA」を一体どんなかたちで4K画質にするのか、気になるところだ。その方向性や仕上がりは、今後の旧作アニメの4K化にも大きな影響を与えるだろう。
 4Kに向けた試みが増えたのは、メディア側の技術への挑戦意欲だけが理由ではない。裏側には4Kテレビの普及が一挙に進んでいることがある。近頃、大型家電ショップに並ぶテレビ商品の目玉は4K対応ばかりだ。値段も下がり、手の届きやすくなった。19年をスタートに20年代に4Kアニメ時代が本格的に離陸するかもしれない。

■中国ビジネスはまだチャンスがあるのか? 「千と千尋の神隠し」の大ヒット
 北米と並ぶ海外の巨大市場として、10年代は中国が注目されてきた。しかし事情が大きく変わってきた。ここ数年中国では、ゲーム・映像などの配信コンテンツへの表現規制は強まっている。アニメもその例外ではない。配信できない日本作品が直近で次第に増えている。
 さらに噂されてきたテレビアニメシリーズの全話まとめての事前審査がいよいよ導入される気配だ。そうなれば放送と並行して制作を続ける日本アニメの日中サイマル配信(同時期配信)は難しくなる。海賊版の横行や日本と時差が生まれることで中国のファン離れも懸念される。すでに中国企業の買い控えからテレビアニメの配信ライセンス価格は下落していると伝えられる。日本アニメ冬の時代が再び中国に訪れるのだろうか。

そのなかで意外な好調を見せているのが映画興行である。19年は1月から6月までに、「Fate/stay night [Heaven's Feel]」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄(ヒーロー)~」「映画 ドラゴンボール超 ブロリー」などを含む10本が現地公開された。18年には1年間で6本、12年から15年は1本もなかったから激増だ。
 なかでも6月21日に日本公開から18年ぶりに中国公開した「千と千尋の神隠し」が約4億8000元(約75億円)の大ヒットとなった。変らぬスタジオジブリ人気と劇場ビジネスの可能性をみせつけた。

さらに日本企業の新たなかたちの中国進出が増えている。テレビ東京はキャラクター事業を中心とした中国現地法人の杭州都愛漫貿易有限公司を設立、本格的に事業をスタートした。バンダイナムコホールディングスと集英社は集英万夢(上海)商貿有限公司を設立した。こちらも商品開発などキャラクター関連事業を目指す。創通は「C3」ブランドのイベントを、アニプレックスは現地企業と組んだ新イベントを目指す。中国ビジネスの新たな可能性は、単純なライセンス販売ではなく、キャラクター事業、イベント事業にあるというわけだ。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

作品情報

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