2020年1月30日（木）19:00

【まなおのアニメ感想戦！】第14回　女流棋士とアニメの1年

ヘアメイク：やまもとななえ、カメラマン：飯本貴子

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2019年は実に100本以上！　のアニメ映画が公開された豊作の年でした。
　個人的にはアニメハックさまでの連載1年目でしたので、あらためて今年でよかったなぁとしみじみ思います。先日は2019ベストアニメ／2020注目アニメにも参加させていただきましたし（https://anime.eiga.com/news/110204/ ）、アニメハックのライター陣の皆さまとアニメ映画を語るイベントにも出演させていただきました（YouTubeで一部公開しておりますので、よろしければご覧ください！）。

鑑賞を繰り返すなかで、自分がアニメ映画でなにを重視しているかもだんだん理解できるようになってきたように思います。もちろん心に響く物語であるか、作画がどうかも大事なところですが、自分に必要な作品探しの旅のようなところもあったように思います。

◆広い世界を知りたい！　出会いや体験
　将棋界は特殊な世界と自覚しつつ、プロして10年以上過ごすと色々視野が狭くなってしまったり、自分の当たり前が世の中の常識かのような錯覚に陥ってしまったりすることもあるのです。そんな自分に世界の広さを教えてくれるのが映画で、特に、19年は海外アニメに衝撃を受けた年でした。「ロング・ウェイ・ノース　地球のてっぺん」「羅小黒戦記」は日本でなかなか観られないアニメーションに目が離せませんでしたし、「ディリリとパリの時間旅行」「ブレッド・ウィナー」ではそれぞれの国の“光と影”に、鑑賞後にも渾々と考えさせられました。
　私にとっての映画鑑賞は、いろいろな世界観、価値観をどう受け止めるかという精神的体験のひとつです。国内でも、「HELLO WORLD」「HUMAN LOST 人間失格」など、CGアニメの充実は新感覚の体験でしたね。伝統性が強い将棋を究める一方で、進化し続けるコンテンツの魅力を追いかけていきたいと考えています。

◆作品愛　ファンへの思い
　たくさんのかたに応援いただくことへの感謝の気持ちは、言葉にするのもかたちにするのも難しいものです。なので、ファンにとにかく満足してもらおうという姿勢を貫いている作品は学ぶところが多いです。
　特に心に残ったのは「冴えない彼女の育てかた Fine」。新キャラが登場しない劇場版にして完結編。劇場版のゲストキャラクターといえば話題を呼ぶためには大きなトリガーですが、原作ファンへありのままで向き合う真摯な姿勢に感銘を受けました。
　また「劇場版シティー・ハンター新宿プライベート・アイズ」では、リョウと香のおなじみなやり取りはもちろん、TM NETWORKの「Get Wild」はじめとした歴代主題歌やBGMがこれでもかと次々と流れるのが圧巻です。バリエーションも曲数もあり、作品にあわせて盛り込むのは容易なことではないはず。上映後、劇場いっぱいにあふれていた満足感が今でも忘れられません。

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◆魂を受け止める、映画鑑賞を目指して
　将棋盤に向き合い、最善を求め続けるのが私の仕事です。時に、何時間もかけて1手を捻り出しますので、そうした指し手には棋士としての哲学や精神も込められていきます。アニメの場合、多くの人との物づくりのなかにも関わらず、作品や作り手の魂が感じられるのは驚異的なことのように思えるのですが、それでもやはりハッとさせられる瞬間が多々あるのです。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の繊細さ、「海獣の子供」の力強さ、十人十色の大作・力作からは、まさしく勝負への執念に通ずるものを感じられますし、その経験が自分に必要だと感じています。

今年からはいっそう作品に込められた思いやこだわりを、ひとつでも多く受け取る鑑賞をしていくのが目標です。イベントでも少し触れましたが、「鑑賞すること」と「見ること」は同じではないはずです。多くの作品との出合いや、他のライターの皆さまの記事などを読みながら、実りある鑑賞をしていきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。