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特集・コラム 2020年7月4日(土)19:00

【氷川教授の「アニメに歴史あり」】第28回 「1980年40周年」と長大なる時間の意味

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日本動画協会のアニメ産業レポートに関わったとき、「○○周年」と再需要を喚起する動きを「アニバーサリービジネス」と名づけた。特に2010年以後は総称が必要なぐらい、そういう動きが多くなった。もちろんこうした足跡を振り返る行為は普遍的なもので、世界的な傾向でもある。
 一方で、これに反対する動きも当然存在する。ある著名監督は「そんなものは単なる時の目盛りで意味がない」と取材中に斬り捨てていた。クリエイターには未来を切り拓くための「いま」しかない。振りかえるヒマはない。そういう趣意だろう。「毎年何かやらなければならなくなる」という別の意見も聞いた。たしかに去年「ガンダム40周年」をやったばかりで、逆に今年の「イデオン40周年」には若干の抵抗も感じてしまう。
 すべては発想次第だ。たとえば「研究」の基本「文献調査」という観点で「1980年」を見ると、意外なことに気づく。この年に創刊されたアニメ雑誌が存在しないのだ。
 1977年4月――劇場版「宇宙戦艦ヤマト」公開へ向かう流れの中でサブカルチャー雑誌「月刊OUT創刊2号」(みのり書房)が「ヤマト特集」を組み、アニメ雑誌への道が開拓された。そして1978年5月、夏の映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に合わせて「アニメージュ」(徳間書店)が創刊され、アニメ専門定期刊行物の時代が始まる。
 ポンと時代を飛ばし、この定期刊行物ラッシュがいつ終わったか調べてみる。それは1986年末だ(月号表示は一部翌年もある)。このとき8誌にまで増えたアニメ専門誌のうち、3誌がほぼ同時に休刊した。「Animec」(ラポート/1978年12月に「MANIFIC」として創刊)、「ジ・アニメ」(近代映画社/1979年11月創刊)、「マイアニメ」(秋田書店/1981年3月創刊)が該当する。
 生き残ったのは「OUT」「アニメージュ」の他、「アニメディア」(学習研究社/1981年6月創刊/現在イードに移籍)、「アニメV」(同/1985年6月創刊)、「Newtype」(角川書店・現KADOKAWA/1985年3月創刊)の5誌だ。1985年創刊は、出版社がアニメを作る時代に即したものだから別枠と考える。すると初期の「アニメ雑誌創刊ラッシュ」は1977年から3年連続したものの、1年飛ばして81年に2誌の第二波があったことが分かる。
 だから「1980年」には「アニメ雑誌が創刊されなかったアニメブームの踊り場」としての意味がある。「1981年」に2誌が創刊された理由は明白だ。劇場版「機動戦士ガンダム」公開合わせなのだ。1977年に「宇宙戦艦ヤマト」の劇場版がビッグバン的なエネルギーを解放し、アニメブームという拡散的な波を起こした。そして1980年ともなると、それが一過性のものかどうか、持続性を見きわめるフェーズに移行したはずである。
 幸い1979年には富野由悠季監督のオリジナル作品「機動戦士ガンダム」が話題になり、ブームをつなぐ。1980年は続けて同監督の「伝説巨神イデオン」が話題を持続させ、「ガンダム」の劇場版も報じられた。であれば、新創刊がなかった理由は飽和ではなく、翌年の2誌同時創刊に向け、エネルギーが再蓄積されたためとも考えられる。価値観をベースにした波の伝搬が、次にまた高く上がるためにいったん沈みこんだ状態だ。
 そしてその波の頂点が1985年にあり、ビデオによるアニメのディストリビューションという次の波が新たに上がり始めると同時に、70年代からの波がいったん頂点を越えて下降していくと考えると、先の「休刊ラッシュ」にも意味が見いだせる。
 もうひとつ、講義などで教えている「長い時間の捉え方」も添えておこう。「40年前からいま現在」とリーチを取ったら、デバイダで地図や図形の等間隔性を把握するように、同じ分量の時間を「40年前からさらに40年前(80年前)」へと折り返す手法である。そうすると1940年、太平洋戦争開戦直前だと分かる。そして宮崎駿監督、富野由悠季監督らを中心とする、70年代末から80年代に波を持ち上げるエネルギー源となったクリエイターたちには、1941年生まれが多い。
 1963年に30分連続ものとしてのテレビアニメ「鉄腕アトム」で、やはりビッグバン的なエネルギーが発生したとき、彼らは22歳で新卒相当の年齢である(宮崎駿監督は早生まれなので同年に東映動画に入社)。社会人は30代後半、ひととおりの業務を覚えて成熟に向かい、気力・体力の充実から、生涯最高の仕事をすると言われる。
 一般論的にも「35歳クライシス」という言葉があるほど転機になるタイミングであり、タイムスケールの「40年」も、こうした近しい数字と対比させることで、また何か別の意味が見えてくるはずだ。
 学校では歴史を「年号」なるピンスポットのイベントで教える。そのせいか、個別の作品や事象にフォーカスし過ぎて、こうした「波動」を見失うことがある。「40年」もの大きな時間の流れは、点で考えず、線や波で見つめるべきだと、基本を思い出させてくれるものなのである。
※「アニメディア」の創刊月につき誤記のご指摘があり「3月→6月」に修正いたしました。ケアレスミスでした。ありがとうございます。

氷川 竜介

氷川教授の「アニメに歴史あり」

[筆者紹介]
氷川 竜介(ヒカワ リュウスケ)
1958年生まれ。アニメ・特撮研究家、明治大学大学院特任教授。アニメ専門月刊誌創刊前年にデビューして41年。東京工業大学を卒業後、電機系メーカーで通信装置のエンジニアを経て文筆専業に。メディア芸術祭、毎日映画コンクールなどのアニメーション部門で審査委員を歴任。

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